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『戸籍と国籍の近現代史――民族・血統・日本人』(遠藤正敬 明石書店 2013)

著者:遠藤 正敬[えんどう・まさたか] (1972-) 政治学、日本政治史、東アジア国際関係史。
NDC:[324 民法]→[324.8 民事特別法]→[324.87 戸籍法.戸籍行政.寄留法.住民登録法.印鑑]


戸籍と国籍の近現代史 - 株式会社 明石書店


【目次】
目次 [003-005]
凡例 [006]


はじめに [007-026]
  「日本人」の証明とは?――国籍か、戸籍か?
  戸籍による国民登録――権力装置としての戸籍
  「世界に冠たる」戸籍?
  戸籍に生きる「家」の思想
  なぜ戸籍に「外国人」は載らないのか?
  「血統」とは何なのか?
  本書の課題と構成


第1章 戸籍とは何か――「日本人」の身分証明 
1.1 戸籍が証明するもの 027
  戸籍に記載される「真実」とは
  戸籍の索引的機能
  「続柄」の特異性
  本籍の意味するもの
  届出の強制力――戸籍が承認する個人の存在
1.2 監視する戸籍――個人情報の掌握 040
  戸籍による個人情報の渉猟
  戸籍による身許調査
  戸籍公開原則の問題性
1.3 戸籍の「氏」が示すもの――「家名」に一元化された個人の名 048
  氏とはだれの名称か?
  苗字から氏へ――個人名から家名へ
  明治国家が創り出した「夫婦同氏」
  「家破れて氏あり」――戦後民主化からとり残された氏
1.4 国籍証明としての戸籍――戸籍に載れば「日本人」? 058
  「帰化」という思想と戸籍
  なぜ戸籍が「日本人」の証明なのか
  無戸籍と就籍
1.5 戸籍は世界無二の制度――欧米、中国の身分登録との違い 065
  個人単位の国民登録
  「本籍」は日本独特のもの
  中国の戸口登記制度――日本の戸籍との違い
  戦後民主化と生き残った戸籍――精神革命としての「個人方式」化


第2章 国籍という「国民」の資格――日本国籍と戸籍の密接性 
2.1 近代国家における国籍――忠誠義務から個人の権利へ 075
  近代国家の勃興と国籍――「臣民」から「国民」へ
  個人の権利としての国籍
  出生地主義血統主義
  国籍決定における個人の自由――人は国家の従属物ではない
2.2 日本の国籍法の誕生――血統主義の採用 085
  国籍法による「国民」画定の必要
  日本が血統主義を採用した理由とは
  明治国家における国籍法の成立
  帰化は権利にあらず
2.3 「家」に従属する国籍――家族に求められる「血」の同一性 095
  夫婦・家族国籍同一主義という思想
  国籍に対する家制度の制約――家族国籍同一主義
  個人の国籍を左右する「家」
2.4 戦後における国籍法の改正――民主化と「日本人」の範囲 103
  血統主義を維持する日本
  国籍法における男女平等――父母両系主義へ


第3章 近代日本と戸籍――「日本人」を律する家 
3.1 近代以前の戸籍の変遷――封建社会の人民台帳 107
  古代日本と戸籍
  幕藩体制と戸籍――宗門人別帳
3.2 明治国家形成における戸籍の意義――「元祖日本人」の画定 112
  明治維新と脱籍者
  維新における戸籍の理念――「臣民簿」としての戸籍
  壬申戸籍の成立――「元祖日本人」は「臣民」として始まる
  壬申戸籍のゆきづまり
  壬申戸籍改正の要請――兵役をめぐる家と国家の対立
  明治民法と戸籍法の成立
3.3 戸籍とは「家」なり――家族と「国体」をつなぐ戸籍 132
  「家」とはなんであったか
  祖先崇拝と家
  君臨する戸主――家の玄関番
  戸籍は「国体」とどう結びついたか
3.4 戸籍の純血主義と家族主義――退けられた個人主義 141
  守るべき家の“純血”――戸籍法に明記された「排外主義」
  身分登記簿の挫折――個人主義と家族主義の衝突
3.5 領土画定と「日本人」の拡大――戸籍による蝦夷地・琉球の「日本化」 149
  蝦夷地の「日本」編入――北海道への戸籍法実施
  アイヌの戸籍編入――「臣民」のなかの「旧土人
  「琉球処分」と戸籍
  琉球人の「創氏」


第4章 植民地と「日本人」――戸籍がつかさどる「民族」「国籍」「血統」 
4.1 植民地における「日本国籍」――国籍に表れた強者の論理 161
  植民地住民の「日本人」への編入――強者の思い描く「国籍」
  「日本人」として緊縛される朝鮮人――朝鮮への国籍法施行問題
4.2 帝国における戸籍のモザイク――「日本人」のなかの「外地人」 171
  「外地」としての植民地
  朝鮮戸籍と「朝鮮人
  樺太における戸籍――「原住民」のなかの差異
  台湾における戸籍制度の紆余曲折
  「台湾戸籍」としての完成
4.3 「民族」を左右する戸籍――「血統」を食い破る家の原理 186
  「民族籍」の成立――「外地人」の発生
  本籍転属禁止の原則――家はあくまで不動
  「外地人」の兵役と参政権
  「血統」を食い破る「家」の原理
4.4 越境する「帝国臣民」と戸籍――「日本人」を創出する戸籍の諸相 199
  「台湾籍民」という存在――名義上の「日本人」
  戸籍の活用による「台湾籍民」の創出――「日本人」としての利用価値
  「朝鮮人」の証明なき人々――無戸籍の朝鮮人
  満州国における無戸籍朝鮮人対策――「戸籍啓蒙運動」としての就籍奨励
4.5 満洲国の「国民」とは?――在満「日本人」の国籍と戸籍 215
  「満洲国国籍」は存在したのか?
  満洲国における「日本臣民」の戸籍
  満洲国の民籍――未完に終わった「国民証明」
4.6 皇民化政策の急所であった戸籍問題――守るべきは内地戸籍 224
  「創氏改名」と植民戸籍
  許されざる「民族の混淆」――内地転籍自由化を禁じた意味


第5章 戦後「日本人」の再編――「帝国」解体と「帝国臣民」の戸籍と国籍 
5.1 旧植民地出身者の「外国人」化――内地戸籍が「日本人」の証 231
  「解放民族」は引き続き「日本国籍」のまま
  外国人登録の出立――名目化された「日本国籍
  朝鮮・台湾における「国民」の回収
  「帝国」解体後も生み出された「外地人」
  旧植民地出身者の日本国籍“喪失”
  1961年最高裁判決による“決着”
5.2 戦後「日本人」の回収――引揚者と戸籍 255
  樺太引揚者の戸籍と国籍
  満洲国引揚者の戸籍と国籍
5.3 戦後沖縄と戸籍――「日本人」への復帰と戸籍の再製 262
  異法領域としての戦後沖縄
  沖縄住民の日本国籍と「臨時戸籍」
  「琉球籍」としての沖縄戸籍
  「本土復帰運動」としての沖縄戸籍の再製


第6章 戸籍と現実のねじれ――開かれた制度となるには 
6.1 戸籍の差別主義のゆくえ――外国人と婚外子に対する壁 275
  新たな外国人管理制度
  変わる家族関係と変わらない戸籍――性別変更と出生届の問題
6.2 「国民」の資格をめぐる境界線――問われる日本の国籍政策 281
  求められる重国籍への寛容性――国籍選択制度のもつ意味
  重国籍者を監視する戸籍
  「日本人」の資格は開かれたのか――「血統」に固執する日本
6.3 東アジアにおける戸籍の帰趨――韓国・台湾における身分登録制度の変革 290
  韓国における戸籍制度の廃止
  変容する台湾戸籍法――「生活者」単位の精度へ


おわりに――「民族」「血統」「国籍」というフィクション [297-306]
  戸籍の創り出す「日本人」――「純血」という家の原理と擬制
  帝国日本における戸籍の役割――政治権力における「戸籍原理主義
  デモクラシーと対峙する戸籍制度――戸籍という権力装置を乗り越えるには


注 [307-332]
あとがき(2013年8月 漆黒の闇に飛び交う蛍を思い浮かべながら 遠藤正敬) [333-337]
索引 [338-342]



【メモランダム】
・著者情報。

1972年生。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。博士(政治学)。早稲田大学台湾研究所招聘研究員、宇都宮大学埼玉県立大学等で非常勤講師。専攻は政治学、日本政治史、東アジア国際関係史。著書に『近代日本の植民地統治における国籍と戸籍――満洲・朝鮮・台湾』明石書店、2010年。主要論文に「対峙する二つの新秩序『大東亜新秩序』と『大西洋憲章』における植民地主義のゆくえ」松村史紀・徐顕分・森川裕二編著『東アジアにおける二つの戦後』国際書院、2012年、「満洲国における朝鮮人の就籍問題――治外法権撤廃と無籍朝鮮人対策」『アジア経済』第52巻第10号、2011年10月、等。
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