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『戦争がつくった現代の食卓――軍と加工食品の知られざる関係』(Anastacia Marx De Salcedo[著] 田沢恭子[訳] 白揚社 2017//2015)

原題:Combat-Ready Kitchen : How the U.S. Military Shapes the Way You Eat
著者:Anastacia Marx De Salcedo ノンフィクション作家。
訳者:田沢 恭子[たざわ・きょうこ] 翻訳家。
装幀:椿屋事務所[つばきやじむしょ]
NDC:588.02 製造工業 >> 食品工業の歴史


戦争がつくった現代の食卓|白揚社 -Hakuyosha-


【目次】
献辞/題辞 [001]
目次 [003-005]


題辞 [009-010]


第1章 子どもの弁当の正体 011


第2章 ネイティック研究所――アメリカ食料供給システムの中枢 I 021
  兵士が戦場で食べるもの――レーション
  レーションを試食する


第3章 軍が出資する食品研究――アメリカ食料供給システムの中枢 II 035
  レーションの研究開発の仕組み
  軍との共同プロジェクトのための制度
  企業の食品研究に対する軍の資金援助
  ネイティック研究所が食品に与える大きな影響


第4章 レーションの黎明期を駆け足で 051
  古代の戦と食べ物
  古代シュメールとエジプト軍の糧食
  古代ギリシャ軍の食事
  ローマ帝国の保存食
  ヴァイキングモンゴル帝国の糧食
  アステカ帝国の食事


第5章 破壊的なイノベーション、缶詰 069
  フランスで生まれた大発明
  アメリカの缶詰牛肉スキャンダル
  缶詰牛肉に何が起きていたのか?
  食べ物が腐る仕組み
  微生物がもたらす影響
  侵襲性と非侵襲性の病原菌
  食中毒を起こす悪名高き細菌
  犯人は缶詰牛肉だったのか?


第6章 第二次世界大戦とレーション開発の立役者たち 095
  レーション開発に乗り出したローランド・イスカー
  リーダーシップを発揮したジョージ・ドリオ
  食品研究プログラムを取りしきったバーナード・プロクター
  食品保存研究を進めたエミール・クラム
  戦後の食品加工研究


第7章 アメリカの活力の素、エナジーバー 115
  弁当のアイテムNo.1 ――エナジーバー
  バー状の栄養強化食品
  チョコレートとミルトン・ハーシー
  チョコレートを使ったレーションの開発
  Dレーションと溶けないチョコレート
  フリーズドライ技術の誕生
  宇宙開発とフリーズドライ
  水分活性とマーカス・カレル
  宇宙飛行士と中間水分食品
  添加物としての塩と砂糖
  中間水分食品とフリーズドライのその後
  手づくりで生まれたエナジーバー


第8章 成型肉ステーキの焼き加減は? 149
  弁当のアイテムNo.2 ――パック入りの加工肉
  解体処理から切り離された現代
  骨つき肉と肉屋
  筋肉の代謝作用
  冷蔵技術の誕生
  軍が箱詰肉を採用する
  カット肉を民間に広める
  マックリブを発明したのは誰か?
  くず肉をステーキに変える軍の研究
  成型肉が軍から一般消費者へ


第9章 長もちするパンとプロセスチーズ 175
  弁当のアイテムNo.3、4、5 ――スライスパン、プロセスチーズ、チーズ味のクラッカー
  パンをつくるイーストと発酵
  製パン隊とイースト研究
  工場でパンをつくる
  パンの老化を防ぐ酵素
  工場製のパンと健康問題
  常温保存できるパンの開発
  プロセスチーズとチーズパウダー


第10章 プラスチック包装が世界を変える 209
  弁当のアイテムNo.6、7 ――サランラップとジュースパウチ
  高分子科学の黎明期
  マルクの亡命とプラスチック研究の発展
  サランフィルムの開発
  レトルトパウチの開発
  レトルトパウチの安全性
  ナノテクノロジーと包装材


第11章 夜食には、三年前のピザをどうぞ 239
  一〇代の間食という侵すべからざる儀式
  常温保存が可能な食品
  ハードルテクノロジーの開発
  古代ローマのハードルテクノロジー
  微生物を制御する技術
  ネイティック研究所とハードルテクノロジー
  高圧加工と食品保存
  FDAによる承認
  食の安全を管理するシステム

 
第12章 スーパーマーケットのツアー 267
  青果売り場とジュースコーナー
  調理済み食品と食肉コーナー
  乳製品コーナーとパン売り場
  缶詰とレトルト食品コーナー
  放射線殺菌と消費者の反応
  フリーズドライ製品と冷凍食品コーナー
  食品以外の品々
  輸送と安全管理に対する軍の影響
  食べ物の味を評価する受容性研究


第13章 アメリカ軍から生まれる次の注目株 289
  研究開発とベンチャーキャピタル
  病原体バイオセンター
  パフォーマンス向上成分と斬新な送達システム
  FF&Vの賞味期限を延ばす
  パーソナル飲料クーラー
  ソーラー式冷蔵コンテナ
  ゴミをエネルギーに変えるコンバーター


第14章 子どもに特殊部隊と同じものを食べさせる? 313
  戦争とレーションの将来
  加工食品が与えてくれる自由
  軍の食品研究の問題点


引用 [327-329]
謝辞 [331-335]
訳者あとがき [337-340]
註 [342-349]
参考文献 [351-380]





【関連記事】
『フードトラップ――食品に仕掛けられた至福の罠』(Michael Moss[著] 本間徳子[訳] 日経BP 2014//2013)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20150313/1426172400
……アメリカの食品産業の展開と一部のマーケティング戦略を(本書よりも批判的に)書いた本。





【抜き書き】


・64ページから歴史トリビアを。

 モンゴル帝国はシベリアや東南アジア、東ヨーロッパから中東まで支配の手を広げ、軍勢は一五〇〇万人から三〇〇〇万人を殺害したと推定されているが、最盛期を過ぎると反芻動物を引き連れてテントで暮らす遊牧民生活様式はすたれ、穀類を基盤とした経済に依拠する大都市へと吸収された。 
 大昔の祖先が他民族に対して抱いた反感の名残は、食品への偏見として現在でも見受けられる。中国人は、中国を征服したモンゴル人の常食だった乳や乳製品を嫌う。イスラム教徒とユダヤ教徒――セム族は流浪の民の始祖だ――は豚(草を消化できず、群れを形成せず、長距離の移動に適さない)の食用を禁じているが、それは敵の飼育する家畜に対する本能的な侮蔑のせいである。私たち自身は肉汁たっぷりのステーキをあがめるが、これも野蛮人だった過去のひそかな表れだ(アングロサクソン人の先祖にあたるアングル族は牛の牧畜をしていた)。モンゴル人の遺産は粉乳やジャーキーとして生き残り、今でも兵士のリュックサックに入っている。