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『言語の興亡』(R. M. W. Dixon[著] 大角翠[訳] 岩波新書 2001//1997)

原題:The Rise and Fall of Languages. (Cambridge University Press)
著者:Robert M. W. Dixon(1939-) 言語学アボリジニの言語)
訳者:大角 翠[おおすみ・みどり](1947-) 言語学オセアニア言語)。
NDC:801.09 言語学


言語の興亡 - 岩波書店



【目次】
コロフォン [\]
謝辞 [i]
目次 [iii-vi]


はじめに 001
  系統樹モデルと言語圏モデル
  祖語の問題
  言語の変化の道筋
  断続平衡モデル仮説
  二〇〇〇年にわたる中断期
  系統樹モデルはどこまで適用できるか

  註 007


第1章 序説 009
  言語の二つの意味
  同一言語とみなすか
  アレウト語の例
  言語変化の理由
    (a) 言語接触
    (b) 言語の内在的な力

  註 019


第2章 ことばの伝播と言語圏 021
  系統的類似性と地域的類似性
  言語圏の形成
  言語圏としてのアマゾン・サハラ
  ニューギニア・オーストラリア

1.何が伝播するか 026
  どんな特徴が伝播するか
    (a) 音声とその体系
    (b) 語彙素
    (c) 文法範疇、構文タイプと応用法
    (d) 文法機能語

2.言語の接触で起こること 031
  接触による言語の伝播
    (a) 誰が誰から借用するのか?
    (b) 何が借用されるか
  各地の用例

  註 037


第3章 系統樹モデルはどこまで有効か 041
1.系統関係の基準 045
  祖語再建の手続き
  系統関係の3つの解釈
    (a) 類型的特徴によるもの
  「ニジェール - コンゴ語族」の場合
  南北アメリカの言語関係
    (b) 語彙統計学と言語年代学
    (c) 「ノストラ」巨大語族
  ロシアのノストラ論者
  系統関係の立証の難しさ
  言語類型は循環的に変化する
  言語学者の役割

2.祖語 061
  再建された祖語の限界
  英語は再建できるか

3.祖語の古さ 063
  言語変化の速度
  祖語の年代の不確かさ

4.下位分類 066
  共通の祖先を持つ下位グループ
  下位分類はどう立てるか
  英・独・仏語の系統関係

  註 071


第4章 言語はどのように変化するか 077
1.言語内部の変化 078
  言語内部は急激に変化する
  迅速な変化の例
  ゆっくりした変化の例

2.言語の分裂 083
  二つの言語の関係
    (a) 地理的な隔絶による言語分裂
  沖縄の例
    (b) 隣接地域内の言語分裂
  分裂の政治的動機づけ

3.言語の起源 088
  言語発達の二つの道筋
    (a) ゆっくりとした発達
    (b) 急激な発達
  「原始言語」は存在しなかった

  註 092


第5章 断続平衡モデルとは何か 095
  長い平衡期が存在した

1.平衡状態での言語 097
  平衡期の言語の特徴
  ゆっくりした変化
  二つの言語の接触
  二つの言語の再接触
  同意語と言語接触

2.中断期の始まり 103
  中断期の始まり
  中断の言語的要因
  中断の非言語的要因
   (1) 中断の引き金
    (a) 自然的要因
    (b) 物質的革新
    (c) 侵略的勢力
    (d) 文字とその他の通信形態
   (2) 地理的パラメーター
    (a) 未踏の土地への領土の拡張
    (b) 地理上の一地域に限定された中断
    (c) すでに先住民のいる土地への拡張

3.三つの移住例 116
  三つの移住
    (a) 太平洋地域
    (b) オーストラリア大陸
  言語の特徴
  地理的区分と言語
  オーストラリア言語の祖先
  五万年の平衡期
  オーストラリア言語の分類
  言語特性の推移
    (c) 南北アメリカ大陸
  アフリカの言語状況
  断続平衡期モデルの特徴

  註 130


第6章 再び祖語について 135
  語族の起源
  祖 - 言語圏の想定
  祖語同士の類似点
  言語の収束

  註 141


第7章 近代西欧文明と言語 143
    (a) 侵略
    (b) コミュニケーションの発達
  消滅に向かう言語
    (c) 言語の消滅
      (i) 人口の消滅
  南アメリカの場合
      (ii) 強制による言語の消滅
      (iii) 自主的な言語の切り替え
      (iv) 不本意な言語の切り替え
  言語の復活は可能か
  宣教師と言語
  異文化接触と宣教師

  註 158


第8章 今,言語学は何を優先すべきか 161
  言語の多様性の危機

1.なんでわざわざ記録するか 163
  とるに足らぬ言語はあるか?
  人間言語の多様性
  「確認性」のある言語
  二つのパラメーター
   (1) 統語機能の表示
    (a) 要素の順序によるもの
    (b) 従属部についた標示によるもの
    (c) 主要部についた標示によるもの
  標示タイプの切り替え
      (i) 主要部標示から従属部標示への変化
      (ii) 従属部標示から主要部標示への変化
   (2) 形容詞の分類
   (3) 主要部/従属部標準と形容詞のタイプとの相関性
   (4) 続いて起きる変化
      (i) 主要部標示から従属部標示への変化
      (ii) 従属部標示から主要部標示への変化

2.現代の神話 178
  「基礎言語理論」とは何か
  語根をわりだす
  言語学のあるべき姿
  形式文法の「理論」
  基礎言語理論の役割
  理論と記述をめぐる神話

3.言語学者は何をすべきか 187
  言語遺産を守る
  フィールドワークの意味
  帰納的な理論構築
  緊急に必要なこと

  註 190


第9章 まとめと展望 195
1.断続平衡モデル 196
  平衡期と中断期
  現在の状態

2.比較言語学について 198
  系統関係と地域的伝播
  比較言語学のなすべきこと
  分岐・収束の繰り返し

3.記述言語学について 201
  言語が死ぬということ
  言語記述の重要性

4.現代の言語 203
  優勢言語と非優勢言語
  生き残る言語とは
  これから何が可能か

  註 207


補論 比較方法の発見手順では見誤ってしまうもの 209
  比較方法
  音素は確定できるか
  発見手順と祖語の再建
  正確な祖語の再建はあるか


訳者あとがき(二〇〇一年六月 大角翠) [215-221]
参考文献 [1-13]





【抜き書き】
p.58

言語類型は循環的に変化する

  言語は時を経るにしたがい――とてもおおざっぱに言うと――類型的なタイプの間を、つまり孤立から膠着、それから屈折、また孤立に戻ってまた次へ、という具合に循環的に変化する傾向がある。もし孤立語タイプを時計の四時の位置に、膠着語タイプを八時、屈折語タイプを一二時の位置に置くと、いろいろな語族の最近の動向を言い当てることができる。インド - ヨーロッパ祖語は一二時くらいと思われるが、この語族の近代の語派は、異なる速度で孤立語の方向へ、あるものは一時または二時、他のものは三時に向かって動いた。初期の中国語は三時頃、古典中国語はかなり純粋な孤立語タイプで四時の位置にあるのに対し、近代中国諸語はゆるやかな膠着的構造になりつつあり、五時の方向へ動いている。ドラヴィダ祖語は孤立語寄りの膠着語で七時のあたり、近代ドラヴィダ諸語は九時の方向へ動いている。フィン - ウゴル祖語は九時あたりだったろうが、近代では一〇時か一一時に進んだ。長い文献記録を持つエジプト語について、ホッジ〈Hodge, carleton T. 1970. ‘The linguistic cycle’, Language Sciences, 13. 1-7. 〉は、それが三〇〇〇年くらいの年月をかけて屈折語からぐるっと回ってまた屈折語へとサイクルを巡った過程を記述している[※他の有益な議論にMatisoff, James A. 1976. ‘Lahu causative constructions: Case Hierarchies and the Morphology/Syntax Cycle in a Tibeto-Burman Perspective’, pp.413-442 of Syntax and Semantics6: The grammer of causative constructions, edited by Masayoshi Shibatani. Academic Press.や、DeLancey Scott 1985. ‘Lhasa Tibetan evidentials and the semantics of causation’, pp.65-72 of Proceedings of the Eleventh Annual Meeting of the Berkeley Linguistics Society.edited by Mary Niepokujet et al. がある。]。
 現在の孤立言語は屈折語の祖語を持っていて、その融合した形態素が音韻的かつ形態的変化を経た結果失われてしまったものであるのかもしれない。祖語がどんな形であったのか、その輪郭でさえも再建するのは絶対に不可能なことかもしれないのだ。

 小さい部族集団は普通、区分けされた人間関係や共同義務のような明瞭なシステムを伴った複雑な社会構造を持つ。対照的に、都市の住民の社会ネットワークは退化しており、単純といってよいようなものだ。


【メモランダム】
 ネットで見つけた書評をメモしておく。


・ごく短い紹介@『太平洋学会学会誌』(by中島洋)。
言語の興亡, R・M・W・ディクソン著, 大角翠訳, 岩波新書737, 七八〇円+税 - 国立国会図書館デジタルコレクション


生物学者の辛口な書評。
http://cse.naro.affrc.go.jp/minaka/files/RiseFallLanguages.html


言語学者の書評(by Tae-Young Kim)。
(PDF) [Book Review] David Crystal (2003). English as a global language. (2nd ed. First ed., 1997), Cambridge: Cambridge University Press.


言語学者の書評(by Brian D Joseph)。
https://www.researchgate.net/publication/231820113_R_M_W_Dixon_The_rise_and_fall_of_languages_Cambridge_Cambridge_University_Press_1997_Pp_vi169


言語学者の書評(by Robert L. Miller)
The Rise and Fall of Languages. R. M. W. Dixon | International Journal of American Linguistics: Vol 65, No 3