著者:鈴木 透[すずき・とおる](1964-) アメリカ地域研究、現代アメリカ論。
NDC:383.853 飲食史[食制](北アメリカ)
【目次】
まえがき [i-vi]
目次 [v-vii]
地図 [viii]
序章 三つの記憶と一つの未来――アメリカ食文化史の見取り図 003
記憶媒体としての食べ物
アメリカの原風景
ファーストフードの成立過程
ファーストフードの抵抗の記憶
ポストファーストフードの未来
食から社会を変革する
第1章 生き続ける非西洋の伝統――食に刻まれたアメリカの原風景 013
1 白人入植者の食を支えた先住インディアンと黒人奴隷 014
食糧調達の素人としての白人入植者
先住インディアンの食の伝統と農業技術
先住インディアンの食材の代用と混血料理/創作料理の萌芽
西インド諸島型経済体制の食糧事情
料理人となった黒人奴隷
カリブ海からアメリカ南部へ
国民的スナックと返信したポップコーン
バーベキューとフライドチキン
ソウルフードの横断的性格
2 パンプキンパイの兄弟――創作される混血地方料理 032
植民地建設競争への列強の参入
イギリス植民地の多様性と非イギリス的要素
文化融合の組み合わせの帰結としての地域的多様性
ルイジアナのクレオールとケイジャン
テキサスのチリコンカルネ
ペンシルヴァニア・ダッチの食文化
ニューイングランドのクラムチャウダー
ナショナルに先行するローカル/インターナショナル
外部の恩恵を土着化していく創造力
3 飲み物の恨みは恐ろしい?――独立革命の食文化史 047
解放と模倣――イギリス植民地の矛盾した心理
独立革命直前のイギリスブーム
酒とグルメとタバーン
食通だった独立革命の指導者たち
砂糖と茶
ボストン茶会事件の象徴的意味
ラム酒からバーボン、ビールへ
紅茶からコーヒーへ
飲み物をめぐる社会的選択と文化的独立
第2章 ファーストフードへの道――産業社会への移行と食の変革の功罪 067
1 ハンバーガーの登場――移民の流入とエスニックフードビジネスの遺産 068
南北戦争でのカルチャーショックと共通体験
急速な工業化と新移民の流入
都市型エスニックフードの新たなビジネスチャンス
ハインツ社とトマトケチャップ
ベーグルとデリカテッセンの普及
クレオール料理の進化
ハンバーガーとホットドッグを普及させた万国博覧会と遊園地
創作サンドイッチとてのハンバーガー
多様な創作エスニックサンドイッチ
創作エスニックサンドイッチとチリの出会い
新たなクレオール化と食の標準化
2 コカ・コーラの数奇な運命――健康食品市場の登場と変質 092
労働形態の変化と食事の危機
都市の生活環境の悪化と体力低下への懸念
薬に依存する社会と健康食品起業家の登場
シリアルの発明とケロッグ社
コカ・コーラ社と清涼飲料産業の成立
健康食品とファーストフードの意外な関係
3 食の安全から炊事のルールヘ――食肉工場、禁酒運動、台所 106
金ぴか時代の経験と公共部門の再構築
不正の告発と安全意識の高まり
格好の攻撃対象としての食肉産業
食品規制の法制化と禁酒運動
禁酒法
台所の進化
広告産業の発展と理想の主婦像の強化
規範としてのクッキング
4 自動車時代の外食――利便性・収益性追求の終着点としてのファーストフード 119
南北戦争と缶詰の普及
西部開拓とチャック・ワゴン
夜勤労働者とダイナーの普及
世界大戦のスパムの発明
宇宙食とインスタント食品
モータリゼーションとフードビジネスの成立
マクドナルドとKFC
フランチャイズ化とファーストフードビジネスの成立
第3章 ヒッピーたちの食文化革命――蘇生する健康志向とクレオール的創造力 137
1 冷凍食品からの脱却――有機農業と自然食品 138
ファーストフード時代の到来と一九五〇年代の時代状況
TVディナーと受動化する消費者
ヒッピーたちの目指したもの
環境・消費者・食
ウィンウィンの農業モデルの構築
健康な食生活の実践
2 ヘルシーからエスニックヘ――食の多様性をめぐる新展開 148
消費されるカウンターカルチャー
スローフードの高級化とヘルシー志向の限界
ナチュラル/ヘルシーのヒントとしての異文化
多様性を擁護する社会的圧力
マルチからクロスへ――復活する創作料理の伝統
3 開花するフュージョン料理――味覚のフロンティアを求めて 159
進化するスシ
再発見するハワイ
ヒスパニックの増大とラテンアメリカの料理の影響
創作の器としてのボウルとフィンガーフード
創作料理の最前線としてのビーガン
グリーン系ファーストフード
食文化革命の到達点
第4章 ファーストフード帝国への挑戦――変わり始めた食の生産・流通・消費 175
1 格差社会とシンクロするファーストフード 176
「マクドナルド化」現象
レーガノミクスと格差社会の深刻化
ピジネスチャンスとしての格差社会
ロードサイドビジネスの進化形としてのデリバリーサービス
ロードサイドビジネスからフードコートへ
2 肥満大国への警鐘とフードビジネスのパラダイムシフト 190
『スーパーサイズ・ミー』
『ファーストフード・ネイション』
フードトラックと新たな路上食文化
クラフトビールの興隆
定着するファーマーズマーケット
3 農業共同体の再構築――効率から公益へ 201
アグリビジネスと農業の工業化
効率的農業生産の代償
新しい農業のモデルとしてのCSA
食を超えたCSAの効用
フードジャスティスからフードアクティヴィズムへ
アグリフッドの実験
都市農業のフロンティアとしての屋上農園
食文化革命への再チャレンジ
社会のトータルなコストを考える
コンパクトな経済圏とコストの公平な負担を考える
儲かることより暮らしやすいことを考える
アメリカン・ドリームと食
終章 記憶から未来へ――新たなる冒険の始まり 223
1 現代アメリカの歴史的位置と課題 224
人口構成の変化と
冷戦の終結とアイデンティティの危機
過去の直視と自己相対化の必要性
多文化主義とアメリカ第一主義のねじれ現象
自己中心主義と反知性主義
打開の糸口としての食
2 食に対する意識改革の射程 232
異種混交性とアメリカのポテンシャル
多文化主義と国際協調主義の結節点の強化
格差社会の解消と公的世界の再構築
記憶と変革を媒介する食文化研究
変革は国境を超えて
あとがき [241-250]
参考文献 [251-257]