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『なぜ心はこんなに脆いのか――不安や抑うつの進化心理学』(Randolph M. Nesse[著] 加藤智子[訳] 草思社 2021//2019)

原題:Good Reasons for Bad Feelings: Insights from the Frontier of Evolutionary Psychiatry (New York; Dutton, 2019)
著者:Randolph M. Nesse
訳者:加藤 智子[かとう・ともこ] 英日翻訳。
装丁:三木 俊一[みき・しゅんいち](1973-) グラフィックデザイン。(有限会社文京図案室
件名:精神医学
件名:進化医学
NDLC:SC377
NDC:493.7 内科学
備考:原副題にEvolutionary Psychiatryとある。直訳では進化精神医学。


なぜ心はこんなに脆いのか | 草思社


【目次】
前書き(二〇一八年七月) [001-006]
凡例 [006]
目次 [007-010]


  i なぜ精神疾患はこれほど混乱を招くのか

1 新たな問い 013
  従軍精神科医
  何が精神疾患を引き起こすのか
  進化の過去に、未来を見る
  新たな問い


2 精神疾患は病気なのか 037
  救済策としての新しい診断マニュアル
  論争の勃発
  有機的複雑さの現実を受け入れる
  真に医学的なモデルの構築に向けて


3 なぜ私たちの心はこれほど脆いのか 056
  病気が自然選択によってなくならなかった六つの理由
  体と心が病気に対して脆弱である六つの理由
  病気と進化を考えるうえで、やってはいけないこと


  ii 感情を感じる理由

4 辛い気持ちの妥当な理由 痛みや苦しみは役に立つ81
  情動は私たちのためではなく、遺伝子のためにある
  学び直し
  情動とは何か?
  情動と文化
  情動は下劣なものなのか
  情動のスイッチ
  情動の調節
  情動の障害


5 不安と煙探知機 117
  クモとヘビから始まった、史上初の不安クリニック
  なぜ不安は存在するのか
  なぜ不安は過剰であることが多いのか?
  恐怖症
  パニック障害
  心的外傷後ストレス障害PTSD
  全般性不安障害
  私たちが変えるべき点


6 落ち込んだ気分と、諦める力 146
  欠けている問い
  用語の定義
  落ち込んだ気分はいかに役に立つか?
  気分は、状況の変化に対処するために移り変わる
  人生の三つの決断
  ラズベリー摘みと気分
  活動をやめるタイミング
  動物モデル
  落ち込んだ気分が役に立つ、その他の状況
  高揚した気分の役割とは
  コンピューターによるモデルの実験
  心理学者は知っていた
  悪い状況と、低いモチベーションと、嫌な気持ち
  これで解決?
  精神的な痛みを和らげる


7 妥当な理由のない辛い気持ち:気分調節器が壊れるとき 195
  ある学者のうつ病
  根本的な誤り
  なぜ精神医学はVSADの誤謬に囚われたままなのか
  気分の調節がうまくいかないパターンは何通り?
  調節システムの六パターンの異常
  なぜ気分の調節システムは壊れるのか
  現代の環境がもつ危険性
  自然選択にできないこと
  サイバネティックス
  双極性障害
  不良遺伝子のせい? 「有機的な複雑さ」という現実
  新たな知見を、どう役立てるか
  個人の特徴は、本当に関係ないのか


  iii 社会生活の喜びと危険 

8 個人をどう理解すべきか 243
  二つのアプローチ
  ストレスの研究
  進化と、個人の理解
  社会システムのレビュー
  ROSSのカテゴリー
  患者を知れ――それから、どうする?


9 罪悪感と悲嘆――善良さと愛情の代償 274
  群選択、再び
  協力行動のほぼ完全な説明
  欠けている何か
  コミットメント
  社会選択
  社会不安障害と自己評価
  悲嘆


10 汝自身を知れ――否、知るな! 315
  抑圧は現実のものである
  適応的無意識の心理学的研究
  なぜ私たちは、自分の動機や情動にアクセスできないのか
  現実を過敏に認識する
  利己的な動機の抑圧
  啓蒙思想


  iv コントロールできない行動と、深刻な障害 

11 不快なセックスが、遺伝子にとって都合がいい理由 345
  パートナーを求めること、求められること
  カップルの性欲のずれ
  性機能障害
  絶頂のずれ
  恋愛・結婚関係の悩み
  新たなセックス


12 食欲と、その他の原始的な欲望 376
  神経性やせ症と神経性過食症
  進化心理学摂食障害
  新たな問題
  やせた赤ん坊は太った大人になる
  キャンディー屋でタンタロスがスマホでポルノを見てツイートしている


13 いい気分と、その有害な理由 402
  古い問いと、新たな問い
  ハイジャック
  なぜ植物はドラッグをつくり出すのか
  古くからある問題が加速している
  離脱症状、「欲しがる」こと、「好む」こと
  なぜ一部の人は特に依存症になりやすいのか
  蔓延を食い止めるには


14 適応度の崖っぷちに引っかかる心 421
  打ち砕かれた希望
  進化遺伝学からみた精神疾患
  崖型の適応度地形
  特殊な壊れ方をする情報機器
  理解を深めるための参考図書 


epilog 進化精神医学――島ではなく、橋となる 449
  進化精神医学は、何の役に立つのか
  臨床の現場では
  なぜ人生はこれほど苦悩に満ちているのだろう?
  理解を深めるための参考図書 461


謝辞 [464-468]
参考文献 [7-58]
索引 [1-6]




【メモランダム】
・タイトルと内容について。
 (1) 原題に「Evolutionary Psychiatry」とある。直訳では進化精神医学。
 (2) 著者は既に進化医学の入門書(『病気はなぜ、あるのか――進化医学による新しい理解新曜社)を書いている。
 (3) 本書の内容は(私が判断する限りでは)、進化医学ないし進化精神医学である。そして、本文において進化心理学という用語が登場するのは、全460頁のうち二回のみ。また、進化精神医学は進化心理学に包含されるといったことを著者は書いていない。
 というわけで、日本語版のサブタイトルに「進化心理学」と掲げるのは羊頭狗肉ぎみ。草思社によるマーケティング上の工夫だと思われる。


・分類について
 国会図書館のほか大学付属図書館の書誌データベースでは、『病気はなぜ、あるのか』に対して「人類遺伝学/疾病--歴史/進化/進化医学」と件名を登録している。
 一方で『なぜ心はこんなに脆いのか』に対しては、(日本語版のサブタイトルに釣られてなのか)「進化心理学」という件名を登録している。
 また、2001-2019年までの間に図書館学において、「進化医学は進化心理学に含まれるようになった」という情報も、私が調べた範囲では出てこない。
 言うまでもなく、図書を分類し、その主題・件名を確定するさいは、タイトルを参考にすることはあるが、あくまで内容が優先されるはず。タイトルを鵜呑みにするのではない。


・誤植について
 巻末の「参考文献」には、軽微なミスがとても多い(第一刷で確認)。文献情報を引き写しする場合は注意。


 書籍巻頭の目次ページ(p. 3)にも、章題で誤植がある。上記目次では訂正しておいた。
誤「妥当な理由のない辛い気持ち:気分節器が壊れるとき」
正「妥当な理由のない辛い気持ち:気分調節器が壊れるとき」


 目次ページでは節題をスラッシュで区切って一列に並べている。ただしスラッシュを入れ忘れている箇所(p. 3)も最低一箇所あった。
 上記目次ではスラッシュを使用せずに改行とインデントを使用しているので、訂正箇所は無い。




【抜き書き】


・3章から

 病気への脆弱性を進化的に理解しようとすると、さまざまな誤謬が待ち構えている。まず〔……〕「病気を適応としてみる(Viewing Diseases As Adaptations,VDAA)」ことが、進化医学の分野でみられるもっとも一般的で、もっとも深刻な問題だ。〔……〕気をつけるべき点を繰り返しておきたい。病気そのものを進化的に説明することはできない。病気は、自然選択によって形づくられた適応ではないからだ。一部の病気に関連づけられる遺伝子や形質は、それぞれが利点と難点をもたらし、それが自然選択に影響を与える。だが、統合失調症や依存症、自閉症双極性障害といった病気そのものに有益な点があるのではないかという考えは、そもそもの前提から間違っている。正しい問いは、「なぜ自然選択は、私たちを病気に対して脆弱にするような形質を残したのか?」だ。