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『言葉はいかに人を欺くか――嘘、ミスリード、犬笛を読み解く』(Jennifer M. Saul[著] 小野純一[訳] 慶應義塾大学出版会 2021//2012)

原題:Lying, Misleading, and What is Said: An Exploration in Philosophy of Language and in Ethics (Oxford University Press, 2012)
原題:Dogwhistles, Political Manipulation, and Philosophy of Language, in: New Work on Speech Acts, pp. 360-383, Oxford University Press, 2018.
著者:Jennifer Mather Saul(1968-) 言語哲学
訳者:小野 純一[おの・じゅんいち] 哲学、思想史。
装丁・イラスト:中尾 悠[なかお・ゆう]
NDC:801.01 言語哲学.言語美学


慶應義塾大学出版会 | 言葉はいかに人を欺くか | ジェニファー・M・ソール 小野純一


【目次】
目次 ([i-iii])
凡例 ([iv])
献辞 [002]


序文 003


第1章 嘘をつくとはどういうことか
1 「言うこと saying」とは何か 014
2 嘘をつく人は「言われていること」が誤りだと信じていないといけないのか 016
3 「言われていること」は誤りでなければならないのか 017
4 欺く意図は何か、それをどう表現するか 018
  「欺く意図」を定義に含めることの利点
  単純な「欺く意図」ではない
  「聞き手にPだと信じさせる意図」
5 欺く意図を定義に組み込むことに反対の立場 021
6 「保証 warrant」を定義に加える 023
  保証を与える文脈についての知識
7 最後に残ったやっかいな問題 027
  隠喩〔メタファー〕
  偶発的な誤り
  定義(8)の障害とさらなる変更
    隠喩や言語的な思い違い、マラプロピズム[malapropism]を伴う嘘とは何か
    保証を与える文脈に自分がいるとみなすこと
  これまでの要約
  終わり――いかさま〔ブルシット〕との対比


第2章 「言われていること」をめぐる議論
1 背景と舞台設定 039
  「言われていること」に対するグライスの見解
  複雑な問題
    指標辞(指標詞) indexical
    指示詞 demonstrative
    完成化 Completion
    拡張 Expansion
  やっかいな事態に対処する
  用語法
  偶発的な誤り
2 「言われていること」の「非制約的な概念」 050
3 「言われていること」の「制約的な概念」 054
  完成化
  拡張
  偶発的な誤り
    ビリーとエンパイアステートビル(ヴァージョン1)
    ビリー(ヴァージョン2)
    ビリー(ヴァージョン3)
  嘘をつくこと

4 「言われていること」の「厳格な概念」 066
  バック[Kent Back]の意味内容と「言われていること」
    問題
      指示詞
      完成化
  ボーグ[Emma Borg]の意味内容
    問題
      "完成化"
  カペレン[Herman Cappelen]とルポア[Ernest Lopore]の意味内容
    問題
      「完成化」
  統語的な省略――「言われていること」の「厳格な概念」にとっての問題を最小化する
    統語的な省略と「完成化」
      怒鳴ること
    統語的な省略の限界
    統語的な省略のより広い理解


第3章 「言われていること」とは何か
 1 問題の分析 087
  非制約的な概念
  「言うこと」についての制約的な概念
    レカナティ[François Récanati]の「言われていること」と「関連性理論 Relevance Theory」の表意
    ケント・バックの含意
    ジェイソン・スタンリー[Jason Stanley]の意味内容と「言われていること」
  厳格な概念
  緩和された厳格さ――「完成化」と「拡張」を区別することの重要性

 2 文脈による寄与をどこまで許容するか 094
  真偽判定にとっての必要最小限の条件
  文脈による寄与の選択
    対立するケース
    不確定なケース
      選択肢1「事物による完成化」
      選択肢2「不確定な完成化」

 3 結論 110


第4章 嘘は本当にミスリードより悪いのか 115
 1 明確にすべき問題点 118
 2 主張Mへの反例 119
  シャーラ、デイヴ、HIV
  ジョージとピーナッツオイル
  玄関先の殺人鬼
 3 無効にできる(defeasible)主張とは何か 122
  カント[Immanuel Kant]とマッキンタイア[Alasdair MacIntyre]――異なる義務
  チザム[Roderick Chisholm]とフィーアン[Thomas D. Feehan]――背信行為
  "聞き手に用心させよ―― Caveat Auditor"
  努力と犠牲
  生産的な交流を継続する能力
  カントとアドラー[Jonathan E. Adler] ――推論と責任
  より厳密な推論の捉え方とは何か
  アドラー ――欺瞞の必要性

 4 代替案 139
  行為の評価と人格の評価
  なぜ嘘かミスリードかの選択が、人格の道徳性を露呈させるのか
    異常な文脈
    道徳性に関する他の誤った信念
    嘘とミスリードの区別に関する誤った信念に基づかない選択
      異なる欲望に基づく選択
      誤りに気づいたうえでの選択
  特別な文脈
    法的な文脈とそれに潜在的に類似したその他の文脈
      法的な文脈
      関連する文脈
    明示的な合意とそれほど明示的ではない合意
 5 複雑な代替案 158


第5章 さまざまな「欺瞞」を読み解く
 1 これまでのまとめ 162
  「嘘をつくこと」の定義
  「言われていること」の定義
  道徳的な意義

 2 決疑論の策略 164
  心裡留保の教義
    簡潔な説明
    分析
  多義性の教義
  指示詞 demonstrative

 3 「完成化」のケース 183

 4 エンパイアステートビルと、別の場所でしたジャンプ 186

 5 クリントンの発話と偽証罪 189
  「ある is」の意味
  クリントンが語る性的な関係
    この定義の標準的な解釈
    定義の再検討
    「ジョーンズ裁判」の外で
  二人きりの時

 6 マダガスカル人 200

 7 気配りと配慮 201

 8 聞き間違いにつけこむ 206

 9 文脈を無視した引用 206

 10 「言われていること」の他の用法 209
  「近所で何かをやっている」
  政治家、結婚、子ども
  推薦状
  助産師と母乳育児
  目的としての政権交代


結論 215


附録 犬笛、政治操作、言語哲学 217
1 犬笛 219

2 意図的な犬笛 220
  意図的であからさまな犬笛
    「奇跡を起こす力」
    「ドレッド・スコット」判決
  隠れた意図的な犬笛
    ウィリー・ホートン
    「インナーシティ」

3 意図的でない犬笛 231
  ウィリー・ホートンとレポーターたち
    「財政支出」の人種化

4 現在の理論が完全には捉えられないこと 238
  現在の理論が捉えられること
  より捉えにくいケース
    スタンリー
    ラングトン[Rae Langton]とマクガワン[Mary McGowan]
    隠れた発語媒介的な言語行為としての隠れた意図的な犬笛
    意図的でない隠れた犬笛

5 政治的な結果 248
  犬笛と民主的な権限
  スタンリー


注 [257-281]
訳者解題 [283-290]
参考文献 [5-10]
人名索引 [3-4]
事項索引 [1-2]




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『話し手の意味の心理性と公共性――コミュニケーションの哲学へ』(三木那由他 勁草書房 2019)