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『〈自己責任〉とは何か』(桜井哲夫 講談社現代新書 1998)

著者:桜井 哲夫[さくらい・てつお] (1949-) 近現代社会史、社会思想史、現代文化論。時宗僧侶。
カバー・イラスト:中山 尚子
NDC[講談社]:361 社会学
NDC[N. D. L.]:302.1 日本(地域研究)

丸山真男の「無責任の体系」──丸山は、東京裁判の被告たち(戦争犯罪人容疑)の発言を分析するなかで、「既成事実への屈服」と「権限への逃避」という2つの要素を見いだすのです。まず、「既成事実への屈服」です。すでに始まってしまったのだから仕方がない。個人的には反対だったが、なりゆきで始まってしまった以上従うほかない。こうした発言を分析して、丸山は、「現実」が作り出されるものだというより、「作り出されてしまったこと」、あるいは「どこからか起こってきたもの」とみなされていることに注意をうながします。現実的に行動するということは、過去に縛りつけられて行動するということであり、過去から流れてきた盲目的な力によって流されてしまうものとなる。(中略)次に「権限への逃避」です。「法規上の権限はありません」「法規上困難でした」という発言のなかに、職務権限に従って行動する「専門官僚」になりすませる官僚精神の存在が指摘されます。”──本書より

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000146864


【目次】
目次 [003-005]
はじめに――「自己責任」という妖怪 [006-014]


1. 「恋愛」の自己責任とは? 015
自由な恋愛という幻想
社会関係の中に生きる人間
「終身結婚制」とは
「家」という場
性器性愛の結婚観
自分の身体における自己責任
「家」の崩壊


2. 「責任」とは何だろうか 043
「重荷を押しつけられる」こと
約束に対する応答
「責任」という言葉が一般化した時期
無責任体質に関する奥村論文
丸山真男の「無責任の体系」
「タテの究極的な価値」を志向する組織
日本人論の危うさ


3. 「公」と「私」について 075
公を私すること
ヨーロッパ思想上の「公私」
親密な領域と公共空間の区分
私的領域と公的領域の区別の消滅
中国社会における公と私
日本における「公」の重層性
徂徠の「私」と「瘠我慢の説」
「私」は「公」に対峙しうるか


4. 「無責任の体系」は日本的現象なのか 105
ドイツ的個人主義
ドイツ観念論の日本への影響
全体への献身
行為全体の責任を負う者がいない状況
「赤信号みんなで渡れば」の病理


5. 日本は特殊な国なのか 123
近代の純粋主義
日本というシステムは理解不能なもの?
家族の形態と文化的差異


6. 戦後体制はどのように生まれたのか? 141
源泉徴収制度の起源
終身雇用制と生活給
経営と所有の分離
戦時計画経済システムを担った革新官僚
所得の平準化と社会の安定


7. 住専問題から日本の明日を考える 161
住専破綻の経緯
「抑圧移譲の原理」
住専問題における責任
日本のシステムの矛盾集約
市場がメカニズムであるという考え方
世界市場と国民国家
規制緩和と行政革命


結びにかえて 194


あとがき [205-207]
主要参考文献 [208-214]