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目次とメモを置いとく場

『図書館概論――デジタル・ネットワーク社会に生きる市民の基礎知識』(山本順一 ミネルヴァ書房 2015)

著者:山本 順一[やまもと・じゅんいち](1949-)
シリーズ:講座・図書館情報学;2
NDLC:UL11 図書館・情報センター
NDC:010 図書館.図書館学


図書館概論 - ミネルヴァ書房 ―人文・法経・教育・心理・福祉などを刊行する出版社


【目次】
「講座・図書館情報学」刊行によせて(2013年3月 山本順一) [/]
はじめに(2015年3月 山本順一) [i-iii]
目次 [v-ix]


第1章 図書館と図書館情報学
1 ʻ図書館ʼとは何か 001
  1.1 多様な図書館像
  1.2 図書館が生活と人生を変える 
2 図書館情報学という学問領域 005
  2.1 日米の比較講座
  2.2 図書館情報学はひとつの応用科学
コラム 種子のライブラリー 007


第2章 図書館の種類
1 国立図書館 010
  1.1 世界の国立図書館 
  1.2 国立図書館の役割 
2 公共図書館 011
  2.1 アメリカの公共図書館の役割
  2.2 ピマ・カウンティ・パブリック・ライブラリー[Pima County public Library]
  2.3 アリゾナ州立図書館
3 大学図書館学校図書館 016
  3.1 大学図書館の役割
  3.2 アリゾナ州学校図書館と学校教育
  3.3 トゥーソン統合学校区の学校図書館の現状
4  専門図書館とさまざまな図書館 023
  4.1 ハンチントン・ライブラリー[The Huntington Library, Art Museum and Botanical Gardens, known as The Huntington]
  4.2 ハンチントン・ライブラリーの運営方法
  4.3 大統領図書館――クレムリン大統領図書館を例に
  4.4 大統領図書館制度
  4.5 部族図書館[tribal library]
  4.6 刑務所図書館
コラム トゥーソン・ハイ・マグネット・スクール[Tucson High Magnet School] 037


第3章 図書館の歴史
1 図書館の起源 039
  1.1 古代の図書館
  1.2 中世の図書館
2 グーテンベルク活版印刷術 042
  2.1 ルネサンスの大発明
  2.2 活版印刷技術が与えた影響――近代著作権制度と図書館のあり方
3 日米の図書館の歴史 045
  3.1 フィラデルフィア図書館会社
  3.2 ボストンの公共図書館
  3.3 アンドリュー・カーネギーの図書館支持
  3.4 日本の図書館の歴史
コラム カーネギー・ライブラリー 056


第4章 図書館サービス
1 サービスの分類 058
  1.1 パブリック・サービスとテクニカル・サービス
  1.2 「場所」から考える図書館サービス
2 アメリカにおける図書館サービスの分類 060
  2.1 ピマ・カウンティ・パブリック・ライブラリーの概要
  2.2 図書館サービスの内容
  2.3 児童サービス
  2.4 ヤングアダルト・サービス
  2.5 障害者サービス
  2.6 ホームレスに対するサービス
3 アメリカの公共図書館における行事・講座 071
  3.1 宿題支援[Homework Help]
  3.2 GED[General Educational Development]対策講座
  3.3 英語講座
  3.4 就職支援サービス
  3.5 ビジネス支援
  3.6 税務支援サービス
  3.7 死亡記事索引調査
  3.8 ブックバイク[bookbike]
コラム 犬への読み聞かせ(Read to a Dog) 079


第5章 図書館情報資料コレクションと組織化
1 図書館資料とは何か 081
  1.1 刷新が期待されるʻ図書館資料ʼ概念
  1.2 デジタル・ネットワーク時代のʻ図書館(情報)資料ʼ概念
2 情報資料の組織化 084
  2.1 図書館分類
  2.2 目録情報
  2.3 目録規則
  2.4 日本目録規則
  2.5 目録規則作業における日特有の問題
3 情報資源としてのインターネットと電子書籍 091
  3.1 インターネット情報資源の性質
  3.2 アメリ図書館界電子書籍への対応
コラム 図書館所蔵図書のラベルの相違 096


第6章 図書館情報資料の利用と著作権制度
1 様々な情報資料とサービス 097
  1.1 貸出サービスと関連サービス
  1.2 ILLサービス
2 図書館におけるデジタル複製 099
  2.1 公共図書館で販売されているUSBメモリ
  2.2 複写かデジタル複製か?
3 図書館資料の保存 102
  3.1 長期的かつ安定的保存をめざして
  3.2 災害による損傷
4  図書館資料と著作権制度 104
  4.1 著作権と著作物
  4.2 図書館における法的に保護された著作物の取り扱い
    4.2.1 伝統的取り扱い
    4.2.2 図書館における資料保存の複製と複製(複写)サービス(1) ――アメリカの場合
      (1) 図書館所蔵資料の保存のための複製
      (2) 個人的な研究や学習[private study]のための複製の作成
      (3) 図書館相互協力のためのコピー(Copies for InterLibrary Loan)
    4.2.3 図書館における資料保存の複製と複製(複写)サービス(2) ――日本の場合
5  書籍、電子ジャーナルの利用・提供 114
  5.1 デジタル化への動き
  5.2 利用・提供の際の問題点
6  アメリカのTEACH Actと日本の著作権法35条 116
  6.1 アメリカのTEACH Act
  6.2 日本の著作権法35条
7  アメリカ連邦著作権法における図書館とフェアユース 119
  7.1 フェアユースの理念と利用要件
  7.2 日本の図書館とフェアユース
  7.3 論文・レポートの書き方と著作権――リサーチ・ガイド
コラム 大学図書館に設置されるスキャナーが持つ意味 124


第7章 「場としての図書館」と情報空間の拡張
1 期待される「場としての図書館」の役割 126
  1.1 図書館の集会室
  1.2 ライブラリー・ショップ
  1.3 図書館の「経営」を考える
2 図書館とネットワーク 130
  2.1 相互協力によってもたらされる利用者への恩恵
  2.2 共同保管庫と共同的所蔵資料管理
3 書誌ユーティリティ 133
  3.1 OCLC[Online Computes Library Center
  3.2 国立情報学研究所
コラム 本を売る図書館  139


第8章 変化する出版産業とその流通
1 日本の出版流通 141
  1.1 産業としての出版流通の歴史
  1.2 厳しい市場状況
2 アメリカの出版流通 144
  2.1 出版流通の現状と図書館の動き
  2.2 電子書籍をめぐっての問題――ホールセール・モデルとエージェンシーセール・モデル
3 公共図書館と書店の関係 146
  3.1 ベストセラーをめぐって
  3.2 トゥーソン・ブックフェスティバル
コラム 電子ジャーナルの利用を萎縮させるものはなにか 149


第9章 デジタル環境における情報知識の公開と共有
1 オープンアクセスへの動き 152
  1.1 電子ジャーナルをとりまく状況
  1.2 アメリカと日本の動向
2 善意の電子図書館の普及 155
  2.1 プロジェクト・グーテンベルク
  2.2 ハーティトラスト[Hathi Trust]
  2.3 青空文庫
コラム 政府情報を市民と共有する仕組み 160


第10章 図書館の社会的責任と知的自由の保障
1 図書館の社会的責任 162
  1.1 アメリカでの取り組み
  1.2 よりよい民主主義社会の実現にむけて
2 ʻ知的自由ʼの成り立ち 167
  2.1 図書館の権利宣言
  2.2 基本的人権の保障としてのコレクション形成
3 ʻ知的自由ʼ概念の構造 170
  3.1 知る権利の享受と表現の自由
  3.2 資料選択行為における図書館の姿勢
  3.3 知的自由と連邦憲法修正4条――ライブラリー・プライバシーをめぐって
4  情報へのアクセスの自由と未成年者の利用について——動画(資料)の提供とSSN利用 177
  4.1 アメリカ図書館協会の公式見解
  4.2 未成年者によるアクセスの自由への疑義
  4.3 問われる図書館利用のフィロソフィー
コラム 白い紙が巻かれた本 182


第11章 逼迫する財政と図書館経営
1 変革的リーダーシップとは何か 184
  1.1 ’変革的リーダーシップ’理論の背景
  1.2 革新はビジョンとプロセス
  1.3 求められる変革的リーダーシップとは何か
2 寄付とアドボカシー 189
  2.1 運営予算として機能する「寄付」の重要性
  2.2 アドボカシーと図書館の能動的支持者の存在
  2.3 民主主義は図書館を必要とし、図書館は能動的な支持者を必要とする
3 制度化された補助金制度 194
  3.1 博物館・図書館サービス協会[Institute of Museum and Library Services:IMLS]
  3.2 全米人文科学基金[The National Endowment for the Humanities:NEH]
4  図書館のガバナンスとマネジメント 199
  4.1 ガバナンスとマネジメントを担う人々
  4.2 マッチング・ファンズ
  4.3 図書館の望ましい運営形態
  4.4 図書館法によらない図書館
コラム 図書館への寄付 205


第12章 ライブラリアン像と図書館ではたらく人たち
1 ライブラリアン・司書・図書館員 207
  1.1 求められる業務と資格
  1.2 図書館支援スタッフ資格[Library Support Staff Certification:LSSC]
  1.3 認定公共図書館管理職資格[Certified Public Library Administrator]
  1.4 ライブラリアンに必要とされる専門的能力
2 期待されるʻエンベデッド・ライブラリアンʼ 216
  2.1 エンベデッド・ライブラリアンとは何か
  2.2 エンベデッド・ライブラリアンの登場の背景
  2.3 メディカル・ライブラリアンのエンベデッド・ライブラリアンシップ
  2.4 遠隔教育とエンベデッド・ライブラリアン
  2.5 大学図書館とエンベデッド・ライブラリアン
  2.6 公共図書館とエンベデッド・ライブラリアン
  2.7 コミュニティ・レファレンス
3 ライブラリアンの倫理 224
  3.1 専門職ゆえに求められる定め
  3.2 専門職業倫理が課す自覚とその役割
  3.3 ライブラリアンの倫理綱領
コラム アメリカの図書館で働くということ 229


第13章 図書館情報学教育
1 アメリカの図書館情報学教育 232
  1.1 カリパー・プロジェクト[Kellogg-ALISE Information Professionals Reform Project:KALIPER Project]
  1.2 既存の学問領域を超えて
  1.3 遠隔教育の進展
2 ライブラリースクールの分布と現状 235
  2.1 分布と現状
  2.2 アリゾナ大学ライブラリースクールの沿革と現在
3 様々な教育プログラムと就職マーケット 238
  3.1 アイスクール[iSchool]の動き
  3.2 ワイズ・コンソーシアム[WISE Consortium
  3.3 図書館情報学履修者の修飾マーケット
コラム テキストブック販売店 243


第14章 図書館の実務と理論に関わる組織団体
1 国際的機関 245
  1.1 ユネスコ(Unesco)
  1.2 国際図書館連盟
2 図書館協会と学術団体 249
  2.1 アメリカ図書館協会
  2.2 日本図書館協会
  2.3 学会、研究会などの学術団体
コラム ライブラリースクールの営業活動 253


第15章 図書館の将来展望
1 アメリカの公共図書館の未来 254
  1.1 求められるデジタル著作権理解と行動
  1.2 多様なライブラリアンの活躍
  1.3 「場」としての図書館という希望
2 豊かな近未来を実現するために 258
  2.1 求められる人材育成と公共図書館行政の重要さ
  2.2 日本の公共図書館をめぐる状況
コラム 変革を目指す図書館と現状適応の図書館の将来 259


資料 アメリカの図書館界の基本的な事実 [261-263]
索引 [265-269]





【メモランダム】
・感想:いわば〈当世アリゾナ図書館事情〉という趣の本。とても興味深い情報を知ることができる。
 ただし、著者のアメリカ合衆国での研修の成果を沢山盛り込んだ結果、米国の法・文化・社会に詳しい読者であれば活用できる本になったようだ。それに加えて、この本はいくつかの意味で日米比較ができているとは言えないので、『図書館概論』は罪作りなタイトルだと思う。


・「コラム 図書館所蔵図書のラベルの相違」でNDLの弱点が愚痴っぽく指摘されている。
 しかし国立国会図書館分類法が優れているのは分かるが、NDLより知名度が低く分かりにくいから仕方無いと思う。


・誤植。「第13章 図書館情報学教育」のうち一ヵ所だけ、項の番号が乱れている。上記目次では訂正済み。

1 アメリカの図書館情報学教育 
  13.1 カリパー・プロジェクト
  1.2 既存の学問領域を超えて
  1.3 遠隔教育の進展



・147頁にある短い記述。それに対する私の長い感想。この記述の是非自体はあまり重要ではないので、本の評価には関係がない。
□くだんの記述。

 2013年現在、日本には1万4,241の書店が存在し、アメリカには1万2,703の書店が存在する。人口は日本が1億2,700万人でアメリカが3億1,600万人、国土面積は日本が38万平方キロでアメリカは963万平方キロだが、これだけの数字を見て分かることは、一般に広大な国土のアメリカには書店がぱらぱらっと散在しているということである。このような状況がオンライン書店アマゾンを育て、今日では世界最大の通販業者を産み出した背景だと思われる。


□前置き
 ここから私(id:Mandarine)が、「表記」と「内容」の2つ面で気になった部分へのメモを書く。
 なお内容についてのメモは、後出しジャンケンを避けるために「通販の歴史」とか「アマゾン・ドットコムの社史」的なものは見ずに書いた。



□表記
最初に重要度の低く、かつ個人的な感覚にまつわる話題として、数の表記について。
 引用文中では大きな桁の数を表すさいに「1万2,703」「3億1,600万」と書いている。しかし、億・千・万……の漢字の単位を明記しているなら、三桁ごとのカンマ区切りは不要だろう。
 次の5つのうち、敢えて(ほ)を選ぶ理由は見当たらない。
  (い) 「316000000」 
  (ろ) 「316,000,000」 
  (は) 「31,600万」
  (に) 「3億1600万」
  (ほ) 「3億1,600万」 
 この(ほ)は、4桁区切りの内部で3桁の区切りを行っているわけだが、合理性はないと私は思う。なんなら、欧米式に表記を換算するときにはズレるぶん邪魔にすらなりうる。


 「人力検索はてな」でも迷う人が見つかった。
 https://q.hatena.ne.jp/touch/1186563303


 なお、文化庁の「公用文作成の考え方」という微妙に当てにならないガイドラインがある(追記:2022年に題と中身を改訂)。
 このガイドラインは基本的にまともだが、一部で「同じ助詞は連続させない」とか「全角数字を使う」とか、よろしくない指針も打ち出している(公用文初心者には助かるのかもしれないが、墨守するものではない)。

 ガイドラインの中の「Ⅰ-4 数字の使い方」には、大きな数の表記について次の通り簡単な言及がある。
 以下は、『「公用文作成の考え方」について(建議)』というタイトルのPDFファイルから抜粋したもの。

ウ 兆・億・万の単位は、漢字を使う
 「5兆、100億、30万円」のような場合には、兆・億・万を漢字で書くが、千・百は、例えば「5千」「3百」としないで、「5,000」「300」と書く。単位の漢字と算用数字を合わせて使う場合、数字だけの場合とコンマの位置がずれることによる混乱を避けるため、コンマを省いてもよい。
 例)1億 2,644万 3,000人 / 1億 2644万 3000人 (126,443,000人)

 このように、このガイドラインは、 (に) 「3億1600万」と(ほ) 「3億1,600万」に優劣をつけていない。従うかは別だが。




□内容
 「これだけの数字を見て分かることは」とデータを列挙した箇所に対して、私が気になった点は①と②の二つ。
 ①「カクカクシカジカでオンライン書店が発達した」と言う結論に至るためには、面積と人口と書店数のデータだけでは不足しているうえ、その3種類が筆頭だとは思わない。
 仮に地理的な要因を並べるのであれば、書店の都市への集中度合い(ひいては書店への頻繁なアクセスが難しい人々の数)や、国内の書店数に対する零細書店の割合も知りたい。
 そして(書店の散らばり度がオンライン書店の話にどれ程度寄与するのか私には納得できてないが)、「散らばり度」を大雑把に算出したいのなら、国土面積より居住可能な地域の面積を用いる方が精度は良さそうだ(広大なコロラド高原や北上山地に出店している書店は無いものと考えていいので)。

 ②また、「オンライン書店業が生まれて大きく育つ確率は、人口と面積に正比例し、書店数に反比例する。アメリカはその確率が大きくて日本は確率が小さかった」という理屈を書くからには、是非「オンライン書店が生まれそうな」国を選び、それの対となるデータも見ておきたい(そうすればロシア連邦オンライン書店業は生まれたのかどれほど拡大したのか……と結論部も比較できる)。「オンライン書店が生まれなさそうな」国はとても沢山あるので公正な選出に困りそうだ。
 以上の点から、3種類6つのデータ(だけ)を取り上げたことには納得できなかった。


 次に「一般に広大な国土のアメリカには書店がぱらぱらっと散在している〔中略〕。このような状況がオンライン書店アマゾンを育て、今日では世界最大の通販業者を産み出した背景だと思われる」というロジックについて、思いついた感想は3つ。

 ①「創業者」の要素を含めるかどうか。
 特定のビジネスの「興り」や「発展」について語るなら、創業者という要素も無視できないことは一応指摘しておきたい。もちろん、インターネットの普及の程度や利用可能な決済システム、運送面もとても重要だが、それを差し置いて特定の個人という要素で何でも語れてしまう危険性はある。
 そこで個人要素を禁欲的に排除して、その他の制度、経済、地理などの要素を扱って特定のビジネスについて語る場合はどうなるか。
 平凡だが、「市場に規制が少なかったから/投資が比較的さかんだから/ベンチャーが始めやすいから」というのがもっともらしいと思う。実際にアマゾンドットコムがそうだったかはともかく、正攻法はそうだと思う。ただし「●●人は進取の気質に溢れているから」という国民性論は、経営論議にありがちだが若干怪しいので否定したい。

 ②その他
 事業拡大を需要の面から考えようとするとしても、本書のように「書店の無い地域の人々がオンライン書店を大いに使う」・「書店のある都市に住む人々はオンライン書店をあまり使わない」という仮説を立てるのは、やや片面的だと思う。
 どちらかというと、「比較的所得の高い層ほど書籍・雑誌に(も)より多くの支出を行う」・「文化資本が豊かな(または高等教育を受けた)人々は、書籍への割合が大きい」・「そして都市部ほどそういった人々が多いので、オンライン書店への一定のニーズが存在していた」という仮説の方がよいと思う。後者の仮説に「書店の散らばり度」という地理的なデータは出てこない。
 「好景気だったのでオンライン書店も成長した」説については、私がアメリカの経済事情を覚えていないのでなんとも言えない。
 「既存の書店が徐々にオンライン書店に取って代わられた」説は、実際にありそうだが脇に置いておく(仮にそうだとすると2013年以前のアメリカは書店がもっと多かったことになるため、考えるのがややこしい)。

 ③あと、経営者側の心理にも著者と同様の理屈が発生した可能性もあるかもしれない(これは①に関係している)。
 事業をおこすとき、または拡大するときに、「全国の書店数と人口と国土面積」を活用するのは、当初から国内全体の覇権をとる野心がある経営者だけだろう。
 いや、ひょっとしたら経営者は血の気が多いので、そういうことがあり得るかもしれない。著者がアマゾン創業者の心理面を的確にトレースしていた可能性は否定できない。