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『「当事者」の時代』(佐々木俊尚 光文社新書 2012)

著者:佐々木 俊尚[ささき・としなお] ジャーナリスト。
NDC:304 社会科学 >> 評論集.講演集
NDC:361.453 マスコミュニケーション.マスメディア


「当事者」の時代 佐々木俊尚 | 光文社新書 | 光文社

 いつから日本人の言論は、弱者や被害者の気持ちを勝手に代弁する「マイノリティ憑依」に陥ってしまったのか。「当事者性」をキーワードに、現代の日本社会を読み解く。


【目次】
目次 [003-008]


プロローグ 三つの物語 009


第一章 夜回りと記者会見 ―― 二重の共同体 025
  警視庁の不思議な慣習
  「表情を読み取れなかったあなたが悪い」
  記者と刑事の禅問答
  「サツ官ならイエスです」という皮膚感覚
  最強の事件記者たち
  東京行きのチケットをつかむ競争
  記者と警察当局がつくる三つの共同体性
  いったい何が警察と記者を結びつけているのか
  「夜回り」と「記者会見」という二重性
  ウラの関係性はオモテでは表出されない
  皆が集まる広場は存在しない
  そもそも共同体とは何か
  ソーシャルメディアと〈夜回り共同体〉
  「はてな村」は何で結ばれているのか
  フィード型という新しいソーシャルメディア
  共同体は可視化されてこなかった
  複雑で濃密な二重の共同体
  戦後社会がつくり上げた情報と世論の交換システム
  視座はどこにあるのか


第二章 幻想の「市民」はどこからやってきたのか 142
  吉本隆明が論じた大衆の原像
  中間文化がつくりだしたもの
  新たな階層社会の出現
  市民運動とはいったい何だったのか
  市民運動の「金太郎アメ現象」の本質
  新聞記者は市民運動を嫌っている
  市民運動に対するアンビバレントな感情
  「無辜の庶民」と「プロ市民」の間に
  新聞記者が思い浮かべる「市民」像とは
  市民とメディアのねじくれた構造
  〈市民〉はいったい誰を代弁しているのか


第三章 一九七〇年夏のパラダイムシフト 197
  「加害者視点」が存在しなかった戦後日本
  「軍部が悪い」というロジック
  「異邦人」は戦後日本でどう扱われてきたのか
  片言の日本語をしゃべる在日二世たち
  不気味で怖い存在としての「在日」
  「ボクを異国人扱いするな」とアイヌ記者は叫んだ
  『ノルウェイの森』で緑が語ったこと
  一九六〇年代の女性が抱えた二つの葛藤
  東大闘争は何を目指したのか
  自己批判の理念とその困難さ
  「わたしたちの無関心の暗い空洞」
  小田実が切りひらいた世界とは
  「戦争加害者」という新しい視点の出現
  「日本民族の犯罪をひきうけなければ」
  中国人青年の自殺
  詩では自己否定を乗り越えられない
  「われらの内なる差別」
  一九七〇年七月七日の告発
  学生運動が見いだした新たな突破口


第四章 異邦人に憑依する 277
  マイノリティ論のオーバードースとは何か
  〈被害者=加害者〉論の光と影
  「辺境最深部に向って退却せよ!」
  辺境最深部から日本社会を見下ろす
  死刑囚・大森勝久が選んだ「地獄への旅」
  「反日亡国論」の狂気
  市民とは何だったのか
  メディアと〈マイノリティ憑依〉をつなぐ本多勝一
  本多・山口論争が浮かび上がらせた問題
  加害者と被害者の間にいるということ
  「私は殺される側に立つ」という論理
  〈マイノリティ憑依〉から見える気持ちのよい景色
  津村喬の苛立ちと反論
  「殺される側」に立つことによる無限の優位性


第五章 「穢れ」からの退避 339
  神は舞い降りてくる
  本殿も拝殿もない神社の隠された意味
  何もない空間の絶対性
  神はつねに外から来て外へと帰っていく
  汚れた人間社会、清浄な神の領域
  戦死した兵士たちをどう扱えばいいのか?


第六章 総中流社会を「憑依」が支えた 363
  アル・ジョルソンの人生
  黒人に扮して歌い踊る大衆文化の末裔として
  なぜアル・ジョルソンは忘れられたのか
  自動車王フォードに排斥されたユダヤ
  黒人への〈マイノリティ憑依〉
  総中流社会を「憑依」が支えた
  バブルを象徴する「飽食窮民」という記事
  「弱者に光を当て、われらの社会を逆照射せよ」
  幻想のマイノリティに落とし込まれるシステムエンジニアたち
  この記事は誰に送り届けられているのか
  圏域が同じでなければ共有されない
  エンターテインメントに傾斜する
  一九九〇年代後半の転換点
  エンターテインメントとメディア空間の結節点
  五五年体制と〈マイノリティ憑依〉をつなぐもの
  構造はついに明らかになった
  しかし道は途絶えている


終章 当事者の時代に 427
  新宿西口バス放火事件の夜
  彼はなぜ報道カメラマンになったのか
  なぜ彼女はバスから逃げ遅れたのか
  周囲の目は冷たかった
  事件は家族の生活を破壊しつくし「映画のセットみたいですよね」
  被災地の瓦礫は二重の層でできている
  なぜ河北新報の記事は人の心を打ったのか
  われわれは望んで当事者にはなれない
  他者に当事者であることを求めることはできない
  そこで私には何ができるのか


あとがき(二〇一二年一月二十一日 佐々木俊尚) [464-465]
参考文献 [466-468]