著者:寺沢 拓敬[てらさわ・たくのり] (1982-) 言語社会学、応用言語学、英語教育史。
NDC:375.8932 英語教育
件名:英語教育-小学校
【目次】
はじめに [i-v]
目次 [vii-x]
序章 001
タテとヨコの制約条件
本書の特徴
政策の批判的読解と政策過程の分析
時代区分の説明
学習指導要領とは
政策過程の階層構造
小学校英語の政策の変遷
本書の構成
第I部 小学校英語、これまでの道のり 013
第1章 【第I期】小学校英語前史 014
1 戦前から戦後へ 014
戦前の小学校英語
「英語の必要性などわずか。小学校で英語は不要」
戦前の私立小学校
課外活動としての英会話クラブ
自治体発の国際理解活動
2 英語教育の早期化と臨時教育審議会 024
3 学習と年齢効果の研究 026
年齢と言語習得をめぐる科学的研究
年齢効果研究と小学校英語論の関係は?
学会の組織化
児童英語における科学的言説
第2章 【第II期】「実験」の時代 034
1 「国際化時代」と英語教育の議論 034
画一化の象徴とされた「公立小学校では英語を指導しない」
研究開発学校の設置
小学校英語に関する審議の始まり
2 研究開発学校では何が学ばれていたのか 038
最初期の研究開発学校
その後の拡大方向
3 小学校英語推進派の理想主義 041
学会アピール「小学校から英語を始めよ」
第3章 【第III期】模索の時代――多様性とカオスの小学校英語 045
1 小学校に英語がやってきた 045
「総合学習での英語活動」という答申
早期英語への期待感、教科化への警戒感
2 総合学習での英語活動 050
伝統的語学とは異質の「外国語会話等」
国際理解教育のため
音声・国際理解・体験の重視
学級担任が指導の中心
食い違う指導者像
国際理解活動らしさとは
3 教育特区での小学校英語 060
英語特区
英語特区の取り組み
英語特区のプロフィール
先進的プログラムの成果は?
多様性とカオスの小学校英語
4 小学校英語論争の勃発 067
一枚岩ではない賛成派・反対派
地道な研究の蓄積
第4章 【第IV期】「外国語活動」の誕生 073
1 「グローバル化時代の人材育成」と英語教育 074
経団連提言「グローバル化時代の人材育成について」
英語指導方法等改善の推進に関する懇談会
「「英語が使える日本人」の育成のための行動計画」
2 「必修だが教科でない」 079
中教審での審議経過
審議前半――必修化に異議なし
審議後半――文科省のイニシアチブ
3 特殊日本的な「外国語活動」 085
外国語活動とは何か?
なせ必修化を決めたのか?
なぜ英語力育成を目標にしなかったのか?
心理カウンセリングのような「コミュニケーションへの態度」育成論
なぜ担任が教えるのか?
特殊日本的な外国語活動
妥協の産物
4 英語力は向上するのか、国語力がダメになるのか 096
小学校英語をめぐる賛否
放談型の論争
英語ができる日本人は増える? 増えない?
経験者・非経験者の比較の信頼性
実証研究か過剰な早期英語熱を冷ました
国語力がダメになるのか?
論争を不毛にした「データの不足」
第5章 【第V期】教科化・早期化に向けて 109
1 トップダウン型の教育改革へ 109
文科省主導から官邸主導への転換
二〇一二年までの政策動向
民主党政権下の動き
中教審の沈黙と急展開
2 第二次安倍政権以後の改革――変質する政策審議 114
閣議決定の謎
教育再生実行会議・産業競争力会議・自民党
財界人の存在感
「英語教育の在り方に関する有識者会議」
3 教科化既定路線の中の賛否 127
深まらない議論
4 世論の期待と不安 130
圧倒的な世論の支持
保護者の支持
小学校への期待を高めるものは何か?
世論は政策を動かしたのか?
習っている子どもは常に一割台
学ばせる理由は社会階層で異なる
第II部 小学校英語の展望
第6章 現在までの改革の批判的検討 142
1 小学校英語三〇年の歴史を振り返る 142
国際理解教育としてのスタート
多様化? 画一化?
官邸主導による教科化
守旧派と改革派
日本の小学校英語の特徴
歴史的に水路づけられた特殊性
小学校英語の経路依存性
政策の総合調整は不可欠
官邸主導の政治的背景
財界の影響力
2 根拠なき計画・実行 158
学習指導要領解説を読みこむ
教科化の根拠
「成果」はあったのか?
教育の成果を検証する難しさ
英語に親しむようになったのか
調査そのものがない
「課題」は本当に課題なのか
第7章 どんな効果があったのか 170
1 教育政策を支えるデータとは 170
政策と研究のミスマッチ
「エビデンス」の基本概念
内的妥当性と外的妥当性
2 小学校英語の効果、これまでの研究 174
政策エビデンスの質を左右する五つの基準
先行研究の格づけ
3 小学校で英語を学んだ子どもの英語力・態度は向上したのか? 180
調査データ・分析方法
小学校英語の経験・非経験(原因変数)
結果
微弱な効果
早期化に対する反証
4 根拠に基づいた議論を 188
第8章 グローバル化と小学校英語 190
1 「グローバル化だから小学校英語」でよいのか 190
グローバル化という呪文
英語使用は増えているのか
英語使用減少の理由
2 英語ニーズのこれから 195
短期的な予測
訪日外国人の動向
貿易の動向
中長期的な見通し
現状認識と対応策のミスマッチ
グローバル化への対応にとって小学校英語の優先順位は?
第9章 教員の負担とさまざまな制約 204
1 誰が教えるのか 204
学級担任の負担
研修の有効性は?
自己研修・授業準備の時間がとれない多忙な状況
多忙化
2 制度、予算の制約、世論のプレッシャー 211
学級編制をめぐる制約
厳しい財政事情
教育予算増額を是認しない世論
世論の楽観
3 外部人材活用という「第三の道」 219
外部人材への依存
空洞化する「担任が教えることこそが良い」論
「教員の負担が大きい」と「児童ファースト」の間〔はざま〕で
おわりに [227-235]
小学校英語のジレンマ
今後の選択肢
すぐにでも改善すべき点
最後に
初出 [236]
年表 [4-6]
参考文献 [1-3]
【図・表一覧】
図序-1 政策の階層性 008
図序-2 学習指導要領に基づく時代区分 010
表1-1 1990年時点での公立小学校における国際理解プログラムの状況 023
表2-1 研究開発テーマのキーワード上位10位(1992〜2000年度) 040
表3-1 総合学習の内容(2005年) 052
表3-2 英語活動実践事例 055
図4-1 各論点の審議経過(2004〜2008年) 080
図4-2 外国語活動の目標 091
表4-1 賛成論・反対論 097-098
表5-1 2012年までの政策動向 111
表5-2 第二期教育振興基本計画に関する中教審答申と閣議決定の相違 115-116
図5-1 『We Can!』と『We Can! 2』 126
表5-3 世論調査の結果 131
表5-4 小学校英語に賛成した保護者の割合 133
図5-2 必修化支持の規定要因 135
表5-5 保護者が小学校英語に望むこと 136
表5-6 習い事として英語を学ぶ小学生 138
図5-3 子どもに英語を習わせている理由 139
図6-1 各国の英語教育開始学年 149
表6-1 財界の影響力 156
図6-2 早期化・教科化の根拠、その論理構成 160
図7-1 医療におけるエビデンス階層 173
表7-1 先行研究の政策的エビデンスの質 179
図7-2 小学校英語経験の効果 185
図8-1 英語使用率の変化,2006〜2010 192
図8-2 産業別の英語使用率の変化,2006〜2010 194
図9-1 小学校英語および教育予算増額への態度 217
表9-1 英語指導の補助者 220
表終-1 あり得るべき選択肢 230
【関連記事】
・ブックガイド(Yhoo! ニュース 2020.02.20)
小学校英語教育論ブックガイド(寺沢拓敬) - エキスパート - Yahoo!ニュース
・著者のブログ
小学校英語論争を整理した論文が出ました - にこしき
『「日本人と英語」の社会学――なぜ英語教育論は誤解だらけなのか』(寺沢拓敬 研究社 2015)
『英語教育、迫り来る破綻』(大津由紀雄ほか ひつじ書房 2013)
『新版 グローバリゼーション』(Manfred B. Steger 櫻井純理,高嶋正晴,櫻井公人 訳 岩波書店 2010//2009)
『欲ばり過ぎるニッポンの教育』(苅谷剛彦, 増田ユリヤ 講談社現代新書 2006)
【関連文献】
私がチェックした本(これからチェックする本)のリスト。
ただ、(弊ブログが内容確認済みながら未だ記事にしていない書籍なので)いずれも、出版社サイトへのリンクをはっている。
・『世界と日本の小学校の英語教育――早期外国語教育は必要か』(西山教行,大木充 編著 明石書店 2015)
・『「なんで英語やるの?」の戦後史』(寺沢拓敬 研究社 2014)