contents memorandum はてな

目次とメモを置いとく場

『食物倫理入門――食べることの倫理学』(Ronald L. Sandler[著] 馬渕浩二[訳] ナカニシヤ出版 2019//2015)

原題:Food Ethics: The Basics (Oxford: Routledge)
著者:Ronald L. Sandler 倫理学
訳者:馬渕 浩二[まぶち・こうじ] 倫理学、社会哲学。
NDC:611.3 農業経済


食物倫理(フード・エシックス)入門 - 株式会社ナカニシヤ出版


【目次】
献辞 [i]
凡例 [ii]
謝辞 [iii-iv]
目次 [v-viii]


序章 001
1 なぜフード・エシックスか 002

2 構成とアプローチ 003


第1章 フードシステム 005
1 グローバル・フードシステムとは何か 006

2 グローバル・フードシステムを擁護する論証 008
  世界を養うことにもとづく論証
  世界を養うことにもとづく論証に対する応答
    産業型農業の収穫量のほうが本当に多いのだろうか
    何がより高い収穫量に数え入れられるのか
    収穫量を最大化することが本当の課題なのか
  選好充足にもとづく論証
  選好充足にもとづく論証に対する応答
    選好はすべて平等なのだろうか
    誰の選好が充足されるのか
    選好がすべてなのか
3 グローバル・フードシステムに関する懸念 025
  食料の自律と食料の主権
  共同の実践と文化的多様性
  労働者の権利と良好状態
  生態学的影響
  動物福祉
  分配的正義
  消費者の健康
  隠されたプロセス
  美学
4 オルタナティブ・フード運動 039
  オーガニックフード
  ローカルフード
  スローフード
  フード・ジャスティ
5 オルタナティブ・フード運動に関する懸念 044
  ローカルの限界
  オーガニックの限界
  スローフードの限界
6 フードシステムに関する三つの問い 052
7 結論 054
◇ 読書案内 054


第2章 食料安全保障と援助の倫理学 059
1 食料不安の原因 061
  人口
  資産基盤
  農業生産性
  所得の不平等と消費パターン
  資源の利用
  資源の分配と人口の分布
  社会制度と政治制度
2 グローバルな食料不安に取り組む 067
  人口を減らす
  生産性を向上させる
  利用パターンを変更する
  浪費を減らす
  貧困を減らす、そして消費分布を変える
3 国家の義務 075
  援助を擁護する倫理的根拠
  国家的援助を擁護する根拠に対する反対と応答
4 個人の義務 085
  個人の責任を擁護する中核的論証
  個人による援助を擁護する主張に対する反論と応答
  どのくらい与えるのか
5 結論 094
◇ 読書案内 095


第3章 私たちは動物を食べるべきか 097
1 動物福祉にもとづく論証 098
2 動物福祉にもとづく論証に対する反論 103
  限定された範囲
    限定された範囲への応答
  肉食は単なる選好ではない
    肉食は単なる選好ではない、に対する応答
  動物の苦しみは道徳的に重要ではない
    動物の苦しみは道徳的に重要ではない、に対する応答
  瑣末性への訴え
    瑣末性への訴えに対する応答
3 動物福祉にもとづく論証はどこまで拡大するか 112
4 生態学的影響にもとづく論証 114
5 生態学的影響にもとづく論証に対する反論 117
6 分配的正義にもとづく論証 119
7 健康にもとづく論証 121
8 肉の性的政治にもとづく論証 122
9 肉を食べる(そして狩猟をする)義務はあるか 127
10 狩猟の倫理的次元 129
11 (生存のためではない)狩猟に反対する中核的論証 133
12 娯楽のための食料狩猟を擁護する 135
13 商業型漁業 140
  商業型漁業に関する倫理的な懸念
  共有地の悲劇
14 結論 145
◇ 読書案内 146


第4章 生物工学 149
1 生物工学――背景と文脈 150
2 遺伝子組み換え作物 153
  遺伝子組み換え作物を擁護する論証
  世界を養う論証に対する応答―― GM作物は食料安全保障を損なう
  技術革新推定に対する応答――予防原則
  実質的同等性にもとづく論証への応答――生産物対プロセス
  漸進的変化にもとづく論証への応答――程度における差異と種類における差異
  GM作物に対する外在的反論
  GM作物に対する内在的反論
  ラベル表示
  遺伝子組み換え動物
  合成肉
3 結論 188
◇ 読書案内 188


第5章 食べ物と健康 191
1 食品に起因するリスク 192
  リスクの規範的次元
  安全性を定義する
  健康とラベル表示
  不確実性に対処する
2 肥満と公衆衛生 202
  健康な食品の調達
  責任と選択
  規制と公衆衛生
3 栄養主義・栄養補助食品・ダイエット 213
4 摂食障害 216
5 結論 218
◇ 読書案内 218


第6章 食べ物と文化 221
1 文化を尊重する 223
  差異に対する鈍感さ
  不正義と搾取
  同質化と喪失
2 問題のある文化的実践 227
3 倫理的相対主義 230
4 文化の規範性 238
5 食通文化 241
6 結論 244
◇ 読書案内 244


訳注 [246-254]
訳者あとがき(訳者) [255-259]
参考文献 [260-270]
索引 [271-277]

『大不平等――エレファントカーブが予測する未来』(Branko Milanović[著] 立木勝[訳] みすず書房 2017//2016)

原題:Global inequality: A New Approach for the Age of Globalization
著者:Branko Milanović (1953ー) 所得分布、不平等の計測
訳者:立木 勝[たちき・まさる] 元・教員、翻訳家。


大不平等 | みすず書房


【目次】
目次 [i-v]
謝辞 [vii-ix]


はじめに 001


1 グローバル中間層の台頭とグローバル超富裕層 011
グローバリゼーションで誰が得をしたのか 
グローバルな所得分布に沿って見た所得の絶対増加 
金融危機の影響 
世界の上位1パーセント層
真のグローバル超富裕層――億万長者たち


2 各国内の不平等――クズネッツ波形を導入して不平等の長期的な流れを説明する 049
クズネッツ仮説への不満の原点 
クズネッツ波形――定義 
平均所得が停滞している社会の不平等 
  前工業化社会で不平等を縮小するものは何か
  前工業化社会で不平等を拡大するものは何か
平均所得が安定して増加する社会の不平等 
クズネッツ波形(合衆国とイギリス、スペインとイタリア、ドイツとオランダ、ブラジルとチリ、日本)
  クズネッツ波形の論理
クズネッツ波形の第一の波を下降させたものは何だったのか 
  各国内の不平等と第一次世界大戦
  大平準化時代の悪性の力と良性の力
クズネッツ波形の第二の波を上昇させているものは何か。この波が下降するとすれば、それは何によるのか 
  上昇部分をどう説明するか
  不平等の拡大を相殺する力


3 各国間の不平等――カール・マルクスからフランツ・ファノン、そして再びマルクスへ? 119
グローバルな不平等の水準と構成の変化 
  1820年から2011年までのグローバルな不平等
  グローバルな不平等における「場所」vs.「階級」
市民権プレミアム 
  市民権プレミアムと移民
  コースの定理とグローバリゼーション時代の法の支配
  グローバルな機会の不平等
移民と壁 
移民と国境開放への抵抗感をどう調整するか 


4 今世紀および来世紀のグローバルな不平等 157
この章を読むに当たっての注意  
主要な力の概説――経済の収束とクズネッツ波形 
所得の収束――貧しい国々は豊かな国々より速く成長していくのか 
収束はアジアの現象なのか 
方程式のもう一辺――中国と合衆国の不平等 
  クズネッツ氏、北京へ行く?
  合衆国――不平等の「パーフェクト・ストーム
不平等という禍――金権政治ポピュリズム 
  中間層の没落
  金権政治
  ポピュリズムと移民排斥主義


5 次はどうなるのか――将来の所得不平等とグローバリゼーションについての10の短い考察 215
今世紀のグローバルな不平等を形成するのはどのような力か 
豊かな国々の中間層はどうなるか
どうすれば豊かな福祉国家の不平等は縮小するのか 
これからも勝者総取りがルールなのか
水平的不平等だけに焦点を当てるのはなぜ間違いなのか 
労働はこれからもほかとは違う生産要素であり続けるのか
それでも経済成長は大切か
不平等への関心は経済学から消え去るのか
なぜ方法論的ナショナリズムは意味を失いつつあるのか
グローバリゼーションが続くことで不平等は消滅するか


参考文献 [28-41]
原注 [7-27]
索引 [1-6]


コラム 1-1 グローバルな所得分布のデータはどこから得るのか 020
コラム 1-2 所得の不平等の絶対尺度と相対尺度 030
コラム 1-3 10億の大きさを実感するには 048
コラム 2-1 所得と不平等の水準が同時に低下――崩壊期のローマ帝国 068
コラム 2-2 もうひとつの大平準化――社会主義での不平等 102
コラム 3-1 グローバルな不平等を「場所」と「階級」に分解する 132
コラム 4-1 グローバルな不平等の予想 177

『ことばのインテリジェンス――トリックとレトリック』(沖田知子,堀田知子,稲木昭子 開拓社 2018)

著者:沖田 知子[おきた・ともこ](1951-) 英語学。意味論、語用論、文体論。大阪大学名誉教授
著者:堀田 知子[ほった・ともこ](1949-) 英語学。文体論、語用論、物語論龍谷大学教授
著者:稲木 昭子[いなき・あきこ](1944-) 英語学。追手門学院大学名誉教授
シリーズ:開拓社叢書;30
件名:語用論
NDC:801 言語学
NDC:801.6 言語学 >> 文章論.文体論.修辞学


ことばのインテリジェンス 株式会社開拓社



【目次】
はしがき(2017年12月23日 沖田知子 堀田知子 稲木昭子) [iii-v] 
目次 [vii-xi]


第 1 章 ことばをデザインする 001
1.1. ことばのデザイン――意味の幅 001
  1.1.1. ことばを選ぶ 1
  1.1.2. ことばを使う 3
  1.1.3. ことばで遊ぶ 5
  1.1.4. 織り込む評価 6
  1.1.5. 有標と無標 7
  1.1.6. 盛り込む心 9
  1.1.7. ことばのデザインを意識する 10
1.2. 構図のデザイン――視点と発想 011
  1.2.1. 視点と発想法 11
  1.2.2. 比較の構図 12
  1.2.3. 構図を補う 13
  1.2.4. 構図の逆転 14
  1.2.5. 視線の構図 15
  1.2.6. 対照の構図 17
  1.2.7. 構図のデザインを意識する 20
1.3. 表現のデザイン――心の綾 021
  1.3.1. 代用 21
  1.3.2. 反復・対比 24
  1.3.3. 心の綾 26
  1.3.4. 表現のデザインを意識する 29
1.4. ことば遣いの意識――情報の修整 030
  1.4.1. メタ語用論的意識の指標 30
  1.4.2. ぼかしの指標 31
  1.4.3. 社会言説 34
  1.4.4. 断定・強調・矮小化の指標 35
  1.4.5. 情報の修整を意識する 37
1.5. 裏を読む――論理と実際 038
  1.5.1. ブラックスワン 38 
  1.5.2. アルゴリズムヒューリスティックス 39
  1.5.3. 尺度をめぐる論理と推論 40
  1.5.4. あるのかないのか 42
  1.5.5. 論理と実際 44
  1.5.6. 認知バイアスを意識する 45


第 2 章 誰が語る――物語の場合 047
2.1. 語りと語り手 047
  2.1.1. 物語 48
  2.1.2. 三人称の語り 51
  2.1.3. 一人称の語り 52
  2.1.4. 語りの仕掛 55
2.2. 誰のことば? 考え? 055
  2.2.1. 発話の表示 56
  2.2.2. 動詞による裁量 56
  2.2.3. 伝え方の裁量 57
  2.2.4. 描出と裁量 59
  2.2.5. 思考の表示 61
  2.2.6. 誰が何をどう伝えるか 63
2.3. 語りのカモフラージュ 064
  2.3.1. 語り手の位置づけ 64
  2.3.2. 移ろう語り手 65
  2.3.3. 移ろう副詞 66
  2.3.4. 移ろう語り 68
  2.3.5. 叙述トリック 73
2.4. サスペンス・キュリオシティ・サプライズ 074
  2.4.1. 協調の原理 74
  2.4.2. フィクションにおける情報操作 75
  2.4.3. ノンフィクションにおける情報操作 80
  2.4.4. 物語らしさ 81


第 3 章 どう話す――対話の場合 083
3.1. 流れの切り盛り 83
  3.1.1. 談話の流れの管理 84
  3.1.2. メタ語用論的意識の流れ 85
  3.1.3. 流れの立体読み 91
3.2. 他者のことばを借りる 092
  3.2.1. ロメインの工作 92
  3.2.2. 発語動詞の含まれる伝達文 93
  3.2.3. 他者のことばを借りる 94
  3.2.4. 伝達のテクニック 99
3.3. 相手のことば取り 100
  3.3.1. エコー発話 101
  3.3.2. 極性一致の付加疑問文 101
  3.3.3. エコー発話の形式 102
  3.3.4. 復唱型 103
  3.3.5. 予想型 106
  3.3.6. エコー発話による誘導 108
3.4. 心の盛り込み 108
  3.4.1. 受け手への働きかけ 109
  3.4.2. 対立の構図 110
  3.4.3. 説得と誘導 112
  3.4.4. 誘導のプロセス 112
  3.4.5. 説得のプロセス 115
  3.4.6. 情報操作のデザイン 118
3.5. ジョーク 119
  3.5.1. ジョークのしくみ 119
  3.5.2. ジョークのレトリック 120
  3.5.3. ジョークの効用 123
  3.5.4. ジョークとフィクション 126


第 4 章 今ここで語りかける――演説の場合 127
4.1. 人称代名詞の使い分け 127
  4.1.1. キーワード 127
  4.1.2. 人称代名詞 130
  4.1.3. 人称代名詞の有標的使用 135
4.2. 聴衆の巻き込み方 137
  4.2.1. キーワード 137
  4.2.2. 人称代名詞 139
  4.2.3. オバマの受諾演説 139
  4.2.4. ロムニーの受諾演説 143
  4.2.5. 代名詞の切りかえと指示対象の拡大 145
4.3. 隠された人称 146
  4.3.1. 戦後70年談話 146
  4.3.2. コンピュータ処理 147
  4.3.3. we の場合 148
  4.3.4. Japan の場合 151
  4.3.5. engrave の場合 153
  4.3.6. 英語版からみえてくるもの 154
4.4. 訴えるレトリック 155
  4.4.1. 反復 156
  4.4.2. 対比 159
  4.4.3. 語り 161
  4.4.4. マララの技法 163


第 5 章 情報をデザインする――メディアの場合 165
5.1. ラベリング―ことばの罠 165
  5.1.1. ラベリングの妙 166
  5.1.2. ラベリングに潜む含意 166
  5.1.3. ラベリングの仕方 168
  5.1.4. 関係当事者間のくい違い 169
  5.1.5. 翻訳語における尺度のズレ 170
  5.1.6. 報道発信者のことばを言い換える 171
  5.1.7. 表象からメタ表象へ 172
  5.1.8. メディアとレッテル貼り 172
  5.1.9. ことばの罠 173
5.2. 隠されたステレオタイプ――役割語 173
  5.2.1. フィクションにおける役割語 174
  5.2.2. ノンフィクションにおける役割語 179
  5.2.3. 役割語の功罪 181
5.3. 行為の命名――ファーガソン事件報道 182
  5.3.1. 発話行為の分類 183
  5.3.2. 3 紙の比較 184
  5.3.3. 「陳述」か「脅し」か 189
  5.3.4. 命名の難しさ 190
5.4. 隠された皮肉――「アナ雪」をめぐる報道 191
  5.4.1. ハリウッド・レポーター 191
  5.4.2. アトランティック 192
  5.4.3. 英語記事の比較 195
  5.4.4. 日本語記事の比較 198
  5.4.5. 情報のデザイン 199
5.5. メディアの読み込み――ロシアの経済措置 200
  5.5.1. 英語記事での扱い 200
  5.5.2. 日本語記事での扱い 205
  5.5.3. 情報の読み込み 206


結びに代えて 209


参考文献 [215-223]
引用作品略記表 [225-226]
索引 [227-229]
著者紹介 [230]

『教育格差――階層・地域・学歴』(松岡亮二 ちくま新書 2019)

著者:松岡 亮二[まつおか・りょうじ] 教育社会学
NDC:371.3 教育社会学、教育と文化。
NDC:372.107 日本教育史・事情(昭和時代後期・平成時代 1945-)。


筑摩書房 教育格差 ─階層・地域・学歴 / 松岡 亮二 著


【目次】
目次 [003-010]


はじめに 011
  クイズの時間です
  前口上(prologue)
  本書の構成
  現状を把握するために
  長期的な「答え合わせ」とメカニズム解明
  今を生きる子供たちのために
  「現実」と向き合う


第1章 終わらない教育格差 029
1 親の学歴と子の学歴 031
  2015年調査データで教育格差を概観する
  いつの時代にも「子どもの貧困」がある
  「子どもの貧困」と教育格差 
2 出身地域による学歴格差 042
  「生まれ」としての出身地域
  若年層において地域格差は拡大しているのか
  居住地域「分断」――格差拡大の兆し
3 意識格差――「大衆教育社会」から「階層化社会」へ 052
  階層と「教育熱」
  「教育熱」の地域格差
  「教育意識」の地域格差はなぜ生まれるのか
  近隣の「教育意識」は重要な教育「環境」
4 階層と「不利な状況」の打破 064
  「機会」を活用できる者の「生まれ」は偏っている
  受験に不利な高校からの大卒
  非三大都市圏からの大卒
  「わたしの家の経済状態は“ふつう”だったけど大卒になった」?
  教育サービスを利用せずに大卒になったのは「誰」か
  両親非大卒から大卒となった層にも「生まれ」の偏りがある
5 時代を超えて確認される格差構造 079
  教育格差の時代の趨勢
  社会経済的地位(SES)の定義


第2章 幼児教育――目に見えにくい格差のはじまり 083
1 これまでにわかっていること 084
  教育研究先進国の知見
  日本の研究
2 異なる子育てロジック 087
  「意図的養育」と「放任的養育」
   21世紀出生児縦断調査
  子育てと子供の発達・行動・性格
  保育所・幼稚園の利用格差
  習い事の開始時期
  メディア(テレビ・ゲーム)時間の抑制
  就学前の準備格差


第3章 小学校――不十分な格差縮小機能 107
1 子育ての階層格差〈個人水準の格差〉 109
  日本の「意図的養育」
  拡大する経済資本格差
  相続される文化資本
  入学時点で確認できる学力格差
  目指す教育ゴールの違い
  多種多様な学習機会の格差
  学校制度の中で評価されるための追加的学習機会
  学習努力という経験格差の拡大
  メディア消費経験の蓄積量格差
  すべての親が等しく学校関与するわけではない
2 学校・地域の格差〈集合水準の格差〉 135
  社会経済的地位(SES)の地域・学校間格差
  公立校であっても学力の学校間格差は大きい
  「みんな」が目指す教育のゴールは同一ではない
  習い事の地域・学校間格差
  通塾するのが「ふつう」?
  どれぐらい勉強するのが「ふつう」なのか
  拡大するメディア消費時間の学校前格差
  親が顔を出す学校・あまり出さない学校
  異なる「ふつう」の中で育つ小学生


第4章 中学校――「選抜」前夜の教育格差 159
  小学校時代の経験蓄積格差
1 階層格差〈個人水準の格差〉 163
  学力格差の平行移動
  身体化される「意思」
  受験学年でも「みんな」が通塾しているわけではない
  受験前の「生まれ」による努力格差
  受験学年のメディア消費
  親と学校の「つながり」格差
  「学校で何を勉強しているの?」
2 学校・地域の格差〈集合水準の格差〉 176
  社会経済的地位(SES)の地域格差
  公私立校と公立校間の学力格差
  教育熱のサウナになる学校とならない学校
  学習塾大国における分断線
  学習努力の公立中学校間格差
  メディア消費量の基準の違い
  親の学校関与は学校間で異なる
  受験までの「ふつう」な中学生活? 


第5章 高校――間接的に「生まれ」で隔離する制度 199
  制度的に作られる学校間SES格差
1 「能力」による生徒の分離――学校間のSES格差 202
  「生まれ」と教育熱サウナ
  制度による過熱化と塾・予備校利用
  拡大する学習行動の格差
  時間の使い方の規範の違い
  授業の雰囲気・学習姿勢・帰属意識
  親の支援・教師の期待・退学
2 制度的に拡大化された教育「環境」の学校間格差 226
  学校の特徴は「生まれ」を基盤としている
  人生の分岐点 


第6章 凡庸な教育格差社会――国際比較で浮かび上がる日本の特徴 231
1 すべての社会に格差は存在する 233
  隣の花は赤い
  どの社会も大卒は高収入
2 義務教育の「答え合わせ」 236
  平均値の高い日本
  国際的に凡庸な教育格差
  「生まれ」による期待格差 
3 「効率」を追求する高校教育制度 246
  学校SESと学力の強い関連
  学習努力量の格差
  教員の学業に対する期待
  学力水準が高く格差の度合いが平均的な日本社会


第7章 わたしたちはどのような社会を生きたいのか 253
1 建設的な議論のための4ヵ条 256
  4ヵ条その① 価値・目標・機能の自覚化
  「大きな学校」と「小さな学校」
  すでに恵まれた生徒への税金による追加支援
  「正しさ」に酔わないために
  4カ条その② 「同じ扱い」だけでは格差を縮小できない現実
  4カ条その③ 教育制度の選抜機能
  4ヵ条その④ データを用いて現状と向き合う
  学校群制度
  「ゆとり」教育
  高校教育改革
  失われた可能性
  「重たい」教育論議
  現状のままでよいわけでもない
  「生まれ」と「選抜」基準
2 〈提案 1〉分析可能なデータを収集する 288
  「生まれ」による格差とその拡大の兆しを前にして
  教育制度内で分析可能なデータを蓄積していない
  現在の子供たちと次世代のためにできること
  「効果」検証の難しさ――相関と因果
  子供たちの可能性を少しでも引き出すために
  「誰」に効果があるのか
  研究知見に基づいた実践の拡散を
3 〈提案 2〉教職課程で「教育格差」を必修に! 303
  教師が再生産に寄与?
  「教育格差」を教えない教職課程
4 総括――未踏の領域 311
  岐路に立つわたしたち
  人類史上存在しなかった社会を夢見よう
  埋もれたままの「才能」


おわりに 321
  未完のままの締め口上(epilogue)
  『教育格差』の後
  本書の成分
  謝辞


註記 [334-360]
引用文献 [i-xxi]




【抜き書き】

・「はじめに」から。

  人には無限の可能性がある。
  私はそう信じているし、一人ひとりが限りある時間の中で、どんな「生まれ」であってもあらゆる選択肢を現実的に検討できる機会があればよいと思う。なぜ、そのように考えるのか。それは、この社会に、出身家庭と地域という本人にはどうしようもない初期条件(生まれ)によって教育機会の格差があるからだ。この機会の多寡は最終学歴に繫がり、それは収入・職業・健康など様々な格差の基盤となる。つまり、20代前半でほぼ確定する学歴で、その後の人生が大きく制約される現実が日本にはあるのだ。
  これは近年だけの話ではない。戦後日本社会には、程度の差こそあれ、いつだって「生まれ」による最終学歴の格差――教育格差があった。〔……〕そう、戦後日本社会に育ったあらゆる人にとって、教育格差は他人事ではなく、「古き良き時代」が存在したことはないのである。
  生まれ育った家庭と地域によって何者にでもなれる可能性が制限されている「緩やかな身分社会」、それが日本だ。現行の教育制度は建前としての「平等」な機会を提供する一方、平均寿命が80歳を超える時代となっても、10代も半ばのうちに「身の程」を知らせる過程を内包している。「生まれ」による機会格差という現状と向き合い積極的な対策を取らなければ「いつの時代にも教育格差がある」ことは変わらず、わたしたちはこの緩慢な身分制度を維持することになる。それは、一人ひとりの無限の可能性という資源を活かさない燃費の悪い非効率な社会だ。

(『教育格差』pp. 15-16)




【関連記事】
・弊ブログが過去に目次を公開した僅かな書籍から、関連するものをまとめた。
・本書『教育格差』が引用文献に挙げている書籍には、星印★ を付けた。


  [学校/試験/学歴]
『立志・苦学・出世――受験生の社会史』(竹内洋 講談社学術文庫 2015//1991)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20170509/1493038563
『試験と競争の学校史』(斉藤利彦 講談社学術文庫 2010//1995)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20101105/1472800457
★『教育〈思考のフロンティア〉』(広田照幸 岩波書店 2004)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20080209/1479083687
『大学の誕生〈上〉――帝国大学の時代』(天野郁夫 中公新書 2009)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20170409/1490597468
『大学の誕生〈下〉――大学への挑戦』(天野郁夫 中公新書 2009)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20170409/1490597657
『学歴分断社会』(吉川徹 ちくま新書 2009)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20120709/1341759600
『検証・学歴の効用』(濱中淳子 勁草書房 2013)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20170321/1489629296
『〈高卒当然社会〉の戦後史――誰でも高校に通える社会は維持できるのか』(香川めい,児玉英靖,相澤真一 新曜社 2014)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/2018/12/17/013000
アメリカの大学の裏側』(Aki Roberts, 竹内洋 朝日新書 2017)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20190513/1557706087
『教育論の新常識――格差・学力・政策・未来』(松岡亮二[編] 中公新書ラクレ 2021)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20220201/1643641200


  [教育投資]

★『幼児教育の経済学』(James J. Heckman[編著] 古草秀子[訳] 東洋経済新報社 2015//2013)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20160721/1469344547
『「学力」の経済学』(中室牧子 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2015)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20160717/1469344227
『学歴社会の法則――教育を経済学から見直す』(荒井一博 光文社新書 2007)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20140225/1493039818
奨学金が日本を滅ぼす』(大内裕和 朝日新書 2017)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20170413/1490945350


  [日本における貧困・不平等]
『日本の不平等』(大竹文雄 日本経済新聞社 2005)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/2010/12/25/000000
『日本の貧困研究』(橘木俊詔, 浦川邦夫 東京大学出版会 2006)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20090913/1252767600
『反貧困――「すべり台社会」からの脱出』(湯浅誠 岩波新書 2008)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20130905/1504015001
★『子どもの貧困――日本の不公平を考える』(阿部彩 岩波新書 2008)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20130413/1365778800
★『子どもの貧困 II ――解決策を考える』(阿部彩 岩波新書 2014)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20140125/1390575600
マイクロファイナンス――貧困と闘う「驚異の金融」』(菅正広 中公新書 2009)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20130313/1363100400
『彼女たちの売春[ワリキリ]――社会からの斥力、出会い系の引力』(荻上チキ 扶桑社 2012)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20121209/1461179900
『効率と公平を問う』(小塩隆士 日本評論社 2012)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20120605/1338822000

『ニッポンの貧困――必要なのは「慈善」より「投資」』(中川雅之 日経BP社 2015)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20151225/1539586857
ベーシック・インカム――国家は貧困問題を解決できるか』(原田泰 中公新書 2015)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20150523/1480259761
『経済学者 日本の最貧困地域に挑む――あいりん改革 3年8カ月の全記録』(鈴木亘 東洋経済新報社 2016)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20170721/1500002351
『貧困と地域――あいりん地区から見る高齢化と孤立死』(白波瀬達也 中公新書 2017)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20170901/1501854549


[海外の不平等・貧困の研究、社会運動]

『不平等、貧困と歴史』(J. G. Williamson[著] 安場保吉,水原正亨[訳] ミネルヴァ書房 2003//1991)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20131101/1488506125
『不平等について――経済学と統計が語る26の話』(Branko Milanovic[著] 村上彩[訳] みすず書房 2012//2010)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20130417/1366124400
『貧困と闘う知――教育、医療、金融、ガバナンス』(Esther Duflo[著] 峯陽一, Koza Aline[訳] みすず書房 2017//2010)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20181117/1541167922
『貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える』(Abhijit V. Banerjee, Esther Duflo[著] 山形浩生[訳] みすず書房 2012//2011)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20120509/1462504488
『善意で貧困はなくせるのか?――貧乏人の行動経済学』(Dean Karlan, Jacob Appel[著] 清川幸美[訳] みすず書房 2013//2011)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20130617/1539585939
『21世紀の不平等』(Anthony B. Atkinson[著] 山形浩生,森本正史[訳] 東洋経済新報社 2015//2014)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20170309/1488771351
『大不平等――エレファントカーブが予測する未来』(Branko Milanović[著] 立木勝[訳] みすず書房 2017//2016)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20190909/1567954800
『作られた不平等――日本、中国、アメリカ、そしてヨーロッパ』(Robert Boyer[著] 横田宏樹[編訳] 藤原書店 2016//2014)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20170221/1487070659
『現代奴隷制に終止符を!――いま私たちにできること』(Kevin Bales[著] 大和田英子[訳] 凱風社 2011//2007)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20160711/1469187072


[平等についての思想史]
『不平等との闘い――ルソーからピケティまで』(稲葉振一郎 文春新書 2016)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20160925/1473835904
『不平等論――格差は悪なのか?』(H. G. Frankfurt[著] 山形浩生[訳] 筑摩書房 2016//2015)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20161121/1479100968
ベーシックインカム入門――無条件給付の基本所得を考える』(山森亮 光文社新書 2009)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20120329/1332946800

『漢字学――『説文解字』の世界〈新装版〉』(阿辻哲次 東海大学出版会 2013//1985)

著者:阿辻 哲次[あつじ・てつじ](1951-) 中国文化史、文字学。
装丁:中野 達彦
NDC:821.2 中国語 → 漢字


https://www.press.tokai.ac.jp/bookdetail.jsp?isbn_code=ISBN978-4-486-02010-3


【目次】
目次 [v-ix]
はじめに [xi-xii]
新装版のための前書き [xiii-xvii]


  第一部 
序論 =漢字と中国二千年の文字学= 003
  表意文字としての漢字/漢字の形・音・義/「小学」/『説文解字』/新しい時代へ/甲骨文字の出現/「東」字について/「声訓」について/「五行説」について/神話による解釈/小篆の字体/甲骨文字による「東」字解釈/甲骨学と『説文解字』/共時代的観点


説文解字』前史 =実用的文字学の時代= 018
  秦始皇帝の政治/度量衡の統一/車軌の統一/文字の統一/泰山刻石と小蒙/『倉頡篇』=識字教科書/倉頡造字伝説/『倉頡篇』の伝承/ヘディンの発見/『居延漢簡考緯』/居延漢簡の『倉頡篇』/「蒼頡作書」とある木簡/『流沙墜簡』と王國維/文字学の原動力/文字の試験/八体と六体/史書/「史書」とは何か?/漢代の塾/「史篇」について/前漢における文字学の特徴


説文解字』の背景 =許愼とその時代= 047
  『後漢書』儒林伝/許愼の「字」と生地/「五経無双許叔重」/『後漢書』に見える「時人評語」/「時人評語」の押韻/許愼評の押韻/「○○無双」の形式/「五経○○」の形式/再び「五経無双許叔重」について/許愼の官界経歴/孝廉推挙/その後の官歴/許沖の「説文上表」/太尉南閤祭酒という官/許愼の任官順序/許愼の生卒年/伝の後半/許愼の「准南子注」/秦の焚書/今文の経書/古文経書の出現/劉向と劉歆/五経博士と今文学/古文派の台頭/『周禮』の登場/後漢の経学/白虎観会議/許愼の師賈逵/『五經異義』の内容/天子の結婚適齢期について/位牌について/許愼の時代


説文解字』 =文字の体系化とその手法= 080
  撰述の目的/「文字者經藝之本」


文字解釈の基盤 =小篆= 083
  字源の俗説/俗説の横行/馬頭人為長/廷尉の解釈/隷書と『倉頡篇』/王葬と「卯金刀」/光武帝と「白水真人」/隷書の譌形/書体の流れ/秦書八体/「王葬六体」/古文と籀文/「東西二土の文字」/王國維説の検証/『説文解字』の字体/小篆の誤り/漢代と古代文字


文字解釈の基盤 =六書= 105
  六書の原則とその定義/『周禮』と六書/「周禮六書」の内容/六書の成立/劉歆の学統/『漢紀』の資料/六書の成立/『説文解字』による六書の再検討/「文」と「字」/象形と指事/会意と形声/仮借について/転注について/六書三網説/“プレ六書”/三組のペア/六という数/六書の本質/許愼と六書


説文解字』の構造 =文字のコスモロジー= 135
  『説文解字』の総字数/部首法/『説文解字』の部首法/建部の例/第一篇の部/「玉」部と「丑」部の関係/「艸」部と「蓐」部/建部の原則/少数字の部/「文一の部」/「莧」部と「能」部/部の配列/「二」部/三才=天・地・人/五百四十という数/干支字の説解/五行思想/東は動なり/「始一終亥」=循環する文字


  第二部
段玉裁『説文解字注』論 175


説文解字注』の背景 =段玉裁とその時代= 181
段玉裁『説文解字注』/段氏の生家/出生と少年時代/挙人となる/北京に出る/戴震との出会い/古音学の基礎/官界生活/『六書音均表』の完成/『説文解字』に取組む/故郷に帰る/蘇州に転居/劉台拱への手紙/『段注』執筆の苦悩/『段注』完成/『段注』の刊行


説文解字讀』と『汲古閣説文訂』 =『説文解字注』への道程= 202
  『説文解字讀』の執筆/『説文解字讀』への認識/『説文解字讀』は現存する/北京図書館善本室/北京図書館蔵『説文解字讀』の来歴/蔵書印から/『説文解字讀』の構成/第一の疑問/第二の疑問/北京本と『段注』/北京本の正体/北京本と『説文解字讀』/『説文解字讀』の正体/錢大斫の見た本/書名について/テキスト・クリティーク/『説文』学簡史/李陽沐の改訂/徐絃と徐鍇/部首法の改変/『説文解字五音韻譜』/汲古閣刊本『説文解字』/段玉裁の校訂


説文解字注』の方法 230
  『説文解字』の体例の究明/古文「上」字の訂正/以許解許/古典による実証/字義の変遷/統言と析言/古代音韻の研究/顧炎武の分部/江永の十三部説/段氏十七部説/段氏十七部説の特徴/支・脂・之の分類/字音と字義の関係/形声文字の音符/音符による共通義


『段注』を読むために 267
  『段注』のテキスト/『皇清經解』所収本/大徐本のテキスト/小徐本のテキスト/『説文解字詁林』/『説文解字段注考正』/『段玉裁遺書』/『訓讃説文解字注』/現代における『説文解字


後記(一九八五年一月 阿辻哲次) [285-286]