原題:Radical Markets: Uprooting Capitalism and Democracy for a Just Society (Princeton University Press 2018)
著者:Eric A. Posner (1965-) 法学。弁護士。
著者:Eric Glen Weyl (1985-) 経済学。
監訳・解説:安田 洋祐[やすだ・ようすけ](1980-) 経済学。
訳者:遠藤 真美[えんどう・まさみ](1963-) 翻訳。
装丁:橋爪 朋世[はしづめ・ともよ] ブックデザイン。
編集担当:九法 崇[くのり・たかし] 編集。
件名:市場論
件名:資本主義
件名:民主主義
NDC:331.845 経済学.経済思想 >> 経済各論 >> 交換の理論:流通,価値,価格 >> 市場の理論
ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀 | 東洋経済STORE
【目次】
目次 [001-015]
献辞 [016]
序文 オークションが自由をもたらす 019
西側でいちばん格差の大きな国
行き詰まった改革の処方箋
ラディカル・マーケットとしてのオークション 023
右派と左派の欠陥
オークションが世界を救う
リオを売りに出す──思考実験 025
オークションがもたらす四つの変化
ラディカル・ヒーロー 028
ウィリアム・S・ヴィックリーの記念碑的な論文
ヴィックリーのビジョンを具体化する
序章 自由主義の秩序の危機 033
「歴史の終わり」と置き去りにされた急進派
無視された格差の問題
リバタリアン的な願望と平等主義的な目標を結びつける
格差 037
格差の拡大と失われた賃金
国家間の格差
停滞 043
鈍化する生産性
生かされない労働力と資本
成長率の減速と格差の拡大が同時に進行している
対立 047
ポピュリズムとナショナリズムの台頭
多数者集団と少数者集団の対立
市場と市場批判 052
「モラル・エコノミー」という小さな共同体
モラル・エコノミーの利点と限界
真の市場のルール 057
市場経済を成立させる三つの原則
原則1 自由
原則2 競争
原則3 開放性
三つの原則を損なうもの
自由主義の内部分裂
完全競争という幻想 064
不完全な市場システム
市場が存在しない領域
ラディカル・マーケットをイメージする 068
本書で主張されるアイデア
第1章 財産は独占である──所有権を部分共有して、競争的な使用の市場を創造する 071
エスピノーサのケース
通行権という障壁
資本主義と自由か、資本主義と独占か 076
財産の私有化が資本主義をもたらした
産業革命における格差と非生産性
投資されることなく、使われることのない土地
私的所有が効率的な資源の配分を妨げる
中央計画、企業計画 083
独占問題に対する二つのアプローチ
所有権のない市場 085
競争的共同所有
ヘンリー・ジョージの「土地税」と「モノポリー」ゲーム
ジョージ主義の欠陥
「社会主義」の魂をめぐる闘争 091
中国とロシアの革命
中央計画制の欠点
私的な交渉と独占問題
設計によって競争を促進する 095
ヴィックリーが提示したオークションという制度
オークションの問題点とその解決策
会社の所有権を決める入札システム
資産に投資するインセンティブ
価格も税金も、自分で決める 103
財産の自己申告制度
住宅の価値を評価する
税率を調整して投資を促す
「共同所有自己申告税(COST)」によって所有権を社会と保有者で共有する
COST運用の七つのポイント 113
COSTはどのように機能するのか
一税二鳥 117
「シグナリング」と「保有効果」が消滅する
借り入れという問題も解決される
取引の障害が減少する
公的リースを最適化する 121
公的市場へのCOSTの導入
COSTはさまざまな公的資産の管理に役立つ
真の市場経済 125
COSTの劇的な経済の改善効果
COSTはどのように平等化をもたらすか
仏教の最善の教えに従い、公正なコモンウェルスをつくる 129
個人的に思い入れがあるものが売られないようにする
モノより経験
富の分配が社会的信頼を育む
第2章 ラディカル・デモクラシー ──歩み寄りの精神を育む 135
ケンタロウのケース
二次の投票(QV)が政治を変える
民主主義の起源 142
多数決の危険性
混合政体
民主主義の台頭と限界 142
少数者の権利を守ろうとしたアメリカ合衆国憲法
グリッドロック(膠着状態)
形を変えたエリート支配
フランス革命と民主主義の利点とパラドックス
選好の強さを反映できない投票
多数決がヒトラーによる独裁を招いた
イギリスの功利主義者たち
民主主義を根本から改革する 156
公共財に関する集合的決定
投票が他者に課すコストを支払う
環境汚染の限界費用
少数者が支払うべき費用の計算
費用は二次関数的に増加する
二次の投票 166
票数の2乗のボイスクレジットで票を買う
ただ乗り問題と多数者の専制問題
QVがうまく働かないケース
強い関心を持つ少数者が多数者の支配から守られる
QVの実践例 174
世論調査とマーケットリサーチ
weDesignソフトウェア
QV調査は選好の強さを明らかにする
評価システムと社会集団システム
QVの応用範囲を広げる
民主主義を民主的手段で実現する 185
複数候補・単一当選者選挙制
代表制民主主義
QVの通貨としての性質と取引の範囲
合理的な譲歩へと導く190
ラディカル・マーケット
QVがもたらす経済的利益
QVは社会をどのように変えうるか
QVが共有と協力をもたらす
第3章 移民労働力の市場を創造する──国際秩序の重心を労働に移す 195
デルフィーンとファビアンのケース
進まない一般的な技能を持つ労働者の移住
自由貿易の起源 200
交易と移住の歴史
移住が重要になる前の世界 202
自由移住よりも自由貿易
国家間と国内の格差の推移
19世紀と20世紀における移住に対する姿勢の変化
グローバリゼーション 208
新たな国際秩序
お金は自由に移動するが人は自由に移動できない
移住を阻む壁 211
移住の自由化がもたらす利益
いまのまま移住を拡大していいのか 213
国境の開放がもたらすもの
アメリカの場合
ヨーロッパの場合
移民に対する反発の広がり
ビザをオークションにかける? 219
オークションをベースとした移住システム
移民が平等をもたらす
ビザを民主化する 223
「個人間ビザ制度(VIP)」
身元引き受け人のシナリオ
VIP制度に必要とされる法律の整備
H1‐Bプログラムとの比較
オペア制度という先例
政府でなく個人と共同体が受け入れを判断する
制度面での支援
VIPは機能できるのか 235
移住の利益を共有する
市民レベルの国際協調 237
移民が利益をもたらす
VIPは労働者の対立をなくす公正な制度
VIP制度が格差を助長しない四つの理由
移民に対する反感を共感に変える
第4章 機関投資家による支配を解く──企業支配のラディカル・マーケット 246
オブロモフのケース
世界を支配する機関投資家
千の顔を持つ独占者 252
巨大企業による独占
反トラスト法
「赤の女王」現象
頭のないタコ 258
誰が株式会社を所有し、支配するのか
反トラスト対策と企業統治という対立する規制
楽な資本主義 261
投資先を分散させることによるリスク回避
機関投資家とは誰か
トラストのように振る舞う機関投資家
インデックス運用のどこが悪いのか 268
市場集中の度合いは何によって決まるのか
機関投資家が価格競争を阻止する
航空業界と銀行業界の競争のケース
機関投資家の支配が賃金を下げる
競争を回復する 275
機関投資家による株式の所有を制限する
コーポレートガバナンスを改善する
分散投資に及ぼす影響が小さい三つの理由
法的な根拠 282
機関投資家にクレイトン法第7条を適用する
機関投資家に対して訴訟を起こすことの問題点
独占を克服する 287
労働者に関する買い手独占の問題
労働市場における「再販価格維持」
反トラスト法が執行されない領域
機関投資家による独占を阻止する
第5章 労働としてのデータ──デジタル経済への個人の貢献を評価する 293
ジェイラのケース
データの生産者としてのユーザー
タダで収集したデータが莫大な利益をもたらしている
「データ労働」の源流 300
対価なき労働
インターネットの収益モデル
グーグルが広告ビジネスに参入した三つの理由
「思考する」機械をつくるための工場 305
機械学習(ML)とは何か
人間の脳の構造を模倣する「ニューラルネットワーク」
ニューラルネットを動作させる三つの要素
「過学習」という問題
必要となる膨大なデータ量と計算量
セイレーンサーバー 314
コンテンツに報酬を支払わないプラットフォーム
AIが仕事を奪い、労働分配率を下げる
「労働としてのデータ」
ダイヤの原石 319
自然に手に入る資源としてのデータ
標準的な統計
機械学習におけるデータの価値
データが増えてもデータの価値は減らない
テクノロジー封建主義 327
プラットフォームによるデータの市場価値の独占
データにラベル付けをする仕事
セイレーンサーバーがユーザーにデータの価値を支払わない理由 331
労働は余暇になり、仕事は娯楽になる
データ労働市場における買い手独占力の問題
オンラインの娯楽という魔法
デジタルサービスに対する不信感
高度な技術システムの必要性
独占状態を打破し、生産的なモデルへとシフトする
労働者の闘争 340
カール・マルクスの主張
労働組合が果たした役割
データ労働者の組合
データの価格 345
データ経済への個人の貢献の価値を評価する
デジタル労働市場のための規制インフラ
データ労働のラディカル・マーケット 348
データ労働から得られる所得
社会に貢献しているという意識
結論 問題を根底まで突き詰める 353
トゥエンのケース
浮かび上がる共通のビジョン
経済 358
制度が経済の進路を左右する
本書で提案された制度
格差の是正と成長率の改善
COSTを人的資本に適用する
COSTを人的資本に適用することの二つの問題
才能のある人と才能のない人の自由の格差が改善される
政治 368
平等と効率がもたらされ政治と経済が調和する
独占がもたらす問題を払拭する
QVに金銭を使うことでもたらされる利益 国際問題 VIPがもたらす利点と課題
QVが国際協調を促す
QVが移民と自国民の対立を解消する
COSTによって移民がもたらす利益が広く共有される
社会 379
市場が他人への信頼感や結束、寛容さをもたらす
QVは差別や偏見をなくす
よりよい世界をつくるために 383
拡大する個人の主体性と責任
操作や共謀を防ぐ法律と社会規範が必要となる
公正な政策 387
新しいアイデアを試し、繁栄と進歩をめざす
エピローグ 市場はなくなるのか 389
市場という奇跡 389
中央計画制が失敗した理由
鉛筆を一からつくるために必要な知識と計画
経済を数学の問題とみなすという誤り
並列処理装置としての市場 395
市場はどのようにプログラムされているのか
価格という必要最低限の情報
市場は資源を最適に分配する強力なコンピューターである
市場は時代遅れのコンピューターなのか 401
市場はシリコンで複製できる
コンピューターはあなたを計画できるのか 403
中央計画者は人々の異なる欲求を推測できない
アルゴリズムが人間の欲求を学習する
機械が診断を下す
データから個人の好みを推測する
コンピューターが市場に取って代わる日まで
謝辞 [411-415]
日本語版解説――過激で根本的な改革の書(2019年10月 安田洋祐) [416-422]
原注 [423-460]
索引 [461-476]
著者・監訳者・訳者紹介 [478]