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『経済倫理=あなたは、なに主義?』(橋本努 講談社選書メチエ 2008)

著者:橋本 努[はしもと・つとむ]
カバー図版制作:山岸 義明[やまぎし・よしあき]
シリーズ:選書メチエ;419
件名:経済倫理
NDLC:DA3 経済・産業 >> 経済学・経済思想 >> 経済哲学・経済学方法論
NDC:331.15 経済 >> 経済学.経済思想 >> 経済哲学 >> 経済倫理


『経済倫理=あなたは、なに主義?』(橋本 努):講談社選書メチエ|講談社BOOK倶楽部

 いま私たちは、かつてないほど発達した市場経済の中に生きている。そして私たちは、あるときには市場の「効率性」を評価し、またあるときには市場の「失敗」をきびしく批判したりする。では、市場社会はどのように倫理的な評価/批判をされるべきだろうか。そのような問いに対して、現代のイデオロギー ――リベラリズムネオリベラリズムネオコンリバタリアニズム、平等主義、共同体主義マルクス主義――は、いかに答えうるのか。そしてあなた自身は、なに主義なのか?時事問題や、あなた自身の日常的で素朴な倫理感覚からスタートして、さまざまな思想のエッセンスを、実感的かつ体系的に理解できる、驚きの一冊。


※下記の目次では、1章のみ表を明記してある。


【目次】
目次 [003-005]


はじめに 006
  あなたはなに主義?
  倫理というお説教
  イデオロギーは生活環境に依存する
  各章の内容


第一章 一貫した経済倫理の立場を形成してみよう 023
1.1 四つの経済倫理問題 024
  唯一正しい解答はない
 A 「利益」対「道徳」 
  ① 企業は既存の商慣行を守るべきか
  ② 企業は倫理綱領を定めるべきか
  思想家たちの立場に即して見れば
  表1-1 「利益」対「道徳」 032

 B 「公正」対「安定・成長」 033
  ① 銀行の危機を政府は救済すべきか
  ② インサイダー取引はどこまで取り締まるべきか
  ③ 「一般職OL」の処理――同一労働同一賃金の是非
  ④ 累進課税の倫理
  ⑤ 配偶者控除をめぐる争点
  ⑥ 医療を市場に委ねるべきか
  経済倫理学の主戦場――公正 vs. 安定・成長
  表1-2 「公正」対「安定・成長」 042
  
 C 「自由な関係性」対「人為的なリベラル制」 043
  「自由な人間関係」の多様さ
  ① 過労死問題に対応できるのはどちらか
  ② 内部告発に対する態度
  ③ 談合の「機能」をどう捉えるか
  ④ 家事労働に値段はつけられるか
  社長の専制、コネとカネ
  表1-3 「自由な関係性」対「人為的なリベラル制」 050

 D 「包摂主義」対「非包摂主義」 053
  ① 「有害図書」は規制すべきか
  ② ハゲタカファンドは反倫理的か?
  ③ 「優先雇用」の問題
  ④ 「解雇されない権利」と雇用
  倫理/信条/願望を切り離そう
  表1-4 「包摂主義」対「非包摂主義」 059


1.2 八つの倫理的立場 060
  争点の一覧と主要な思想との関係
  表1-5 経済倫理上の主要な争点 062
  表1-6 八つの倫理的立場 063


第二章 イデオロギーの立場を分類してみよう 
2.1 八つのイデオロギー類型について 066
 (1) 新保守主義ネオコン)――Y,Y,X,X/Y 067
  「権威の危機」へのリアクションから
  新保守主義の現在の立場

 (2) 新自由主義――X,Y,X,Y 071
  企業の自由と成長、自生的な倫理
  リバタリアニズムとの違い

 (3) リベラリズム――X,Y,Y,Y/X 074

 (4) 国家型コミュニタリアニズム――Y,Y,X,X 076

 (5) 地域型コミュニタリアニズム――Y,X,X,X 076
  二つのコミュニタリアニズム
  社会全体の秩序を追求するコミュニタリアニズム
  ローカルな共同体を志向するコミュニタリアニズム

 (6) リバタリアニズム――X,X,X,Y 082
  あらゆる政府の干渉を最小限に

 (7) マルクス主義啓蒙主義――X,X,Y,X 084
  情念と理性
  マルクス主義にまつわる、もろもろのこと

 (8) 平等主義――X,X,Y,Y 090
  格差是正に焦点
  平等をめぐるさまざまな議論


2.2 補説:社会民主主義の分裂 093
  変転していった思想内容


2.3 八類型以外の立場について 097
  Y,Y,Y,Yという立場:近代卓越主義
  Y,Y,Y,Xという立場:共和主義
  Y,X,Y,Yという立場:耽美的破壊主義/支配者嫌悪主義
  X,X,X,Xという立場:国家型ディープ・エコロジー
  X,Y,X,Xという立場:開発主義/開発独裁
  Y,X,X,Yという立場:地域コミュニタリアンアナキズム


2.4 イデオロギーに引き裂かれた自己 106
  自分と社会のあいだで
  社会と個人の同型説/異型説


第三章 最近の経済倫理問題について考えよう 
3.1 「包摂主義」と「非包摂主義」――新たな分類 116
  国家の介入への態度
  フーコーの「祭司権力」/「規律訓練権力」
  失業問題にみる四つのタイプ


3.2 派遣社員を減らすべきか 122
  新たな「階級社会」か?
  四類型それぞれの態度


3.3 マクドナルドを廃止すべきか 127
  『スーパーサイズ・ミー』が問うたものへの、それぞれの態度


3.4 たばこを規制すべきか 130
  健康か自由か


3.5 グレーゾーン金利を撤廃すべきか 134
  消費者金融の隆盛は問題なのか


3.6 ホワイトカラー・エグゼプションを導入すべきか 137
  生産性アップか、働きすぎ助長か
  積極的に支持する論理


3.7 会社は誰のものか 142
  経営者・社員・株主・地域・消費者……どこに力点を置くか


3.8 まとめと調査結果 144
  表3-2 祭司型/主体化型/ヒューマニズム型/サバイバル型の経済倫理 145


第四章 「市場の倫理」と「統治の倫理」 
4.1 「市場の倫理」と「統治の倫理」 150
  自分は公務員向きか、民間向きか


4.2 「市場の倫理」を類別する 152
 (1) 行政の倫理 153
  組織の一員も自発性は必要

 (2) 生活者の倫理 156
  交渉力という資源と「代理店の責任者」
  他者とのコミュニケーションと「切磋琢磨」
  効率性・信頼・努力
  「生産性」を求める

 (3) 企業家の倫理 
  リスクを楽観的に受け止める


4.3 「統治の倫理」を類別する 166 
 (1) 封建的共同体の倫理 166
  対内道徳と対外道徳
  伝統と位階への忠実

 (2) 貴族的精神 169
  マーシャルの「経済騎士道」
  勇気を越えた「勇敢さ」
  名誉と復讐、「高貴な嘘」と運命の甘受

 (3) ポスト近代文化の倫理 174
  勤勉さから「余暇の豊かさ」へ
  見栄の倫理性と真の豊かさ
  他者の歓待


4.4 新たな分類のまとめ 181
  倫理の相互浸透


4.5 第三の倫理 183
  「市場の倫理」へのアンチテーゼ
  老後の倫理として


第五章 政治経済の羅針――あなたは「左右」? それとも「左」? 
5.1 あなたは「左右」? それとも「左」? 190
  保守に萌える若者たち――「カーニヴァル化」と「若気の至り」
  [政治経済の羅針]
    I 政治の問題
    II 経済の問題


5.2 「政治経済の羅針盤」にもとづくイデオロギー分析 203
  政治経済の羅針盤マップ
  右/左という二分法の限界
  四象限分類の注意点


5.3 自身のイデオロギーを検討するために 208
  学生たちの結果から見えること
  イデオロギー政党政治


第六章 価値観マップを作ってみよう 
6.1 心理学的アプローチの必要性 214
  イデオロギーの背後にある価値観


6.2 PVQアンケート 216
  価値に関する自画像を描く
  [PVQ拡張版アンケート]


6.3 分類の説明 224
  シュヴァルツの分類
  価値構造の二つの図


6.4 文化的価値構造とイデオロギーの関係 229
  世界各国の結果をマッピング
  日本人の例外的な価値構造
  人々はイデオロギーを簡単に変える?


6.5 文化的価値構造と下部構造 234
  下部構造が規定するのか
  二つの対立軸


6.6 イングルハートのアンケート[拡張版] 237
  自分の価値傾向を知る
  [「伝統的価値」対「世俗‐合理的価値」に関するアンケート]
  [「生存価値」対「自己表現価値」に関するアンケート]


6.7 イングルハートの価値マップ 240
  やはり下部構造がが要因か?
  ポスト産業化社会では、下部構造では説明できない
  「価値マップ」の驚くべき発見


6.8 まとめ 250
  さまざまな影響関係の中での試行錯誤を


おわりに――自分の鋳型を破ってみよう 253


巻末ブックガイド [258-260]
参考文献 [261-267]
あとがき(二〇〇八年六月 橋本努) [268-270]
註 [271-278]




【図表一覧】
表1-1 「利益」対「道徳」 032
表1-2 「公正」対「安定・成長」 042
表1-3 「自由な関係性」対「人為的なリベラル制」 050
表1-4 「包摂主義」対「非包摂主義」 059
表1-5 経済倫理上の主要な争点 062
表1-6 八つの倫理的立場 063

表3-1 包摂主義と非包摂主義の諸類型 121
表3-2 祭司型/主体化型/ヒューマニズム型/サバイバル型の経済倫理 145

表4-1 ジェイコブズの分類:「市場の倫理」と「統治の倫理」 152
表4-2 ジェイコブズの分類をさらに細分化して補ったもの 182

図5-1 政治経済の羅針盤マップ 203 

図6-1 価値類型の分類表 226
図6-2 価値類型の分類表 227
図6-3 文化価値に関する評価平均のマッピング 230
図6-4 伝統的価値/世俗−合理的価値、生存価値/自己表現価値 241
図6-5 伝統的/世俗−合理的価値の産業への影響 242
図6-6 生存/自己表現価値のポスト産業社会への影響 243
図6-7 伝統的/世俗−合理的価値のポスト産業社会への影響 243
図6-9 イングルハートの価値マップ 246
図6-10 経済水準ごとに分類したイングルハートの価値マップ 248




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