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『「学力」の経済学』(中室牧子 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2015)

著者:中室牧子[なかむろ・まきこ](1975-) 教育経済学。
件名:教育と経済
件名:学力
NDLC:FA65
NDC:371.3 教育学.教育思想 >> 教育社会学.教育と文化
備考:分類について。NDC第10版にも「教育経済学」が無い。


「学力」の経済学 | ディスカヴァー・トゥエンティワン - Discover 21


【目次】
はじめに [001-007]
  データが覆す教育の「定石」
  「試験」と「祖母の急死」の不思議な関係
目次 [008-012]


第1章 他人の“成功体験”はわが子にも活かせるのか? データは個人の経験に勝る 013
  教育は「一億総評論家」
  東大生の親の平均年収は約「1000万円」
  米国の「落ちこぼれ防止法」で111回も使われた言葉
  経済学者が示す「エビデンス」とは
  教育で「実験」をする


第2章 子どもを“ご褒美”で釣ってはいけないのか? 科学的根拠に基づく子育て 027
  「目の前ににんじん」作戦を経済学的にひもとく
  「テストでよい点を取ればご褒美」と「本を読んだらご褒美」――どちらが効果的?
  まず「勉強のしかた」を勉強することが重要
  ご褒美は子どもの「勉強する楽しさ」を失わせてしまうのか
  「お金」はよいご褒美なのか
  教育経済学的に正しい「ご褒美」の設計
  子どもはほめて育てるべきなのか
  自尊心は「結果」にすぎない
  「頭がいいのね」と「よく頑張ったわね」――どちらが効果的?
  テレビやゲームは子どもに悪影響を及ぼすのか
  テレビやゲームをやめさせても学習時間はほとんど増えない
  「勉強しなさい」はエネルギーの無駄遣い
  「友だち」が与える影響
  「悪友は貧乏神」からどう逃れるか
  教育にはいつ投資すべきか
  幼児教育の重要性


第3章 “勉強”は本当にそんなに大切なのか? 人生の成功に重要な非認知能力 083
  幼児教育プログラムは子どもの何を変えたのか
  「非認知能力」とは
  重要な非認知能力:「自制心」
  重要な非認知能力:「やり抜く力」
  非認知能力を鍛える方法
  しつけを受けた人は年収が高い
  非認知能力を過小評価してはいけない


第4章 “少人数学級”には効果があるのか? 科学的根拠なき日本の教育政策 099
  35人か、40人か?
  少人数学級は費用対効果が低い
  情報は「金」
  「少人数学級」と「子どもの生涯収入」の関係
  日本のデータを用いた検証
  15年間で20%以上減少した日本の教育支出
  「学力テスト」に一喜一憂してはいけない
  学力テストの順位が表すものとは
  学校別順位は公表すべきか
  行き過ぎた「平等主義」が格差を拡大させる
  子どもの貧困を解決するためには
  世代「内」の平等、世代「間」の不平等
  日本の教育経済学者が求めているもの
  第三者機関による政策評価


第5章 “いい先生”とはどんな先生なのか? 日本の教育に欠けている教員の「質」という概念 141
  「いい先生」に出会うと人生が変わる
  教員を「ご褒美」で釣ることに効果はあるのか
  教員研修に効果はあるのか
  教員免許は「参入障壁」なのか
  なぜ日本で研究が進まないのか


補論:なぜ、教育に実験が必要なのか 162
  リンゴとオレンジ:比較できない2つのもの
  「反実仮想」を再現する
  ランダム化比較試験以外の「実験」
  求められる教育政策のグランドデザイン
  ランダム化比較試験の問題点


あとがき(2015年6月 中室牧子) [181-185]
参考文献 [186-199]




【メモランダム】

・書評。
吉田弘子「中室牧子著『「学力」の経済学』」『大阪経大論集』2017年67巻6号 139-143頁

教育政策についてはこれまで多くの時間と費用と労力をかけながら様々な改革が試みられてきた日本の教育界であるが,本書の教育経済学という視点でエビデンスに基づいた費用対効果の高い教育政策を優先的に実施するべきという提言はとても新鮮で,教育行政に一石を投じるだろう〔……〕。しかしながら,若干の留意点にもあえて触れておきたい。作者は,ランダム化比較実験を医療界と同様にかなり絶対視している向きがある。しかし,アメリカでは教育政策においてエビデンスの有無が補助金獲得に大きな影響を与えているが,すべての国が同じレベルでエビデンスをとらえているわけではなく,イギリスでは政策の一要因として参考レベルで実施されている。また,教育現場でランダム化比較実験を実施する際の研究倫理問題も指摘されている(岩崎崎久美子 (2015) 「教育分野での RCT」 津谷喜一郎(編),『いろいろな分野のエビデンス』ライフサイエンス社)。