contents memorandum はてな

目次とメモを置いとく場

『新・機械技術史』(日本機械学会[編] 丸善 2011)

編者:日本機械学会[にほん きかい がっかい](1897-)
NDC:502 技術史.工学史


https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b298799.html


【執筆陣】
 新・機械技術史出版分科会
主查:三津間 秀彦
幹事:米澤 克雄
委員:
   佐藤 建吉
   堤 一郎
   三輪 修三
執筆者(五十音順):
   天野 武弘
   緒方 正則
   川上 顕治郎
   菊池 昇
   佐藤 建吉
   下間 頼一
   白井 靖幸
   堤 一郎
   中尾 政之
   三津間 秀彦
   三輪 修三
   米澤 克雄


【表記について】
・ルビは適宜、亀甲括弧〔 〕に示した。ただし、「二輪馬車(チャリオット)」のように丸括弧と片仮名の組み合わせがあるが、本文の表記をそのまま引き継いだもの。
・スミツキ括弧【 】の中の文言は、私がメモとして付加したもの。
・本書はダッシュ(―)を単独で使用していたが、ここでは二つ並べて(いわゆる二倍ダッシュとして)使っている。
・本書は縦書きなので、本文に登場する数を漢数字で表記している。今回目次を横書きで写すさいに、具体的な年号はアラビア数字で表した。ただし百年紀や概数で表示されている場合は漢数字のまま残した。



【目次】
目次 [ii-xiv]


I 章 概説 001
1節 はじめに 002

2節 現代の機械 003
 (1) 機械の構成と開発 003
 (2) 機械生産関連の大要 004

3節 機械発達の世界史的俯瞰 005
  古代
   〔1〕前3500年〜前1600年
   〔2〕前1600年〜前600年
   〔3〕前600年〜前200年
   〔4〕前200年〜後200年
   〔5〕三〜五世紀
  中世
   〔6〕六〜八世紀
   〔7〕九〜一四世紀
   〔8〕一五〜一六世紀
  近世
   〔9〕一六〜一七世紀中期
  近代
   〔10〕一七世紀後期〜一八世紀
   〔11〕一九世紀
   〔12〕二〇世紀前期(1900〜1945)
  現代
   〔13〕二〇世紀中期(1945〜1970)
   〔14〕二〇世紀後期(1970〜1990)
   〔15〕二〇世紀末〜二一世紀初期(1990〜2009)
  
参考文献 036


II章 古代 039
1節 古代オリエント・地中海 041
 (1) オリエント 041
  メソポタミア文明エジプト文明
 (2) 地中海文明からギリシア・ローマ文明へ 042
  ギリシア哲学と科学
 (3) ヘレニズム文化 044
 (4) 文化の伝搬・交流 047
  まとめ

2節 古代の機械要素技術 050
 (1) ねじ 051
  自然に対する信仰心
  アルキタス【archytas(B.C.430- B.C.365)】
  ヘロン【Heron(0010-0070)】
  アルキメデス
  ニネヴァにおける空中庭園のねじポンプ
  プレス
 (2) 歯車 057
  木製ピン歯車
  フィロ【Philon(BC.280-BC.220)】
  オーパーツ【out of place artifacts】
  天体観測技術の系譜
 (3) 滑車 063
 (4) 水車 065
   a. 横軸型揚水水車・製粉水車
   b. 堅軸型揚水水車
   c. バケット・チェーン揚水水車
   d. 螺旋型揚水水車
 (5) 車輪・車(チャリオット) 076
  文字
  ウル
  ヒッタイトのチャリオット
  ツタンカーメンのチャリオット
  石彫
  ヨーロッパ
  車の轍

3節 古代のふね 087
 (1) 丸木舟 087
  韓国の丸木舟
  中国の丸木舟
  日本の丸木舟
 (2) 大型船 091
  エジプトの構造船
  中国の刳〔く〕り船
  日本の大型船
  ローマの巨船
  ガリラヤ湖の構造船
 (3) 古典籍の記述から実験へ 099
  古事記日本書紀などに見られる記述
  バルバス・バウ
  ヘイエルダールによる実験航海
 (4) フェニキアとペルシアの船 104

4節 古代インド 106
 (1) 長さの規格 111
 (2) ゼロの発見 111
 (3) 運搬機械 113
 (4) 金属製造技術 114

5節 古代中国 117
 (1) 四大発明 119
  紙
  印刷
  火薬
  磁針
 (2) 青銅器とその銘文 125
 (3) 龍骨水車――チェーン機械のルーツ 129
 (4) 揚水水車 131
 (5) 二輪馬車(チャリオット)――自動車の祖先 133
 (6) 花機(織機) 135
 (7) 鋳鉄 137
 (8) 陶磁器 138
 (9) 馬具 138
 (10) 度量衡と秤 141
 (11) 技術書 143
  まとめ

6節 古代日本 147
 (1) 大仏鋳造の技術 147
 (2) 百万塔の製作――轆轤〔ろくろ〕による大量生産 150

参考文献 152


III章 中世 161
1節 中東・イスラーム世界(六〜一五世紀) 162
 (1) ギリシア文化の移入 162
  ペルシアの学園研究都市ジュンディシャープール
  イスラーム王国ウマイヤ朝の成立
  アッバース朝
  トゥースィー
  後ウマイヤ朝
 (2) 代数学・アラビア数字・幾何学 167
  代数学
  アラビア数字
  幾何学
 (3) 物理・化学 172
  ハイサム【アル・ハサン・ビン・アル・ハイサム(0965-1039)】
  錬金術・化学
 (4) 機械技術 175
  ムーサ三兄弟
  アル・ジャザーリ
  水車
 (5) ヨーロッパへの還流 183
  イスラーム圏における文化の拡散
  文化中心の移動

2節 中世ヨーロッパ(一三〜一四世紀) 188
 (1) 動力水車の普及と中世の産業革命 188
  動力水車の普及
  中世の産業革命
 (2) 大聖堂の建築とヴィラール・ド・オヌクール 191
 (3) 機械時計の発明と普及 191
 (4) 大学の誕生と運動力学 195
 (5) 楽器の王オルガン、そして中世の音楽学 195
 (6) 大砲のインパクト――中世からルネサンスへ 197

3節 中世中国 (宋)(一〇〜一三世紀) 198
 (1)世界初の機械時計「水運儀象台」 199
 (2)政府の建築指導書『営造法式』任小 200

4節 中世朝鲜(新羅・高麗)(七世紀後期〜一三世紀) 202
 (1) 東北アジア 202
 (2) 瞻星台〔せんせいだい〕 206
 (3) 金属活字印刷 207

5節 中世日本(鎌倉・室町)(一三〜一五世紀) 208
 (1) 刀鍛治の技術 209
 (2) 農鍛治の役割 211

参考文献 212


IV章 近世  217
1節 近世ヨーロッパ(一五〜一六世紀) 218
 (1) ルネサンスの時代 218
 (2) ルネサンス期の軍事技術とレオナルド・ダ・ヴィンチの機械技術 219
  レオナルド・ダ・ヴィンチ
 (3) マニュファクチュアと活発化する生産活動 224
 (4) 印刷術の発明 225
 (5) 鉱山治金技術と工作技術の進展 228
  ヴァンノッチョ・ビリングッチョ
  ゲオルグアグリコラ
  アゴティーノ・ラメッリ
  ジャック・ベッソン
 (6) 海上交易の発展と大航海時代の到来と技術的知識の体系化 233
  海上交易の発展
  カラック船の出現と航海術の進展
  技術知識の体系化
 (7) 実験諸科学の台頭と技術への結び付き 241

2節 近世中国(明)(一五世紀) 243
 (1) 鄭和の南海遠征 243
 (2) 造船技術 245

3節 近世朝鮮(李朝)(一六世紀) 246
  亀甲船

4節 近世日本(戦国・江戸)(一六〜一八世紀) 247
 (1) 鉄砲の伝来――ヨーロッパの機械技術との接触 247
  鉄砲の製作
 (2) 石見銀山――世界に知られた銀山 250
  採鉱技術の革新
  銅
 (3) たたら製鉄 253
  たたら法の革新
  たたらの光と影
 (4) 和時計の技術 258
 (5) 黎明期の技術者たちの発想と挑戦――平賀源内と鳥人幸吉【浮田幸吉 (1757-1847)】 259
 (6) からくり人形の技術 264
 (7) 反射炉の築造――近代技術への挑戦 265
 (8) からくり師・和時計師からエンジニアへ 268
 (9) 高かった江戸時代の技術ポテンシャル 271

5節 近世中南米(一五〜一六世紀) 272
 (1) 新大陸アメリカ 272
 (2) マヤ・アステカ・インカ文明 276
 (3) アンデス文明の新遺跡群 277
  シクラス遺跡
  カラル遺跡
  バンドゥリア遺跡
  セチン・バジョ遺跡

参考文献 285


V章 近代 291
1節 ヨーロッパ産業革命(一八〜一九世紀) 292
 (1) 産業革命の土壌 293
  近代世界の中心はロンドン
  イギリスの制海権獲得と三角貿易
  農業改革
 (2) 産業革命の進行 296
 (3) 鉱山に蒸気機関の登場 297
  木炭から石炭への移行
  トーマス・セーヴァリー
  トーマス・ニューコメン
  ジョン・スミートン
  ジェームズ・ワット
 (4) 繊維工場に蒸気動力が採用される 304
 (5) 運輸機関の発達 306
  高圧蒸気機関の出現
  ジョーン・スティーヴンソン
  ロバート・スティーヴンソン
  実用蒸気船の誕生
  ブルネル【Isambard Kingdom Brunel(1806-1859)】の活躍
 (6) 製鋼法の革新――半溶融状態の鉄から流動性のある鋼へ 315
  パドル法からベッセマー法
  ヘンリー・ベッセマー
 (7) 金属切削加工法の革新 320
  シリンダ切削精度の要求
  旋盤
  平削り盤
  ヘンリー・モーズレーの功績
  ジョゼフ・クレメント
  リチャード・ロバーツ
  ジェームズ・ナスミス
  ジョゼフ・ホイットワース
 (8) 産業革命の伝搬 328
  ロンドン万国博覧会
  ヨーロッパ大陸から他の国々へ

2節 アメリ産業革命(一八世紀後期〜一九世紀中期) 332
 (1) 新しい産業様式の確立 333
  測定器の量産
  工作機械の生産
  サミュエル・コルト
 (2) アメリカの技術革新と技術者 336
  新世界の技術者
  特許を利用する考え方
 (3) 広大な国アメリカの産業革命から展開した新しい産業 340
  アメリカ大陸の船
  鉄道
  陸の交通手段「自動車」
  広大な土地を耕作するための農業機械
  前例のない乗り物「飛行機」
 (4) 新しい世界――電気を利用した産業の時代の入り口 348
  電信電話の発明
  電球と研究所の祖
 (5) 民生機器の発明 351

3節 アメリカ技術の成長(一九世紀後期〜二〇世紀初期) 352
 (1) 鉄道 354
  路線の拡大
  機関車技術の進展
 (2) 都市の変貌――鉄筋コンクリート高層建築の出現 358
 (3) 製鉄規模の拡大 361
 (4) ガソリンエンジンの普及 363
  動力の軽量化
  ガソリン機関の発達と普及
  動力飛行への挑戦
 (5) 石油産業の興隆 367
  灯油からガソリンへ
  石油化学の進展
 (6) 電力技術の進展――直流から交流への道 369
  自励発電機の発明
  近距離地域に白熱灯用電力が配電される
  遠距離送電――直流から交流へ
  回転磁界の利用
  万能システムの整備
  経済的安定供給の時代へ
 (7) アメリカ工作機械の進展 375
  フライス盤
  タレット旋盤
  精密研削盤

4節 日本産業革命(幕末・明治・大正)(一九世紀後期〜二〇世紀初期) 380
 (1) 近代日本の変化 380
  一九世紀中期アジアにおける大英帝国の拡大
  幕末(1853〜1867)
  明治前期(1868〜1895)
  「富国強兵・殖産興業」政策
  明治後期〜大正前期(1896〜1918)
  大正後期(1919〜1926)
 (2) 近代造船 393
  大型船建造禁止令の解除
  プロペラ推進蒸気砲艦「千代田形〔ちよだがた〕」竣工
  横須賀製鉄所の創設
  近代艦隊の建設
  6000トン級貨客船「常陸丸〔ひたちまる〕」の国内建造
  日露戦争(1904〜1905)
  蒸気タービン搭載の巨大船の出現
  第一次世界大戦(1914〜1918)
  イッシャーウッド方式
  ワシントン海軍軍縮会議
  国産ディーゼル
 (3) 近代製鉄への飛躍 406
  洋式高炉の実現
  鋼〔こう〕の生産
  鉄鋼一貫の官営製鉄所建設
  民間製鉄所の拡大
 (4) 鉄道 412
  客貨車の部品輸入
  客貨車の設計・製造
  蒸気機関車の製造
  国産蒸気機関車の誕生
  鉄道院および鉄道省制式標準形車両の設計・製造
  標準車両と部品の規格化

5節 機械工学の誕生 422
 (1) フランスの土木技術と工学の誕生 423
 (2) イギリスにおける民事技術者協会の発足 424
 (3) イギリス、機械技術者協会の発足 425
 (4) 鉄道と近代造船のインパクト 426
 (5) 近代機械工学の確立 427
 (6) 日本における機械学会の成立 428

参考文献 430


VI章 現代 438
1節 現代科学技術の進展(二〇〜二一世紀初頭) 440
 (1) 現代科学技術の誕生 440
  現代的レイアウト車の出現
  高分子化学製品の開発と普及
  経営科学の誕生
  近代戦艦の出現
  ジェット推進機の出現
  ラジオ放送の開始
 (2) 国家威信の科学技術開発 446
  原子力発電所の出現
  ジェット旅客機の運行
  宇宙開発競争の開始
  電子時代の幕開け
  信頼性技術の誕生
 (3) コンピュータ制御の浸透および技術開発組織化の進展 450
  製品開発の組織化
  小型コンピュータの開発競争と機械への組み込み
  自動車排気ガスの浄化
  宇宙滞在の時代へ
 (4) 科学の領域に向かう今日の技術開発 456

2節 二〇世紀日本技術の発展(昭和・平成) 457
 (1) 日本技術の特徴 457
  技術者の役割
  リバース・エンジニアリング
  組織的知識創造
 (2) 昭和戦前・戦中(一九二六〜一九四五) 461
  世界初のアルミ・エンジン「栄」
  国内精密工作機械
  国産運輸機
  プロジェクト管理
 (3) 昭和戦後・平成(一九四五〜二〇〇九) 466
  世界初の排気ガス低減エンジン
  造船・新幹線・情報技術(IT)産業
  産業用ロボットの登場
  平成バブル崩壊後の技術開発
  今日における知的所有権

3節 設計・解析技術の発展 473
 (1) コンピュータの出現 474
  ENIACとEDVAC
  IBMの「汎用性思想」
 (2) コンピュータを必要とした背景 477
  マトリックス構造力学から有限要素法へ
  リラクゼーション法の発展
 (3) CAD/CAM/CAEのはじまり 481
  CADとCAMの開花
  「NASTRAN」の誕生
  コンピュータ・シミュレーションの時代
  CAE【Computer Aided Engineering】概念の誕生
 (4) スパュン、ミニコン、EWS、そしてパーソナル・コンビュータへ 486
  マウスの発明とGUIの導入
  マイクロプロセッサの出現
  PCがEWSを駆逐する
  インターネットの萌芽
 (5) 再びCAD/CAM/CAE 490
  CAEソフト総合化の進行
  デジタルエンジニアリングの形成
 (6) 解析・設計法の再考 494
  材料設計の可能性を広げるマルチ・スケール解析
  トポロジーの最適化手法

4節 最先端技術に貢献する機械 497
 (1) バイオ分野 497
  ゲノムプロジェクトで出た二つの画期的アイデア
  X線回析写真の51番
 (2) ナノテク分野 501
  電子顕微鏡
  走査型プローブ顕微鏡
 (3) 半導体分野 503
  トランジスタ
  フラッシュメモリ
  集積回路(IC)
 (4) 医療分野 509
  日本が先駆した内視鏡
  カテーテル手術
  マイクロサージェリー
  人工内耳
  脳内部への挑戦
  鏡視下手術による革新
  手術ロボットの登場
 (5) 環境分野 520
 (6) 設計解の実現 523

参考文献 525


VII章 未来に向かって 531
1節 歴史のメガトレンド 532
  文理シナジーが拓く未来
2節 技術者教育の過去と現在 536
  近代技術者教育の誕生と展開
  現代の技術者に求められるもの
3節 技術史に学ぶもの 539
  技術というもの
  歴史というもの
  技術史を学ぶ意義
  自分の技術史をつくろう

参考文献 544


機械技術史 略年表 [546-556]
あとがき(二〇一〇年一〇月 新・機械技術史出版分科会 主查 三津間秀彦) [557-559]
執筆者紹介 [560-562]
人名索引 [564-567]
事項索引 [567-582]






【抜き書き】

□巻末に執筆者の短い紹介が載っている。

出版分科会主查/総合監修/1章、5章3節、5章4節1〜3項、6章1節 執筆
三津間 秀彦(みつま・ひでひこ)
一九七〇年千葉大学大学院工学研究科機械工学專攻修了、
一九七九年アメリコロンビア大学博士課程修了、工学博士、元宇宙航空研究開発機構

出版分科会幹事/6章2節執筆
米澤 克雄(よねざわ・かつお)
一九六八年早稻田大学理工学部卒業
一九七七年アメリカカリフォルニア大学大学院博士課程修了、工学博士、元宇宙航空研究開発機構

2章1~4節、3章1節、4章5節執筆
緒方 正則(おがた・まさのり)
一九七五年関西大学大学院工学研究科機械工学専攻修士課程修了、現在、関西大学システム理工学部専任講師

2章5節、3章4節、4章2〜3節執筆
下間 頼一(しもつま・よりかず)
一九五八年京都大学大学院退学、同年閃西大学専任講師、一九六三年閃西大学工学部教授、一九九五年関西大学名誉教授、日本機械学会名誉員

2章6節、3章5節、4章4節執筆
天野 武弘(あまの・たけひろ)
一九七〇年名城大学第II理工学部機械工学科卒業愛知焊立豐橋工業高等学校教論を経て、現在、愛知大学中部地方産業研究所研究員

3章2~3節、5章5節、7章執筆
三輪 修三(みわ・しゅうぞう)
一九五三年名古屋大学工学部機械学科卒業、
一九七五年青山学院大学理工学部教授、同学部長・同副学長在歴任、工学博士、一九九九年青山学院大学名誉教授、日本機械学会名誉員

4章1節執筆
白井 靖幸 (しらい・やすゆき)
一九六八年千葉工業大学卒業、東京工業大学付属工業教員養成所を経て、現在、千葉工業大学工学部教授

5章1節執筆
佐藤 建吉(さとう・けんきち)
一九七九年東京都立大学大学院修了、工学博士、一九九八年千葉大学工学部助教授、現在、千葉大学工学部准教授

5章2節 執筆
川上 顕治郎(かわかみ・けんじろう)
一九六二年市立金沢美術工芸大学卒業、企業工業デザイナー、特許庁審査官を経て一九七〇年多摩美術大学教員、二〇〇六年産業考古学会会長

5章4節1、4項 執筆
堤 一郎 (つつみ・いちろう)
一九七四年中央大学大学院修了、日本労働研究機構研究所、職業能力開発総合大学校を経て、二〇一〇年同大学東京校キャリア・就職支援センター嘱託アドバイザー、工学博士、日本機械学会フェロー

6章3節 執筆
菊池 昇 (きくち・のぼる)
一九七四年東京工業大学卒業、一九七七年テキサス大学博士課程修了、工学博士、同大学助教授を経て、現在、ミシガン大学工学部機械工学科Roger. L. McCarthy教授、(株)豊田中央研究所副所長(兼務)

6章4節 執筆
中尾 政之(なかお・まさゆき)
一九八三年東京大学大学院工学系研究科產業機械工学專攻修士課程修了、
日立金属(株)を経て、現在、東京大学大学院工学系研究科教授、博士(工学)



□本書冒頭から(p. 3)。

 一般的に、機械製品が世に出てくるには社会的背景が存在する。その背景のもとで要求がまとめられる。まとめられた要求を満たすべく、利用できるものを利用して、社会的およびその他の制約をも満足すべく検討がなされる。着想に優れた人々によっていくつものアイデアが創出され、発明あるいは改良がなされる。そして製品が世に出され、利用された結果、更なる要求が生じた場合には、次なる発明・改良がなされた製品が利用されていくこととなる。そして、社会的背景に影響を受けながら、また新たな要求を生み出す。こうして、機械の開発は試行錯誤を繰り返しなから、次の段階へと進展していく。


 この指摘(「新しい技術は社会に求められて生まれる」)は洞察だと思う。ちなみに、社会心理学者の南博も80年代の著書で似たようなことを書いている。

 参照→『日本人論の系譜』(南博 講談社現代新書 1980)

どんな研究でも、あるいは“論”でも、それらが生まれてくる背景には、そのときどきの社会や時代の要求が必ず介在している。産業技術の理論的基礎になる自然科学は、その時代の産業の要求や、それに応じる人々の技術的向上心などがあって初めて著しい進歩発展を遂げることができた。人間に関する学問の場合も、基本的に自然科学と同じような社会と時代の背景があると考えていい。しかし、人間科学は人間が社会を大きく変える時期に発展する。社会を変えようとする動きがあらわれ、それが人間の新しい生き方についての思索を促すのである。

 [南(1980)『日本人論の系譜』p. 4]






□「科学」と「技術」の異同について(pp. 539-540)。

  技術というもの 
 技術とはある目的を実現させるための手段、および手段の体系をいう。与えられた自然環境と社会環境のなかで、技術なしに人間は生きていくことはできない。政治や法律も人間社会をまとめていく技術に他ならず、医療、演劇、音楽、料理、ゲーム、スポーツなど、人間の営みのすべてに技術が関係する。本書では「ものつくり、の技術に限定しているが、技術というものの性格は上記のすべてに共通している。
 技術には必ず目的があり、目的の実現にはそれに適った手法がある。しかし、技術では目的が同じでもいろいろなやり方があって、「唯一の正解」というものがない。結果はむしろ個性的でらある。これが技術の本質的な特徴であって、この点で技術は芸術と異なるところは何もない。両者の違いは、技術は有用を追求し、芸術は美を追求するに過ぎない。
 これに対して、科学はものごとの本質を究めようとする知的な営みである。対象を合理的に説明して矛盾なく統一的に理解する営みといってもよい。だから科学の働きは原因を追究して、つねに唯一の正解を求める。一方、技術は定めた目的の実現をめざす実践的な「手のわざ」であって、正解はいくつでもあるのだ。原因志向の科学と目的志向の技術。この一つをとってみても技術は科学とは少しも似ていない。
 とはいっても、技術に科学が要らないというのではない。それどころか、科学なしに現代の技術は成り立たない。科学技術という一語で言い表されるように、いまでは技術開発の根底には科学があり、科学の進歩には技術的手段が不可欠で、両者は一体となって分離できなくなっている。だが、技術と科学とは本質的に違うということは認識しておく必要がある。



□p. 220 ギルドについて。

 中世の手工業者たちは職業別に「ギルド(同業者組合)」を作り、相互扶助と技術の維持・伝承に努めていた。ギルド内部では親方、職人、徒弟の階層ができ、技術水準の維持が図られていた。ギルドは権益保護のために新たな親方の参入を制限し、ギルド制度を守ろうとした。次第に、自由競争が排除され、新技術の開発に乗り出すこともなくなり、技術は固定化されて停滞していった。
 こうした停滞の時代がルネサンス期になると、王侯や都市支配者たちが支配を確立するために、軍事技術を含めたあらゆる分野に創意工夫に富む技術者を求め始めた。芸術を身に付け技術の革新を試みる新しい形の「工学者(軍事技術者)」が生まれたのである。開発された新技術はラテン語で「インゲニウム(Ingenium/engine の語源)」と呼ばれ、軍事技術者は「インゲニアトール(Ingeniator/engineerの語源)」と呼ばれた(*1)。 
 ルネサンス期の技術と芸術には区別はなく、技術者は法王や貴族、そして支配者階級にのし上がった富豪たちの経済的援助を受けて活躍した。援助を受けるには、単に絵画や彫刻の芸術家として秀でているだけではなく、建築・土木・機械などの技術者でもあり、科学にも長けた万能に優れた工学者が求められた。イタリアの自由都市国家は、独立と安定を確保するために常に外敵に備えて様々な軍事的手段を強化し、また、聖堂の建設や絵画や彫刻の創作などへ力を注いだ。

※1 三輪、機械工学史(2000)、25頁、丸善




□p. 336 とある俗語。

  サミュエル・コル ト
 コルト(Samuel Colt/1814〜1862)は、1835年にピストルの量産を可能にした。1994年に日本で開催された『アメリカン・フェスティバル4 スミソニアン博物館展〜これがアメリカだ〜』のカタログには、コルト拳銃のさまざまなニックネームとともに、「神が人間を作り、コルト大佐が両者を平等にした」との俗語が紹介されている。

※引用者注:図は省略した。
(図) コルト・ネービー・ピストルのロンドンでの広告(1851年)
【図の出典: W. Edwards, The Story of Colt's Revolver(1970), Castle Books(USA) 】