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『照葉樹林文化とは何か――東アジアの森が生み出した文明』(佐々木高明 中公新書 2007)

著者:佐々木 高明[ささき・こうめい](1929-2013) 民族学
NDC:382.2 風俗史.民俗誌.民族誌



※私が加えたルビは全括弧[ ]に示した。


【目次】
はじめに [i-vii]
  いま、なぜ照葉樹林文化か
  照葉樹林文化論をめぐるいくつかの誤解
  本書の構成
目次 [viii-x]


第一部 照葉樹林文化とは――目で見る照葉樹林文化 001


1章 照葉樹林帯とその生業 003
(1) 焼畑と森の幸の利用 003
  照葉樹林帯と文化の共通性
  森の幸の利用――水さらしの技術
コラム:半栽培植物とその利用
  焼畑農耕を営む――照葉樹林文化の基礎的生業形態
  焼畑で栽培される作物――《雑穀・根栽型》の焼畑
  日本の焼畑の文化史的系譜

(2) 稲作の起源とその展開 018
  東アジアの稲作の起源とその展開――最近の研究から
コラム:アジアの栽培稲の分類――インディカとジャポニカとその細区分
  初期稲作の条件――原初的天水田[てんすいでん]と火耕水耨[すいどう]
  水田稲作農耕の成立
  照葉樹林帯における文化の発展段階――その検討
コラム:雲南青銅器文化とドンソン文化の拡がり――照葉樹林文化の東南アジアへの展開 


2章 照葉樹林帯の食文化 033
(1) モチ種の開発とその利用 033
  モチ種を好む文化
  チマキとオコワ――モチゴメ文化圏のなかで
  堅臼・堅杵と横臼・横杵――搗きモチのさまざま
  ミャオ族のモチ搗き

(2) 発酵食品のさまざま 044
  ナレズシとその拡がり
コラム:ミャオ族のナレズシ
  古代の中国や日本にもナレズシがあった
  ダイズの発酵食品――ナットウのことなど
  麹酒[こうじざけ]・粒酒――照葉樹林帯の酒
  お茶のいろいろ――発酵噛み茶と食べる茶
  さまざまな喫茶法とその展開
  日本の食文化のふるさと


3章 さまざまな文化の共通性 064
(1) 照葉樹林帯を特色づける技術と文化 064
  ハンギング・ウォールと高床住居
  もうひとつの絹の文化――桑を食べないカイコと絹
  アッサムとブータンの絹文化
  漆(うるし)の文化と木地屋[きじや]
  竹細工と竹の文化の拡がり

(2) 習俗と信仰の世界 079
  歌垣の習俗
  照葉樹林帯の歌垣
  即興で歌を唄い返す文化
  山の神(森の精霊)への信仰

コラム:銀鏡神社の霜月祭――狩り祭りの伝統を色濃く伝える
  山上他界と「原郷としての山」の信仰
  「天の羽衣」の伝説――昔話の一致

(3) 照葉樹林文化のセンター 092
  照葉樹林文化のまとまり
  照葉樹林文化のセンター ――東亜半月弧の再検討
  照葉樹林文化のセンターと稲作の起源


第二部 照葉樹林文化論の成立・展開と日本文化の形成 099


4章 照葉樹林文化論の成立――その背後にあるもの 100
(1) 照葉樹林文化論を生み出したもの 100
  それはヒマラヤのフィールド・ワークから始まった
  農耕文化起源論からの照射
  今西研究会での討論――京都学派の伝統の中で
  文明の生態史観と照葉樹林文化論

(2) 照葉樹林文化論の提唱と日本文化起源論への接近 110
  照葉樹林文化論の提唱
  日本文化形成論へのアプローチ ――『照葉樹林文化』の刊行
  『稲作以前』――仮説とその検証


5章 照葉樹林文化論の展開 116
(1) 照葉樹林文化論の枠組の形成 116
  『続・照葉樹林文化』での討論
  いくつかの問題点――発展段階の改訂と文化センターの設定
  さまざまな文化的特色の確認

(2) 照葉樹林文化論の充実――フィールド・ワークと成果の蓄積 122
  中国西南部やアッサム・ブータンでのフィールド・ワーク
  照葉樹林文化の構造を考える――『照葉樹林文化の道』で考えたこと
  民博中国西南部少数民族調査団のこと
  歌垣と歌唱文化、モチ性食品、その他
  野性稲と古い栽培稲――起源論への接近

(3) その後の照葉樹林文化論 136
  比較文化論への視角
  『照葉樹林文化と日本』の刊行
  新しい仮説の提出――チューラ(焼米)と油茶、木地屋ビルマウルシ 
  新学説はつづく――二つの絹文化とリュウキュウアイと和紙


6章 照葉樹林文化と稲作文化 144
(1) 照葉樹林文化と稲作文化の関係の再検討 144
  東アジアの農耕文化の源流をかんがえる
  東アジアの照葉樹林文化と稲作文化
  照葉樹林帯の文化の発展段階をめぐって
  照葉樹林文化と稲作文化を異なる文化として考える

(2) 『稲作文化』で論じたこと 151
  東アジアの稲作とインドの稲作
  原初的なイネの栽培形態
  原初的稲作から水田稲作農耕へ

(3) 稲作文化の独自性はどこにあるか 158
  稲作文化と雑穀文化――物質文化は継承されている
  稲作文化の独自性


7章 日本文化の形成と照葉樹林文化 162
(1) 二つの日本文化起源論――岡正雄柳田国男 162
  岡正雄の日本文化形成論――五つの種族文化複合
  日本文化=稲作文化論――柳田国男の主張

(2) いくつかの日本文化形成論と照葉樹林文化 168
  南方的な文化的特色の確認――民族学の調査・研究から
  畑作を基軸とした文化の発見――民俗学からのアプローチ
  日本民族文化の源流の比較研究
コラム:ナラ林文化とその特色
  日本の基層文化の形成と四つの画期

(3) 照葉樹林文化の伝来と定着 181
  鳥浜貝塚での発見
  栽培植物の発見はつづく
  稲作以前の農耕の復元――焼畑農耕の研究
  原初的天水田の検証――水田と畑作の間
  非稲作の村で水田が拓かれるとき
  縄文文化弥生文化との出会い

コラム:稲作文化の伝来と受容
  稲作文化の展開と照葉樹林文化
  基層に定着した照葉樹林文化


第三部 討論 照葉樹林文化と稲作文化をめぐって 199


照葉樹林文化論と稲作文化――問題提起に代えて 200
  照葉樹林文化をめぐる問題
  稲作文化をどう位置づけるか
  東亜半月弧をどう捉えるか
  検討すべき重要な課題
  稲作の起源――アッサム・雲南から長江中・下流域へ


イネを生み出した前提条件はなにか 207
  議論する稲作の範囲
  稲作を生み出したもの
  東シナ海平原とヒトの生活

コラム:農耕以前の野生植物の雑穀的な利用
  イネの栽培化過程についての問題
  根栽と半栽培


栽培稲の誕生 222
  野生イネのオリザ・ルフィポゴンは多年生
  種子繁殖イネの誕生
  イネは株分けで進化したか


長江中流域か下流域か 230
  最古の栽培稲の年代は
  イネの起源地はどんな環境だったか
  気候変動とイネの起源
  日本列島における気候変動と稲作の誕生
  マージナル(周辺)地帯の重要性
  稲作の起源をめぐる二つの説


照葉樹林文化と稲作文化の位置付け 247
  東アジアでの雑穀の伝播
  水田稲作以前の稲作
  稲作文化とは
  稲作文化はいつからか


長江文明の稲作の実態 258
  初期の水田
  城頭山遺跡の水田
  見渡すかぎりの水田はなかった
  「火耕水耨」型の稲作
  混播とモノカルチャー
  焼畑の生産性
  稲作文化はいつ成立したか
  長江文明におけるイネの重要性


照葉樹林文化論の検証 286
  平野から山地か、山地から平野か
  東亜半月弧を検証する
  火耕水耨型の焼畑水田
  長江文明のその後
  長江文明にモチはあったか
  モチ種の起源


あとがき(2007年10月16日 佐々木高明) [310-314]
主な参考文献 [315-322]




【関連記事】

・新書で知る照葉樹林文化論。


『栽培植物と農耕の起源』(中尾佐助 岩波新書 1966)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20181001/1538656529

照葉樹林文化――日本文化の深層』(上山春平[編] 中公新書 1969)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20090201/1233414000

『食の人類史――ユーラシアの狩猟・採集、農耕、遊牧』(佐藤洋一郎 中公新書 2016)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20180925/1538483664



・その他の文献。

  『稲作以前』(佐々木高明 NHKブックス 1971)
 →『[増補新版]稲作以前――教科書がふれなかった日本の農耕文化の起源』(洋泉社歴史新書y 2011)
  『続・照葉樹林文化』(上山春平[編] 中公新書 1976)
  『照葉樹林文化の道――ブータン雲南から日本へ』(佐々木高明 NHKブックス 1982)
  『照葉樹林文化と日本』(中尾佐助, 佐々木高明 くもん出版 1992)
  『日本文化の多重構造――アジア的視野から日本文化を再考する』(佐々木高明 小学館 1997)
  『稲作の起源』(池橋宏 講談社メチエ 2005)
  『照葉樹林文化論の現代的展開』(金子務, 山口裕文[編] 北海道大学出版会 2001)
  『「中尾佐助 照葉樹林文化論」の展開』( 山口裕文, 金子務, 大形徹, 大野朋[編] 北海道大学出版会 2016)