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『誤訳の典型』(中原道喜 聖文新社 2010)

著者:中原 道喜[なかはら・みちよし] (1931-2015) 教師。
装丁:不明
件名:英語--和訳
NDLC:KS61 芸術・言語・文学 >> ゲルマン諸語 >> 英語・英文学・アメリカ文学 >> 言語生活
NDC:837.5 英語 >> 読本.解釈.会話 >> 英文解釈.英文和訳


http://seibunshinsha.co.jp/books/ISBN4-7922-1709-1.html


・2021年に金子書房から復刊。
誤訳の典型 - 株式会社 金子書房



【目次】
はしがき(2010年 夏 著者) [i-ii]
目次 [iii-vi]


Part 1 誤訳の妙味 
01 人生の三大要素 002
02 世界一の幸せ者はだれ 003
03 有名は束の間 004
04 激昂するナポレオン 006
05 雷鳴:稲妻 007
06 男に名前を呼び続けられる 009
07 「嫌う」のか「嫌われる」のか 010
08 超絶技巧の使い手 012
09 「これより気にしないことはない」とは 013
10 「棒紅」をぶらさげた警官 017
11 「顔」でなく「心」が獣 018
12 「笑った」のか「吠えた」のか 019
13 大酒樽を詰めこんだ腹 020


Part 2 誤訳のタイプ

[A] 「語・句」に関する誤訳 022
  <01> 「誤訳」ではなく「誤植」
  <02> 単語の意味を間違えたもの
  <03> 形が似た単語の混同
  <04> 多義語の意味の区別を誤ったもの
  <05> 辞書で調べても誤訳しやすい場合
  <06> でたらめ訳
  <07> イディオム(熟語・成句)を間違えたもの


[B] 「文法・構文」に関連する誤訳 048
  <08> 冠詞
  <09> 修飾関係
  <10> 文型・文構造
  <11> 強調構文
  <12> 関係節を含む構文
  <13> 時制
  <14> 比較表現
  <15> 否定表現
  <16> 準動詞(不定詞・分詞・動名詞
  <17> 省略表現
  <18> 挿入要素
  <19> 相関関係
  <20> 「複合」誤訳


Part 3 誤訳のレベル(5段階チェック)
レベル1  084
  1
  2
レベル2  088
  3
  4
レベル3  092
  5
  6
レベル4  096
  7
  8
レベル5  100
  9
  10  


Part 4 こんな誤訳もある
§1 広告文 106

§2 映画・テレビの字幕 109
  〔A-1〕 ふつうの文や慣用的な表現の,字幕での誤訳 
  〔A-2〕 映画化された小説の,翻訳と字幕の訳文を比較して 
  〔B〕 映画化された小説の,翻訳と字幕の訳文を比較して 

§3 歌詞 114
  〔A〕 原文の表現をそのまま訳出しにくい場合 
  〔B〕 ふつうの誤訳とみなされる場合 

§4 大統領就任演説 117

§5 複数訳者による重複誤訳 121
  〔A〕 ある翻訳では誤訳,別の翻訳では正訳
  〔B〕 二つの翻訳で,両方とも誤訳 
  〔C〕 同一箇所について正訳・誤訳がそれぞれ複数あるもの 

§6 Yes と No 130

§7 オノマトペ(擬音語と擬態語) 135

§8 「正訳」が文脈により「誤訳」になる 140

§9 意図的な誤(?)訳 143

§10 名作の人物の取り違え 144

§11 訳し落とし・書き加え 146
  〔A〕 「語」単位の訳し落とし 
  〔B〕 「句」の訳し落とし 
  〔C〕 「節」を含む部分の訳し落とし 
  〔D〕 「文」の訳し落とし 

§12 原文離れが目立つ誤訳 153
  〔A〕 (平易な文の)迂闊な誤訳 
  〔B〕 (やや複雑な文の)苦しまぎれの誤訳 
  〔C〕 (原文尊重を離れた)“作文”混じりの誤訳

§13 難度の高い誤訳 169


Part 5 誤訳40選
01 名詞(ratings)
02 前置詞(off) 
03 形容詞(big) 
04 イディオム(cut 〜 dead) 
05 省略・イディオム(Must be off their hands) 
06 前置詞(in) 
07 動名詞(There is no 〜ing) 
08 接続詞(so [that]) 
09 前置詞(for) 
10 前置詞(as) 
11 動詞(see to it that〜) 
12 不定詞(stop to think) 
13 イディオム(have a sweet tooth) 
14 イディオム(take one’s chance, You can say that again) 
15 名詞(shrink) 
16 前置詞(on) 
17 イディオム(no by along shot) 
18 名詞(mind) 
19 前置詞(beside) 
20 動詞(get scared) 
21 比較表現(no more 〜 than …) 
22 動詞(suppose) 
23 否定(fear not sleeping) 
24 イディオム(at best) 
25 イディオム(serve 〜 right) 
26 文型(want + O [+ to do]) 
27 代不定詞(want to) 
28 前置詞(with) 
29 動詞(suggest) 
30 後置前置詞(cling on to) 
31 慣用表現(Look who’s talking) 
32 名詞(equation) 
33 動詞(meet 〜 with …) 
34 再帰代名詞(see oneself out) 
35 接続詞(like) 
36 比較表現(more of a 〜) 
37 前置詞(for) 
38 ことわざ(be seen and not heard) 
39 慣用表現(There but for the grace of God 〜) 
40 イディオム(so many) 


索引  [225-235]





【抜き書き】

・「はしがき」(pp. i-ii)より。

 翻訳の過程は,おおまかに“解釈”と“表現”という二つの部分に分けられるが,“表現”(または“訳し方”)の適否や巧拙がかかわるのは「悪訳」であって,「誤訳」ははっきりとした“解釈”の誤りに由来するものである。
 このような誤訳を生む解釈の誤りは,語句や構文,各種の文法事項など多岐にわたり,趣も多様である。
 たとえば,単語を読み誤れば「あこがれ」が「あくび」になり,語義の区別を誤れば「大酒樽を腹に詰めこむ」事態も生じる。
 また,文法的考察を誤れば,「この上なく良好」と大統領が明言した二国間の関係が「良好だったことはない」に変わったり,「子供を殺すことはできないように,捨てることもできない」という女性の気持が「子供を捨てるくらいなら殺すわ」という言葉になってしまったりもする。

 本書では,こういったさまざまな誤訳のなかから,興味深く,啓発的で,応用性の高い,典型的な例を選び,タイプやレベルによって系統的に分類して要点をわかりやすく解説し,場合に応じて類例を示した。「翻訳の常識」としての誤訳の諸相も,英文解釈の問題点も,そして押さえておくべき文法の勘所も,その全般的な実例が一通り収められている。