著者:
梅原 猛(うめはら・たけし) 哲学。
羽生 善治(はぶ・よしはる) 棋士。
尾本 恵市(おもと・けいいち) 分子人類学。
清水 康二(しみず・やすじ) 考古学(遊戯史、鋳造技術、巨石文化)
飯田 弘之(いいだ・ひろゆき) ゲーム情報学。
熊澤 良尊(くまざわ・りょうそん) 駒師。
安次嶺 隆幸(あじみね・たかゆき) 元・小学校教員。
大川 慎太郎(おおかわ・しんたろう) 記者。
本文デザイン:土方 芳枝
NDC:796 将棋
『教養としての将棋 おとなのための「盤外講座」』(羽生 善治,梅原 猛,尾本 恵市):講談社現代新書|講談社BOOK倶楽部
【目次】
はじめに(制作者一同) [003-004]
目次 [005-010]
序章 「将棋学」ことはじめ――盤外の文化、ここに集う[尾本恵市] 011
将棋はなぜ「文化」なのかに
「将棋学」の旗揚げとなった共同研究
広く日本人のための教養として
第1章 いまこそ将棋を知ってほしい――大山・升田からAI、怨霊思想まで[梅原 猛×羽生善治] 021
1 文化は奇人がつくる 022
将棋熱中時代
おそるべき江戸時代の詰将棋
「ひらめき」は「むだ」から生まれる
恥ずかしい「インチキ将棋」
2 わざと悪手を指した名人 040
理系は直観、文系は経験
盤上を見ていなかった大山
将棋に勝つには「他力」が必要
盤上の研究者だった升田
3 直観は七割しか正しくない 053
直観を捨てるつらさ
「強いこと」とは「読まないこと」
4 将棋界に「個性」は失われたか 060
すさまじい情報戦
ドライに書き換えられる常識
将棋を「伝える」ことの大切さ
コンピュータが将棋を面白くする
5 将棋に見る日本独特の思想 072
「持ち駒」は武士道に反するか
チェスの考え方、将棋の考え方
「つるむ和」ではなく「羅漢の和」を
第2章 将棋はどのようにしてできたのか――考古学が追う「誕生」のミステリー[清水康二] 087
「特異さの謎」を解くための三つの論点
いまも続く論争
戦国時代の「朝倉駒」
興福寺での大発見
将棋の進化が垣間見えた
「奈良時代以前」に将棋はあったか
「先祖」はマックルックだったのか
将棋は「庶民のゲーム」だったのか
将棋を伝え、改変した人たち
「将棋学」の確立のために
第3章 将棋はなぜ人を夢中にさせるのか――数理で示す「面白さ」のメカニズム[飯田弘之] 113
勝負の世界から研究の道へ
「危うきところ」にある本質
「ふち」がもたらす「スリル感」と「遊戯性」
ゲームの特徴を決める「スイング頻度」
思考ゲームのスイング頻度
思考ゲームの「洗練度」を示す指標
「公平性」という問題
思考ゲームにおける公平性問題 ①囲碁
思考ゲームにおける公平性問題 ②チェス
思考ゲームにおける公平性問題 ③将棋
AIの登場で問われる日本人の叡知
第4章 将棋の駒はなぜ芸術になったのか――職人が明かす「わざ」の見どころ[熊澤良尊] 133
将棋の駒とチェスの駒の違いは?
将棋の駒は「木でできた宝石」
「平べったいこと」の恩恵――多様さを生む空間
「平べったいこと」の恩恵――「指し味」と「手さばき」
「色分けしていないこと」の恩恵――飴色の木地の美しさ
「文字で種類を区別すること」の恩恵――書体が深めた芸術性
「文字で種類を区別すること」の恩恵――進化した漆の技術
将棋の駒はいつから高級品になったのか
五角形とルールとの関係
駒づくりの実技
駒木地をつくる ①櫛板は最低2年寝かせる
駒木地をつくる ②ジグソーパズルの面白さ
文字を彫る ①書体を選んで「字母紙」を貼る
文字を彫る ②V字型に彫る「薬研彫り」
文字を彫る ③「目止め」を忘れるな
漆のわざ ①文字の仕上げは4種類ある
漆のわざ ②猫の首の毛でできた筆
漆のわざ ③文字は駒に正対して書くべし
漆のわざ ④「銘」を入れる
漆のわざ ⑤「磨き上げ」も手を抜くな
第5章 将棋はなぜ「頭のよい子」を育てるのか――教育者が説く「負けました」の効能[安次嶺隆幸] 173
将棋ブームを支える親たちの期待
「負けました」が秘める力
「気持ちを折りたたむ」
負けて泣いている子にどう接するか
「無言のうちに察する力」
「間違えることを恐れない」
羽生さんが教えてくれたこと
藤井聡太が学んだもの
第6章 将棋の「観戦記」はどう変わったか――取材現場で見た将棋界の「ハイテク化」[大川慎太郎] 195
観戦記がなければ将棋はわからない
「後日取材」は将棋界ならではの手法
21世紀に将棋と観戦記は激変した
序盤の描写が変わった
登場する棋士が多彩になった
「背景」が掘り下げられるようになった
情景描写が減った
「将棋めし」が注目される不思議
ソフトで解析できるようになった
観戦記はどうなるのか