著者:斉藤 利彦[さいとう・としひこ] (1953-) 日本近代教育史、中等教育史、試験制度史。
『試験と競争の学校史』(斉藤 利彦):講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部
【目次】
はしがき [003-005]
目次 [006-009]
序章 競争と試験の状況から 013
1 諸外国からのまなざし 013
2 中学時代の体験から 017
3 「試験準備に支配された教育制度」――「MISSION REPORT」から 020
4 近代学校の創設期へ 023
第一章 試験の風景 027
1 学区取締の日記から――試験立会いの日々 028
2 教育雑誌に見る試験と競争 037
第二章 試験制度の成立 044
1 「学制」の概念と理念 046
2 「学制」における試験制度の内容 051
3 各府県による多様な試験形態の成立 054
4 六種類の試験と二つの類型 061
(1) 進級と卒業認定のための試験
(2) 競争と選抜のための試験
5 「学制」後における試験制度の展開 071
試験への国家統制の強化
比較試験の盛行
第三章 試験制度の実際 080
1 頻繁に繰り返される試験 081
2 「大試験(卒業試験)」の実態と生徒たち 086
3 試験の方法と技術 090
監視される試験会場
「戦慄畏縮」の試験
4 試験問題と暗記注入の教授法 098
進級試験の実態
試験問題の内容
5 「比較試験」の実態 108
比較試験登場の経緯
比較試験の内容
第四章 試験による淘汰と教育のひずみ 119
1 試験による落第 119
「姑息の進級」を認めず
落第の基準
落第者の数と割合
村民の激昂
2 大量の不受験者の存在 128
不受験の割合
不受験の理由と受験費用
3 中途退学と学校への恐怖・嫌悪 135
4 試験と競争のひずみ 141
教員の不正行為
第五章 仕掛けとしての試験――試験による競争の組織化 146
1 近代学校の啓蒙装置 146
「等級制」と試験
「四民平等」と試験
2 学事振興と「競争心」の利用 150
(1) 就学率の低迷
(2) 民衆への重い学費負担と就学督責
(3) 試験と競争の効用とその政策的利用
3 席次の競争 159
競争の自己目的化
罰則と同等の処遇
4 成績の公表と「観覧性」の技術 165
校門前での公開
観覧性の意味
選別するまなざし
5 試験をめぐる賞罰の体系 172
褒賞と優等生
優等者に金銭を
褒賞の意味
落第者を処分すへし
6 地域内での競争と「比較試験」 179
成績による補助金配分
7 競争の無規制な昂進と行政側の対応 183
「競馬闘鶏」としての試験
徳育の重視
比較試験と「席次」の廃止
卒業試験の廃止
第六章 中学校における競争と淘汰 198
1 試験と競争の特質 198
競争の制度的規定
試験の日常化と「常往の競争」
2 淘汰の態様――大量の落第と中途退学 207
膨大な中途(半途)退学者数
授業料不納と中退
「試験のいたで」と中退
第七章 進学競争の世界 224
1 進学競争の激化と淘汰 226
2 序列競争としての進学競争 230
合格率の格差
合格水準の格差
3 予備教育化と学校間・郷土間の競争 236
予備教育の当然視
進学と学校間競争
進学と郷土間の競争
終章 「試験の時代」と競争 246
1 行政による競争の創出と利用 246
2 産業化の趨勢と競争 250
産業社会と競争
民衆の世界と競争
学校的価値と競争
3 競争の自己展開と民衆の意識 255
序列競争としての自己展開
投資としての学問
「社会ダーウィニズム」と競争意識
学校による人格への烙印
4 試験の濫用による生徒管理 261
5 学事振興への阻害 264
6 試験と競争のその後 266
高等諸学校への入試競争の激化
受験の低年齢化
入試制度の改革
あとがき(一九九五年 斉藤利彦) [277-280]
学術文庫版のあとがき(二〇一〇年 著者) [281-285]