著者:高槻 成紀[たかつき・せいき](1949-) 生態学、動物保全生態学。
イラスト:chizuru
デザイン:albireo
NDC:481
備考:タイトル通り、著者の偏見や誤りを含んでいる。
【目次】
まえがき [003-010]
カニの小噺
動物に対する偏見
本書の構成について
もくじ [011-016]
第1章 たくさんある動物にまつわる言葉
会話に動物が出てくる 018
特徴をうまくとらえた言葉 019
哺乳類にまつわる言葉
鳥類・爬虫類・両生類・魚類にまつわる言葉
虫にまつわる言葉
想像上の動物に対しての言葉 031
現状ではピンとこなくなった言葉 034
第2章 動物のイメージはどこからきたのか?
進化生物学的に見た好まれる動物の条件 042
パンダはどうして人気者なのか? 046
恐怖心や不快感が嫌われる動物を生む 049
ヘビはなぜ気味が悪いのか? 051
質感も好悪を左右する 056
文化によって違う扱い!? 058
洋の東西で違うオオカミ
コウモリが福をもたらす?
想像上の動物はなぜ生まれたのか? 061
第3章 ペットとしての動物
人と動物の関係による類型 066
身近な存在であるペット 070
「ペット」という呼び方
ペット・ブームの背景
人はなぜペットを飼うのか?
忠実で人なつっこいイヌ 073
気まぐれで孤独なネコ 076
ペットの品種と処理 079
イヌの品種の豊富さ
殺処分という末路
可愛さを絵に描いたようなウサギ 082
ウサギといっても2種類ある
少なくなったノウサキ
ネズミなのに愛されるモルモット・ハムスター 086
ネズミの仲間であるモルモット
食べるしぐさが可愛いハムスター
なぜネズミは嫌われてしまうのか? 088
かつては家でも見かけた身近な存在
伝染病をもたらす媒介者
カヤネズミの巣を神棚に供える?
ペットとして飼われる鳥と魚 094
コラム*「南極物語」は美談か? 096
有名な「南極物語」のあらまし
感動する前に考えるべきこと
第4章 家畜としての動物
家畜はどのようにして生まれたのか? 102
「衣食住」にかかわる家畜という存在
家畜化という大事業
のんびりと牧歌的なウシ 106
ウシはおとなしい動物?
日本でもいたるところにいた
のんびりと牧歌的なイメージ
颯爽と駆けるウマ 111
ウマの速さの秘密
天馬を想像させる颯爽としたイメージ
鼻が印象的なブタ 114
イノシシを改良
ブタはなぜ見下される存在なのか?
モコモコの毛でおおわれたヒツジ 119
モンゴルでは最も身近な動物
印象的な角と毛
キリスト教では聖なる存在
ヒツジとは似て非なるヤギ 125
山岳地帯に住むヤギ
ヤギによる生態系破壊
悪魔とされた理由
家禽と養殖・養蚕・養蜂 130
家禽の代表であるニワトリ
伝達手段としての伝書バト
養殖か進んだ意味
品種改良された昆虫であるカイコ
群れで飼うミツバチ
コラム*反芻獣の進化の秘密 137
反芻という画期的進化
進化史上の反芻の意義
第5章 代表的な野生動物
人によく似たサル 144
サルがいる国は珍しい
サルに対する特別な感覚
猿回しという特殊な利用の仕方
サルによる農業被害
間抜けでずんぐりしたタヌキ 154
「狸」は都市にも順応?
ぽんぽこタヌキとして愛される
狡猾であやしいキツネ 158
キツネは広く分布している
どうしてずる賢いとされるのか?
タヌキやキツネが「化かす」のはなぜか? 161
巨大だけどお人好しなクマ 164
日本の陸上哺乳類最大を誇る
童話に登場するクマのイメージ
里に降りるクマ
身近な野鳥、不思議な野鳥 169
少なくなったスズメ
都市を荒らすカラス
平和の象徴であるハト
高山の鳥、ライチョウ
知恵の鳥、フクロウ
第6章 利用される「野生」動物
本当は飼育が難しいアライグマ 180
野鳥・魚・昆虫の飼育 183
家畜化・養殖の試み 185
サンタのソリを引くトナカイ
生簀による養殖
観光客を呼ぶ奈良のシカ 187
「鹿政談」に見る奈良のシカの扱い
仏教にとってのシカ
枝角が特徴的なシカ 191
捕鯨とイルカショー 194
捕鯨を続けるか?
イルカショーの不思議
狩猟される鳥・漁獲される魚 198
食糧としてのキジ・ヤマドリ
釣られる魚
コラム*薬用と毛皮という利用法 200
鹿茸〔ろくじょう〕やクマの胆〔い〕には薬効がある?
衣服への毛皮の使用
第7章 動物観の変遷
急激な人口の変化 204
狩猟採集・農業・都市生活における生活の変遷 206
道具の使用
調理と栽培・飼育というステップアップ
衣・住と死について
都市生活はヒトをどう変えたか? 215
シカ猟の体験
「食べること」の範囲
「食べること」の分断
時代ごとに動物観はどう変遷したか? 220
狩猟採集時代の動物観
農業時代の動物観
都市生活時代の動物観
民話・伝承に読み取る動物観の変遷 229
「鹿〔しし〕踊り」と「追い上げ式」
タヌキと民話
かちかち山/ぶんぶく茶釜
キツネを祀る稲荷神社
「大神」であり「悪魔」であるオオカミ
第8章 私たちは動物とどう向き合うか
史実に残る「動物裁判」 240
高等・下等の境界はあるか? 243
都市生活がもたらす非寛容さ 246
パンダ・フィーバーについて 248
アイドル・シャンシャンの誕生
パンダは野生生物である
現代人と動物のステレオタイプ 252
人の生活が与えた影響
ヒトのDNAと都市生活の隔たり
我が国の伝統を振り返る
「自然保護」がはらむ意識
私たちは動物にどう向き合うか? 260
私が生態学から学んだこと
私たちがこれからすべきこと
あとがき(2018年3月1日 父の命日に 高槻成紀) [265-267]
文献 [268-271]
【メモランダム】
・本書は、人類史における農業化(&動物の家畜化)と都市化の影響を、とても重視している。これは参考文献にあるJared Diamond『銃・病原菌・鉄』に準拠している。
・「捕鯨とイルカショー」(pp.194-199)で、日本の捕鯨を扱っているが、かなり感情的(まるでシーシェパードのニュースを見てSNSに怒りの投稿をしたかのよう)。
シカやタヌキの生態についての冷静な記述との落差が大きい。
・「住居(排泄・トイレ)」にも言及している(p.211)。しかし雑すぎて、トイレの話としても、農業における排泄物の利用の話としても駄目だと思う。