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『欧化と国粋――明治新世代と日本のかたち』(Kenneth B. Pyle[著] 五十嵐暁郎[訳] 講談社学術文庫 2013//1986//1969)

原題:The New Generation in Meiji Japan: Problems of Cultural Identity, 1885-1895 (Stanford University Press, 1969)
著者:Kenneth B. Pyle (1936-)
監訳:松本三之介 (1926-)
訳者:五十嵐暁郎 (1946-)

欧化と国粋――明治新世代と日本のかたち (講談社学術文庫)

欧化と国粋――明治新世代と日本のかたち (講談社学術文庫)

【目次】
日本語版への序文(一九八五年四月十一日 シアトルにて ケネス・B・パイル) [003-006]
序文(一九六九年七月 K・B・P) [007-008]
目次 [009-011]
凡例 [012]
献辞 [014]

序章 015

第一章 新しい世代 022
 I 025
 II 036

第二章 明治青年と欧化主義 048
 I 051
 II 060
 III 067
 IV 076
 V 085

第三章 日本人のアイデンティティーをめぐる諸問題 091
 I 094
 II 099
 III 112
 IV 120

第四章 国民意識の苦悩 127
 I 134
 II 139
 III 145
 IV 152
 V 161

第五章 条約改正と民族自決 163
 I 164
 II 167
 III 171
 IV 176
 V 186

第六章 精神的保証を求めて 192
 I 195
 II 198
 III 210
 IV 220

第七章 国民的使命の探求 230
 I 230
 II 236
 III 248
 IV 253

第八章 戦争と自己発見 257
 I 259
 II 265
 III 268
 IV 274
 V 280
 VI 286
 VII 291

第九章 日本の歴史的苦境 294
 I 296
 II 307

原注 [317-347]
訳者あとがき(一九八六年四月 五十嵐暁郎) [348-355]
文庫版訳者あとがき(二〇一三年五月 五十嵐暁郎) [356-360]



【抜き書き】
・26-27頁

 伝統的な家の結びつきは、とりわけ家族の経済的相互依存によって保証されていた。家が生産の単位であったために、職業は個人にではなく家に属していた。その家が収入を得るためには、家族全員の協同の努力が必要とされたのである。息子にとって典型的でしかも最も安全な生き方は、家業を継ぐことであったし、家での訓練、家の資本、そして必要な場合の援助は、かれが生きていくためにきわめて重要であった。
 このように制約された経済の下では、家産をしっかりと手中に握っていた父親は、強力な制裁力の持ち主であった。「父親に反抗しても、家の職業以外で生計をたてる見込みはほとんどなかったので、息子は父親の権威を受け容れなければならないということには強力な理由」があったのである。
 家の不変の権威、強制的な象徴およびその結束力は、若者の独立心を挫けさせた。血族関係の法的、儀式的、イデオロギー的、経済的および情緒的な絆は、その結びつきを保証していたが、その結びつきが明確な青年の自覚または観念形態の発達を妨げることとなったのである。
 こうして、青年の職業上の役割と社会的な行動様式の方向づけが家の内部で習得される限り、世代間の継続性は保証されていたわけである。


・27-28頁。

 19世紀半ばの革命的な変化は、この継続性を断ち切った。それはさまざまなかたちをとったが、次の二点において最もはっきりしていた。第一に、職業選択にたいする封建的な制約の廃止によって、自分の職業を選択する自由が確立されたことである。第二に、新しい工業技術の導入によって、非常に多くの新しい職業集団が創り出されたことである。
 このようにして、明治時代初期の事件の最たるものとしては、家にまつわるさまざまな信条体系〔シンボル〕が有する力の漸次的な低下、家の活動範囲の縮小、および家の権威の弱体化などにつながる変化をあげることができる。社会が、その遺産を世代を超えて伝え、そうすることによって社会自体の継続性を保証する過程は、加速度的に打ち破られていった。家、共同体および教育の場をめぐる「連続的な世界」は破壊されたのである[7]。

[注7] 「七十年の回顧」『小崎全集』第三巻、1938年、25-26頁。