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目次とメモを置いとく場

『命の価値――規制国家に人間味を』(Cass Sunstein[著] 山形浩生[訳] 勁草書房 2017//2014)

原題:Valuing Life: Humanizing the Regulatory State(2014)
著者:Cass R. Sunstein(1954-)
訳者:山形 浩生
装丁:宮川 和夫
NDC:317.9 行政 >> 外国の中央行政


命の価値 - 株式会社 勁草書房

「ナッジ」で知られるハーバード大学の教授がホワイトハウスへ。情報規制問題局の局長として、規制に関する法律の実際の立法に関わる。政策採用の是非の基準や、その際の費用便益分析の用い方まで、その内実を明らかにする。


【目次】
献辞/コロフォン [/]
題辞 [i]
目次 [ii-iii]


はじめに――フランクリンの代数 001


第1章 政府の中 015
ルールのレビュー OIRAプロセス 022
  基本
  「ROCISにアップロード」
  内部プロセス
  外部会合 
費用、便益、政治 050
  費用と便益の役割は重要だが限られている
  専門的な問題、政策的な問題、政治
  分散した情報について  


第2章 人間的な帰結、あるいは現実世界の費用便益分析 067
基本 070
死亡リスクの価値評価 073
幅の広さ 076
コベネフィットとリスク=リスクトレードオフ 079
定量化困難または不可能な便益 082
純便益 085
気候変動 086
割引率 087
見事な問題と制度的な制約 090


第3章 尊厳、金融崩壊など定量不能なもの 093
問題、手法、謎 093
定量化担当者の三つの課題 097
情報不足 101
実務 105
謎 110
簡単な場合、むずかしい場合 111
上限と下限 112
定量不能と金銭化不能 114
比較 115
知見の不足と条件つき正当化 116
ブレークイーブン分析にできること、できないこと 118


第4章 人命の価値その1 ――問題 121
支払い意志額――理論と実践 129
厚生と自律性 131
疑問、疑念 133
統計的リスクの価値 135
個人化 136
リスク 137
  人々 
理論と実践 150


第5章 人命の価値その2 ――解決策 157
楽なケース 160
厚生と自律性(再び) 160
VSLを分解する 163
楽なケースは実在するのか? 166
反対論 167
  「欲求ミス」
  情報や行動的な市場の失敗
  権利
  民主主義と市場
  きわめて低い確率のカタストロフ的なリスク
  第三者の影響
もっとむずかしいケース 181
  構成と分配
  最適課税と実行性
世界的リスク規制と国別の価値評価 188
  インド人の命はアメリカ人の命より価値が低いのか。気候変動など
政策と実務 193


第6章 リスクの道徳性 195
通常のヒューリスティックス、確率、頑固なホムンクルス 197
ヒューリスティックスと道徳性 200
アジア病気問題と道徳的フレーミング 203
費用便益分析 207
裏切りと裏切りリスク 211
排出権取引 214
予防原則と損失回避 217
ルールと失敗 220


第7章 人々の恐怖 223
確率無視――理論と実践 226
電気ショック 228
がん 230
恐怖、怒り、確率 232
制約と異質性 236
法律への要求を動かすのは何か? 237
どうすればいいのか? 241
鮮明さと確率 245


おわりに――規制国家を人間化する4つの方法 247


謝辞 [251-253]
訳者あとがき(二〇一七年一一月 東京にて 山形浩生) [255-270]
 1.はじめに
 2.著者について
 3.本書の特徴――『シンプルな政府』との関係
 4.本書の議論の骨子
   1 費用便益分析とは何か?
   2 行動経済学的な視点 
   3 アメリカの規制行政の内実
 5.規制行政の現実とは
 6.おわりに


補遺E:死亡と病気の価値 [lxi-lxii]
補遺D:ブレークイーブン分析の主要事例 [lvii-lx]
補遺C:主要連邦規制の推定便益と費用 [l-lvi]
補遺B:炭素の社会的費用 [xlvii-xlix]
補遺A:大統領命令 13563、2011年1月18日 [xliii-xlvi]
注 [v-xlii]
索引 [i-iii]








【抜き書き】


題辞から。

 費用と便益の世界(これは悪質な行動や、自由と権利の侵害がどんなにひどいものかを認識するというのも含む)は、結果とは無関係な義務や責務が持つ、傍若無人な理由付けとはかなりちがった意志決定の宇宙となる。
   ―――アマルティア・セン

The Discipline of Cost-Benefit Analysis, in Rationality and Freedom 553, 561 (2002). (「費用便益分析」、『合理性と自由(下)』勁草書房、2014年)

 合理的経済秩序の問題が持つ奇妙な特性は、まさに我々が活用しなければならない状況に関する知識が集約されまとまった形では決して存在せず、むしろ様々な別個の個人が保有する、不完全でしばしば矛盾する知識の、分散したかけらとしてしか存在しないという事実からきている。(中略)あるいは、手短に言うと、それはだれにも完全な形では与えられていない知識を活用するという問題なのだ。
   ―――フリードリッヒ・ハイエク

The Uses of Knowledge in Society, 35 Am. Econ. Rev. 519, 519 (1945). (「社会における知識の利用」『市場・知識・自由』ミネルヴァ書房、1986年)




■「はじめに」(pp. 1-3)から。

 政府は、自分たちの行動が持つ人間的な影響に注目すべきだ。その意志決定が環境保護についてだろうと、職場の安全、喫煙、外国援助、移民、銃規制、肥満、教育、移民、他国への軍事介入についてだろうと、政府はこう考えるべきだ:その行動をしたり、しなかったりすることによる影響はどんなものだろう? 人命が救われるというなら、何人くらい? 人々に負担がかかるなら、どの程度の負担で、それはどんな影響を持つのか? そして、ズバリだれが支援され、だれが被害を受けるだろう? 
 こうした問題に答えるには、政府の視野は狭いものではダメで、広くなければならない。筋の通った比較をして、定量化が困難だったり不可能だったり、比較できなかったりする価値の間での選択を可能にする手法を探すべきだ。そしてその際には、政府は役人たちの知識だけに頼るのではなく、市民たちの知識も活用すべきだ。
 一七七二年にベンジャミン・フランクリンは、むずかしい選択に直面した知り合いに向けて、啓発的な手紙を書いた。

こうしたむずかしい話が持ち上がるとき、それらがむずかしいのは、それを検討しているときに、それを支持するすべての理由と否定するすべての理由とが同時に頭には浮かばないからだ。むしろ、ある理由の集合が頭に浮かぶこともあり、そして別の時には別の集合が頭に浮かんで、最初のものは頭から消えてしまう。だからこそ、かわるがわる各種の判断に傾いてしまうし、その不確実性で私たちは困惑してしまう。これを克服するにあたり、私のやり方は、紙を直線で二つの列に半分づつ分割し、片方には肯定論、もう片方には反対論を書くことだ。そして三、四日にわたる検討期間中、別の見出しの下に、その時々に応じて思いつく、その手法を肯定したり否定したりする議論についてのちょっとした記述を書き留めておく。
 こうしたものをすべて一望に収めたら、私はそのそれぞれの重みを推定しようとする。そして同じ重みだと思われる二つを線の両側に見つけたら、その両方を線で消す。肯定論の一つが、否定論二つと同じくらいの重みと思ったら、その三つを消す。否定論二つが肯定論三つと同じ重みなら、その五つを消す。そしてさらに検討を重ねて数日たって、どちらの側にも重要なものが新しく何も浮かんでこなければ、それで私は決断に到達する。そして理性の重みは代数的な量の精度は持ち得ないにしても、それぞれがこのように別々に検討され、比較され、その全体が目前にあると、もっとよい判断ができると思うし、性急な一歩を踏み出す可能性も低くなる。そして実際、私は、いわば道徳的、分別的な代数におけるこの種の等式から大いに利益を得ているのだ。

 この道徳的、分別的な代数を使い、フランクリンは広い変数を捕らえ、そのどれも見落とされたり無視されたりしないよう務めた。この点で、フランクリンは費用便益分析の初期の実践者だ――これは、各種行動について便益と費用を一覧にして、それを相互に比較し、便益が費用を正当化するような形で先に進む方法を考える手法だ。もちろん、フランクリンは定性的な差も無視しなかった。かれは「代数的な量の精度」での選択はできないと考えた。それでも、関連する配慮のすべてを見つけようとして、競合する変数が相殺しあい比較可能になるかを考える必要があると強調している。


■「はじめに」(pp. 6-7)から。注釈は末尾に。

 何らかの政治的代数というのは魅力的ながら、多くの理性的な人々は費用便益分析に激しい不快感を示す(※3)。その不快感は、学術界でも政府でも見られたし、真面目で正当な問題を提起するものでもある。大気汚染、プライバシー、不注意運転、危険な鉱山、障害や性的嗜好に基づく差別を考えよう。こうした問題に対応した規制の便益をどうやって金銭換算しようか? 車いすの人をトイレにアクセスしやくする経済的価値はいくら? そうした費用が本当にその費用を負担できる人々に課された場合はどうで、便益がそれを本当に必要とする人々、それがなければ生活できないかもしれない人々にまわる場合はどうなのか? 
 公職についていたとき、私は「費用便益分析の人間化」についていろいろ語ってきた。この用語で、私は四つの関連しあう発想を指すつもりだった。一つは、起こりそうな結果を考慮する必要性だ――これは費用便益分析を私が熱心に勧める理由を説明する点となる(※4)。二番目は、費用便益分析が捕らえるのに苦労するものにスポットライトを当てることで、そこには人間の尊厳も含まれる。人間化された費用便益分析は、定量化できないものを無視したりはしないのだ。第三の発想は、本物の人間とホモ・エコノミカス(標準的な経済分析に使われる合理的なアクター)とのちがいに関するものだ。何十年にもわたり、心理学者や行動経済学者たちはこのちがいを強調して、人間というのは標準的な経済学者たちが認めてきたよりも利己性が低く、まちがいを犯しやすいのだと示唆してきた。人間化された費用便益分析は、政治や規制が本物の人間に与える影響を検討する。最後に四つ目の発想としては、国の市民たちが保有する散り散りの情報を集める必要性についてのものだ。規制当局は通常はいろいろ知ってはいるけれど、でも市民たちよりはずっと無知なことが多い。規制を固める前に、世間のコメントを集め、奉仕させてもらっている人々から学ぶことが必要だ。

※3 ことさら示唆的な議論が Matthew D. Adler, Well-Being and Fair Distribution: Beyond Cost-Benefit Analysis, 92-114 (2011)にある。

※4 もちろんこうした帰結に対応する方法はいくつもある。費用便益分析はそうした手法の一つでしかない。上記論文を参照。私は現時点では、費用便益分析が、比較的実施が容易という利点を持つと思うけれど、各種の代替案や、帰結主義の内部から出てくる批判は慎重に検討する余地がある。



■二重過程モデルの話(pp. 241-243)から。

    どうすればいいのか?

 低確率リスクの議論をすると、その議論の大半がそうしたリスクを心配する必要はないとなだめるものであった場合でも、社会的懸念を高める傾向があると述べた。一部の場合、低確率リスクへの恐怖を減らす最も有効な方法は、別の話題に話をそらせて、ほとぼりが冷めるのを待つことだ。もちろんメディアの注目でこの手口が効かないこともある。
 規制政策について言えば、制度的な安全策こそが確率無視の有害な結果から社会を守る最高の方法かもしれない。費用便益分析を全般的に要求することで、客観的事実に基づかない規制に対するチェックがかけられるはずだ――そして社会の求めそうにない予防措置に対する抑えにもなる。政府として過大な反応を避けたければ、分析要件と制度的な抑えが出発点となる(第1章と2章を参照)。こうした要件や抑えは、システム1の活動に対するシステム2の抑えのようなものと見ることも十分にできる。システム1とシステム2の関係を示す、驚くべき(そして深遠な)実証を考えよう。行動経済学者が突き止めた最も重要な認知錯誤の一部は、人々が外国語を使うと消えてしまうのだ。母語でない言語で問題を解決するように言われると、人々がへまをする可能性は下がる。慣れない言語だと、正解を出す確率が高まる。どうしてそんなことになるのだろうか? 
 答はストレートなものだ。人々が母語を使っていると、素早く楽に考えられるから、システム1が優位に立つ。外国語を使っていると、システム1がいささか圧倒されてしまい、システム2が大幅に後押しされることになる。十分に馴染みのない 言語を使っていると、即座の直感的な反応が遅くなり、計算をして熟慮する可能性が高まる――それが正解につながる。外国語だと、人は直感から距離を置くことになり、その距離がかれらの立場を改善する。外国語をしゃべるときに確率無視がなくなるという証拠はない。でもそういう結果が出ても意外ではないだろう。
 ここには、費用便益の慎重な検討を求める政策や規制へのアプローチの重要性について、大きな教訓がある。こうしたアプローチは(厳密な意味では)外国語を使わない。でも人々の当初の判断からある程度の距離を確保するものとなり、システム1にともなうまちがいを制約する。つまり見たところ、結果や確率を計測する分析的な抑えは、安全策として不可欠だ。この文脈での定量化には深刻な課題があるのは見てきた(第3章参照)。それでも、それこそが出発点なのだ。

『モラルの起源――実験社会科学からの問い』(亀田達也 岩波新書 2017)

著者:亀田 達也[かめだ・たつや](1960-) 意思決定科学、社会心理学、行動生態学
NDC:301.6 社会科学方法論
NDC:361.4 社会心理学


モラルの起源 - 岩波書店


【目次】
はじめに [i-x]
  人文社会科学の危機
  実験社会科学とは?
  『猿の惑星』からの問い
  ヒトはどこまでサルなのか
  ヒトの心、人の社会
目次 [xi-xiii]


第1章 「適応」する心 001
1. 生き残りのためのシステムとしてのヒト 003
  自然淘汰と適応
  歴史・文化という時間軸
  適応的視点という発見の道具
  生き残りのシステムとしての人間
2. 適応環境としての群れ 013
  群れ生活と脳の進化
  マキャヴェリ的知性
  ヒトと集団


第2章 昆虫の社会性、ヒトの社会性 021
1. 群れを優先させるハチ 023
  ヒトと昆虫の集団の違い
  昆虫の「集団意思決定」
  ミツバチの引越し
  「集合知」を生むためには
  ミツバチは自分の目で評価する
2. 個人を優先させるヒト 032
  ヒトは集合知を生み出せるか
  インターネット実験の結果は……
  ハチとヒトではなにが違うのか
  血縁社会と非血縁社会の判断
  空気を読むヒト、読まないハチ


第3章 「利他性」を支える仕組み 045
1. 二者間の互恵的利他行動 047
  ホッブズの考える自然状態
  動物たちの「自然状態」は闘争状態なのか
  持ちつ持たれつの関係
  互恵的利他主義とは
  平和の基礎としての互恵的利他主義
2. 社会的ジレンマと規範・罰 055
  共有地の悲劇
  社会的ジレンマの構造
  「オレもやっちゃえ」では解決しない
  社会規範と罰
  規範を守る主体は社会ではない
  高次のジレンマ問題
  「公共財ゲーム」実験
  罰は「はったり」ではない
  見返りがなくても罰したい
  規範を維持する「他人の目」
  「目の威力」の意味するもの
3. 情と利他性 076
  ズルを許せない感情
  罰に実効性をもたせるもの
  直感の重要性
  助け合いを支えるもの
  ゴシップと評判
  結局は人情家が得をする?


第4章 「共感」する心 087
1. 動物の共感、ヒトの共感 089
  さまざまな共感
  ついマネしてしまう身体
  他者の心を理解するためのマネ
  「痛い!」も伝染する
  親しい人ほど情動がうつる
  種を超えて「仲間」とのきずなを作るホルモン
  思いやり行動も哺乳類に広く存在する
  オキシトシンが促進する利他行動
2. 内輪を超えるクールな共感 102
  情動的共感の限界
  詐欺師の「共感」
  認知的共感を支える脳の回路
  体の痛みと社会的痛み
  自他分離的な情動変化
  内集団を超えるクールな共感の可能性


第5章 「正義」と「モラル」と私たち 115
1. セーギの味方の二つの疑問 117

2. いかに分けるか――分配の正義 120
  「功利主義」という考え方
  最後通告ゲーム
  人間はホモエコノミクスらしく振る舞うか
  平等な分配は普遍的?
  分配の規範は文化によって異なる
  道徳規範というシステム
  進化ゲームでみる倫理の衝突
  効用関数というモデル
  格差を嫌うヒトの脳
3. 社会の基本設計をめぐって――ロールズの正義論 141
  どちらの所得政策が優れているか
  ロールズの思考実験
  「最小を最大に」で合意する?
  無知のヴェールのかぶせ方
  分配とギャンブルの関係
  分配するなら? ギャンブルするなら?
  分配とギャンブルの選択は連動する
  みんな「最悪」が気になるという共通性
4. 正義は「国境」を越えるか 159
  「私 vs. 私たち」の問題
  自動モードで調整される正義
  「私たち vs. 彼ら」と功利主義
  共通基盤を探り続ける努力


おわりに(二〇一七年元旦 亀田達也) [169-172]
主要参考文献 [1-2]






【関連記事】
『複雑さに挑む社会心理学――適応エージェントとしての人間[改訂版]』(亀田達也, 村田光二 有斐閣アルマ 2010//2000)

『貧困を救えない国 日本』(阿部彩, 鈴木大介 PHP新書 2018)

著者:阿部 彩[あべ・あや](1964-) 社会政策、貧困・格差の研究。
著者:鈴木 大介[すずき・だいすけ](1973-) ライター。
編集協力:オバタ カズユキ(1964-) ライター。
NDC:368.2 社会病理 >> 貧困


貧困を救えない国 日本 | 阿部彩著 鈴木大介著 | 書籍 | PHP研究所


【目次】
まえがき [003-005]
目次 [006-014]


第一章 間違いだらけの「日本の貧困」 015
日本に貧困はないと思っている人たち
なぜ貧困層に厳しい意見が多いのか
「貧」と「困」を分けて考えよう
日本には本当に「絶対的貧困」の家庭は存在しないのか
貧困家庭は、ひとり親よりふたり親世帯の割合のほうが高い
三世代世帯も安泰ではない
男性高齢者の貧困率は、むしろ改善している
女性の貧困問題が「若い女性の貧困問題」にすり替えられた
『最貧困女子』刊行後の落胆
女性の貧困問題を子育ての問題にすり替えるな


第ニ章 なぜ貧困を放置してはいけないのか? 025
「旅をする人類」仮説
人材投資論
裕福な高齢者をどう説得するか
社会悪化論
階級社会化仮説
男性というだけで大変なアドバンテージがある――生理の問題
ブラック企業が働けない人を量産している
かつては子どもより高齢者の貧困率のほうが高かった
昔は子どもが親に仕送りをしていたことが知られていない
政治家が動いた
おばちゃんのパワーと限界
子ども食堂もいいが、中学校の給食も必要


第三章 誰が貧困を作っているのか? 089
新築の家、結婚式、教育産業――「強制出費」の悪者たち
奨学金制度と進路指導の先生
幼稚園業界と政界
発達支援やコミュニケーション能力向上プログラムが必要
他人と会話するのが苦手な子が労働市場から弾き出されていいのか
劣悪な労働条件でも働けるようなマインドづくり
自分に合った仕事とは
保育士は誰でもできる仕事だと思われている
官僚に責任転嫁したくない
かつて開拓や炭鉱に動員された貧困層の子孫が、やはり貧困層となっている
どうにもならない部分はある
町内会と地方議員の権力
地域ベースでは、コミュ障の人は救われない
男性のいない世帯が支払う「出不足料」


第四章 メディアと貧困 137
ウェブメディアはなぜ貧困ネタを好んで掲載するのか
新聞記者の限界
テレビによるコンテンツ消費
大多数の読者、視聴者の「腑に落ちる感」を着地点にしている
「ぱっと冷蔵庫を開けたときにモノが入っていたら批判が起こる」
昔から社会的弱者は、笑いのコンテンツの中に入っていた


第五章 精神疾患が生み出す貧困 157
なぜ中高年女性の貧困について書かないのか
離婚女性はDVで精神を破壊されている
貧困問題と精神科医療の未発達には深い関連性がある
休息が必要不可欠――認知行動療法というアプローチ
スキーマ療法の可能性
パチンコとスマホ――規制の議論
報酬感情を得るための、段階を追った就業支援が必要
「何をすれば嬉しいのかわからない」のが貧困


第六章 地方の貧困と、政治を動かす力 185
独居老人と子どもの貧困 
ソフトヤンキー
ソフトヤンキーは仲間に入れない貧困者に対する差別意識が強い
親の面倒もよく見る。東京に出たらアウト
東京都は貧困を語らない
保守化する若者たち――インターネットによる先鋭化
震災で、左翼がオカルトになってしまった
政治家も官僚も、世論を恐れている
芸能人生活保護受給騒動と年越し派遣村


第七章 財源をどこに求めるか 216
住宅手当、児童手当が少なすぎる
日本人は税金をきちんと払ったことがない
六割の人が「生活が苦しい」と言っている
「国の無駄遣い」という批判
国民が「社会保障は充実していない」と考える理由
生活保護も、無駄が出て当然
年金制度のマクロ経済スライド方式は画期的
財源は消費税――高齢者の納税額が少なすぎる
国民年金支給額を減らしていいのか


第八章 支援者の問題 249
子どもと児童養護施設児童相談所の距離感
専門職ではない、人数が足りない、医療との連携不足
ケースワーカーと関わるほど精神的にきつくなる
貧困対策は雇用対策でしかなかった
土木が貧困対策になりにくい時代
ごちゃまぜな生活保護
児童専門員の設置
国が行おうとしているのは学習支援
生活保護世帯の子どもたちに対する学習支援
高校生になっても行ける居場所が必要
アメリカでは高所得者の子どもがアルバイトをしている


第九章 貧困対策を徹底的に考える 287
「タバコ規制」と「肺がん治療」の違い
貧困層への学習支援とは居場所づくりである
貧困対策の対象をどこに置くか
「九%の層」には何が必要か
日本の公営住宅――辺鄙なところに造って現在は孤立化
マイホーム願望
精神科を生活保護の窓口にすべき――生活保護の捕捉率を上げる
学校での逃げ場所が必要
「生活困窮者自立支援法」と「社協
社協で働いている人たち
マッチングサービスが打開策になる


対談を終えて [330-332]




【図一覧】
図 世帯所得の分布(2017) 019
図 相対的貧困率の推移:1985-2015 031
図 子ども(20歳未満)の相対的貧困率の推移:世帯タイプ別 037
図 相対的貧困の子どもの世帯構成(平成28年度) 037
図 子どもの年齢層別の相対的貧困率(2015) 041
図 男性の年齢層別の相対的貧困率の推移(1985,2012,2015) 045
図 女性の年齢層別の相対的貧困率の推移(1985,2012,2015) 045
図 勤労世代(20-64歳)の女性の相対的貧困率(1985,2012,2015) 049
図 勤労世代(20-64歳)の男性の相対的貧困率(1985,2012,2015) 049
図 中流社会から不安社会へ:生活意識の推移 227
図 親の年収と小学6年生の学力の関係(2009) 291




【抜き書き】

pp. 30-35 「貧困線」の話。

阿部  日本人の貧困イメージは間違いだらけですね。いくつかデータを持ってきたので、ちょっと説明させてもらっていいですか。

鈴木  はい。ファクトに基づいて、貧困の実態をどんどん可視化していきましょう。

阿部  まず、日本の相対的貧困率ですね。最新の厚労省データですと、2015年のものしかないのですが、社会全体の相対的貧困率が15.7%[※図 相対的貧困率の推移:1985〜2015]で、十七歳以下の子どもが13.9%です。この値は、OECD(経済協力開発機構)諸国の中では中から高。35カ国中子どもでは23位ですが、社会全体では28位です。なお2015年の場合、「相対的貧困率」は、手取りの年間所得がひとり暮らし世帯で122万円以下、4人世帯で244万円以下の世帯を指します。

鈴木  衣食住や衛生において最低限の水準を満たしていない生活状態にある貧困レベルを絶対的貧困と言いますよね。わかりやすく言い換えると、そのまま放っておいたら餓死してしまいますというレベルの貧困。この対談の冒頭で、自民党幹事長が「(日本には)食べるのに困るような家はないんですよ。実際は」としゃべっていたと話しましたが、その「食べるのに困るような家」というのは、絶対的貧困をイメージしているんだと思います。実際、日本の絶対的貧困についてはどんな調査がされているんですか? 

阿部  調査はないんですよ。それは、絶対的貧困は定義ができないから。ただ、絶対的貧困は問題で、相対的貧困が問題じゃない、と二つを別々に考えること自体が現代日本においては当てはまらないと私は考えています。実は、二つは同じなんですよ。レベルの違いだけです。

鈴木  大変同感ですね。自民党の幹事長だけでなく、多くの人は「貧困貧困と騒いでいるけど、この国で餓死者がいるわけでもないのに大げさな」と感じている気がするんです。でもね、相対的貧困率が13.9%もあれば、絶対的貧困も相当な規模であるというのが僕の持論なんですよ。何でかというと、親が相対的貧困レベルの所得の世帯には、多くの場合「時間的貧困」も併発しています。つまりたくさん働いて、家にいる時間が確保できない。心理的余裕もない状態で、子どもの面倒をまともにみている時間も余裕もなく、ネグレクトが発生することが大いに考えられますよね。
  結果、例えば、子どもに現金だけ渡して数日不在だとか、買い置きの食材を食べておきなさいと言って帰宅しないとか、そういうケースもあります。けれども親不在の間にお金や食材の管理ができる子ばかりじゃないから、親が帰らない間に何も手元になくなってしまった子どもは、当然お腹が減ります。たとえ一日でも一晩でも、飢えは辛い経験です。この瞬間に、確実に日本に飢餓が存在しているわけです。
  僕の取材はそうした生い立ちがあってその後に社会的に逸脱した子をターゲットにしていましたが、取材対象者の共通点は子ども時代に一晩でも「飢えた」経験をもっていることでした。典型的なケースはお腹が減ってどうしようもなくて、コンビニのおにぎりやパンを万引きした経験。もちろん実際食品を盗むことを覚えると他のものも盗むし、同じような環境にある子たちで互助的な非行グループを形成するし、グループになれば恐喝したりで、とんとん「良い子」じゃいられなくなってしまう。でも問題なのはその子たちの逸脱した行動じゃなくて、その子らががそうなるまでの背景なんですよ。そこには確実に、絶対的貧困状態が相対的貧困家庭の子の多くは一晩でも絶対的貧困状態を経験している可能性がある。これは声を大にして言いたい。


 〔……〕


阿部  実は絶対的貧困相対的貧困って、そんなに違う概念じゃないんです。例えば、餓死は確かに絶対的貧困かもしれませんが、多くの、いわゆる「絶対的貧困」論者だって、「餓死しなければOK」と思っているわけじゃないでしょう。「最低限の食事」くらいに思っていると思います。
  でも、その「最低限の食事」って何ですか? ゴミを漁って、腐りかけた残り物を食べることですか? 賞味期限が切れたコンビニの廃棄弁当をもらってくることですか? 相対的貧困に対して厳しい意見を言う人だって、さすがに、日本の子どもが腐ったお弁当食べなくてはいけない状況だったら、「何とかしろ」と言うのではないですか? 「最低限の食事」って、せめて、お米のごはんとか、毎日じゃないにせよ、二日に一回は肉か魚が主菜で、お味噌汁がついて……って思い浮かばないですか? 実際に、日本全国の小学校でそのような食事が「正しい食」だと食育で教えています。私たちは、明日死刑を迎える人にもそのような食事を出しますよね。でも、なんで、そのような食事が「最低限」と考えるかというと、それは、私たちが「通常の日本の食卓」をベースにものを考えているからです。
  これっていうのは、相対的貧困概念なんです。「普通に比べて……」というのは、絶対的な概念ではないんです。私は、「絶対的貧困だけが問題で、相対的貧困は問題じゃない」という人たちは、何が絶対的で、何が相対的なのかはっきりと意識しないままものを言っていると思います。
  実際に、「相対的貧困」に含まれる子どもたちには、野菜を摂れていない子どもや、毎日、ごはんと納豆しか食べられない子がいます。お母さんが食べ盛りの中学生に「おかわりしていいよ」って言えないお宅があります。栄養学の先生と一緒に、子どもが何を食べているのか綿密に調べたら、タンパク質やビタミン、鉄、亜鉛などのミネラル、それから総エネルギー量さえも、貧困の子とそうでない子には差がありました。それでも、「絶対的貧困論者」の方々は、相対的貧困を問題じゃないと言うのでしょうか? 

『不死身の特攻兵――軍神はなぜ上官に反抗したか』(鴻上尚史 講談社現代新書 2017)

著者:鴻上 尚史[こうかみ・しょうじ] (1958-) 劇作家。
NDC:210.75 日本史(太平洋戦争 1941-1945)
NDC:916 記録.手記.ルポルタージュ


『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』(鴻上 尚史):講談社現代新書|講談社BOOK倶楽部


【目次】
はじめに [003-004]
目次 [005-006]


第1章 帰ってきた特攻兵 007
生き残った特攻隊員
振武寮という地獄
第一回の特攻隊
旅の始まり
テレビ取材
佐々木さんに会いたい
札幌の病院で


第2章 戦争のリアル 023
『陸軍特別攻撃隊』から読み解く
生い立ち
飛行機乗りへの道程
岩本益臣隊長
3本の槍
艦船を沈める難しさ
妻・和子との別れ
万朶隊の結成
特殊任務
特攻は努力と技術の否定か
死への飛行
巧妙な仕掛け
父の教え
神風特別攻撃隊の「成功」
フィリピンへ
儀式好きの冨永司令官
岩本隊長の作戦
理不尽なマニラ行き
残された者
出撃の夜
レイテ湾の戦い
突入
割り増しされる「戦果」
消された存在
2回目の出撃
急襲
軍神の家
一機だけで
5回目の出撃
6回目の出撃
嘘の戦死報告
不時着
「臆病者」
適材適所とは真逆の作戦
8回目の出撃
9回目
マラリアの苦しみ
レイテ戦の敗北
処刑飛行
無能なリーダー
アメリカ軍の上陸が迫る中で
司令官の逃亡
“軍神”は死なねばならない
全軍特攻
敗戦へ
殺害命令
帰国の途
雪の北海道
戦後を生きる


第3章 2015年のインタビュー 169
2015年10月22日
特攻と聞いて
死なない強さ
2回目のインタビュー
生き残った者として
3回目のインタビュー
4回目のインタビュー
佐々木さんを支えたもの


第4章 特攻の実像 209
特攻隊とはなんだったのか
『神風特別攻撃隊』の欺瞞
「命令した側」の物語
集められた遺書
守られたエリート
洗脳
すり替えと責任逃れ
「熱望する 希望する 希望せず」
偽善の姿
未熟で若いパイロット
特攻の有効性
嘘で塗り固めて
本当の命中率
現実を見る能力
特攻を続けた本当の理由
天皇と特攻
国民の熱狂
売れるから書く
精神主義の末路
リーダーとしての器
特攻を拒否した美濃部少佐
非常事態はしょうがない?
日本人の性質と特攻
思考の放棄と「集団我」
特攻前夜の暗い瞳
現代の「所与性」の形
当事者ではない人間の怖さ


おわりに(鴻上尚史) [290-292]





【抜き書き】
・責任の所在

上官が止めても、「私を」「私を」と志願が殺到したのなら、上官には「特攻の責任」は生まれません。が、命令ならば、戦後、おめおめと生き延びていたことを責められてしまいます。
 戦後自刃しなかった司令官達は、ほとんどが「すべての特攻は志願だった」と証言します。


・精神論。

「精神」で撃ち落とすと最高責任者が言ってしまったら、撃ち落とせない時その理由は、高射砲の性能の限界でも、アメリカ機の高性能でもなく、「精神」になってしまいます。「精神」さえあれば、という論法が出てくるのです。

陸軍の爆弾では、体当たりどころか、通常の爆撃でも、そして跳飛爆撃でも艦船には効果がなかったのだ。
 鉾田飛行師団の研究部の岩本大尉と福島大尉は、効果的な爆弾、つまり海軍のような徹甲爆弾を作るようにと再三、陸軍の航空本部と三航研(第三陸軍航空技術研究所)に求め続けた。けれど、三航研は効果的な爆弾を作る代わりに体当たり攻撃を主張し始めた。

【メモランダム】
・本書の前提にある本。2018〜2019年に復刊。
『陸軍特別攻撃隊』(高木俊朗 文藝春秋 1974年)

『自閉症遺伝子――見つからない遺伝子をめぐって』(Bertrand Jordan[著] 林昌宏[訳] 中央公論新社 2013//2012)

原題:Autisme,le gène introuvable: De la science au busines, 2012
著者:Bertrand Jordan (1939-) 分子生物学
訳者:林 昌宏(1965-) 翻訳家。
解説:坪子 理美 行動遺伝学。
装丁:細野 綾子
NDC:493.76 心因精神病.機能的精神病




【目次】
目次 [001-003]
凡例 [004]

まえがき [005-008]


第1章 驚きの記事 009
  自閉症の臨床的な意味
  自閉症は疫病か
  自閉症精神分析、心理学
  遺伝要因説を裏づける強力な証拠
  遺伝学によって病気を理解し、治療法が見つかる? 


第2章 遺伝学と精神医学の腐れ縁 019
  ヒト遺伝学の大勝利
  ハンチントン病の例
  精神病に殺到する
  派手な失敗
  位置を突き止めることの難しさ
  そうはいっても、研究は必要だ……


第3章 証拠に基づいて判断しよう! 033
  アンテグラジャン社のインターネットサイトを閲覧
  ホーム・テスト……あるいはホーム・ブリュー(自家醸造) ・テスト
  文章の解釈
  確言できるのか
  「偽陽性」という危険性
  メディア、科学論文、企業の広報との温度差


第4章 自閉症の概観――症状と原因 045
  自閉症の兆候、あるいは自閉症という病気群の兆候……
  脳機能イメージングの利用
  機能的磁気共鳴画像(f M R I)という革命
  自閉症の根源を探る
  「冷蔵庫マザー」と母子関係の障害――「精神分析万能」時代
  予防接種ワクチン、水銀、グルテン――環境に原因を求める
  予防接種ワクチンという「陰謀」
  グルテンカゼイン――脳に対して有害か?
  遺伝子の現実――きわめて強い影響をもたらすが、見つからない


第5章 自閉症を取り巻く環境――治療法 067
  精神分析的なアプローチ
  パッキングは、フランス特有の野蛮な行為か
  自閉症と飲み薬
  食餌療法という幻想
  行動療法――大きな効果は得られないが、現実的な治療法
  奇跡は起こらないが……療育は効果的である


第6章 アンテグラジャン社の反撃 081
  厳しい批判に対して、法的措置に訴える
  きわめて深刻な争点
  がんとタバコ産業――きわめて参考になる例
  あまり反響がなかったメディア・キャンペーン
  証人としての召喚状と口頭弁論の報告書
  厳しい判決


第7章 思いがけない招待 095
  ジェノポールという恵はれた環境
  医療産業
  ベンチャー企業の混沌とした経営
  アンテグラジャン社へ
  アンテグラジャン社と「自前」の技術
  開発された遺伝子検査の目的と限界
  疑念は晴れず


第8章 ゲノミクスの第二の息吹 111
  二つの道具
  ゲノムワイド関連解析(GWAS)、「全ゲノム」関連研究の興隆
  失われた遺伝率を求めて
  塩基配列に助けを求めるか
  すべてを単純化させる、エピジェネティクス
  要するに


第9章 自閉症の新たな遺伝子 123
  二〇〇五年に戻る
  ゲノムスキャン――つながりは確認されたが、影響は弱い
  「暗示的な」候補遺伝子
  コピー数多型(CNV)の登場
  自閉症には、さまざまな種類があるのか
  遺伝学は、役に立つのか
  アンテグラジャン社の貢献
  しばしば脆弱な一連の遺伝子探し
  有力な候補遺伝子ではあるが、遺伝学では、きちんと証明されない
  アンテグラジャン社とその他の企業


第10章 自閉症市場 143
  差し迫った要求
  年間、どのくらいの検査回数があるのか
  保護される特許権
  効果的な商品化を目指して
  アンテグラジャン社の科学的な貢献
  内容がいとも簡単に変わる発表
  アンテグラジャン社とトランスジェノミック社
  さらに調べると
  相変わらず冴えない検査の性能
  駄目な検査の良い利用法


第11章 アンテグラジャン社を再訪 167
  殺人犯は必ず犯行現場に戻る
  まず、イェルク・ハーガー
  自閉症など存在しない、中間表現型を主張
  倫理面およびメディアの観点
  ついにアンテグラジャン社を再訪
  「非はあるが、責任はない」
  自閉症のリスクに関する検査の目的と有用性
  自信たっぷりの科学者たち
  帰路


第12章 無駄な進歩か 185
  幻想に満ちた医学の発展
  検査も同じ
  オンコタイブの歴史
  医療費が膨張する理由
  いかにして理性を保つのか


13章 自閉症は遺伝学で解決できるか 193
  進化し続けるテクノロジー、抵抗する生体
  メンデル型疾患の勝利の後、複雑な病気という迷宮に至る
  自閉症は存在しないのか???
  では、研究は何の役に立つのか
  自閉症の子どもを抱える親へのメッセージ
  謙虚になる必要性 


註 [205-210]
詳細目次 [211-213]
解説(二〇一三年七月 坪子理美) [214-219]
訳者あとがき(二〇一三年八月 林昌宏) [220-221]
専門用語解説 [222-224]
参考資料――参考文献とウェブサイト [225-234]