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『日本の「非正規移民」――「不法性」はいかにつくられ、維持されるか』(加藤丈太郎 明石書店 2022)

著者:加藤 丈太郎[かとう・じょうたろう](1981-) 移民研究、国際労働移動、国際社会学、多文化共生論。
装丁:明石書店デザイン室[あかししょてん・でざいんしつ] 
カバー写真:ぱくたそ(※写真素材ウェブサイト)  
シリーズ:早稲田大学アジア太平洋研究センター研究叢書
件名:外国人 (日本在留)
件名:出入国管理
NDLC:DC812 
NDC:334.41 人口.土地.資源
備考:博士論文を加筆・修正したもの。


日本の「非正規移民」 - 株式会社 明石書店


【目次】
はじめに 元相談員として抱いた問いを出発点に [003-004]
目次 [005-009]


序章 非正規移民の研究に至る背景
第1節 日本における非正規移民数の変化 011
第2節 日本政府と法務省出入国在留管理庁における外国人労働者政策の変遷 015
第3節 非正規移民の定義・表記 020
  1.「非正規」という語を用いる理由
  2.「移民」という語を用いる理由
第4節 研究における問い 022
  1.先行研究において評価すべき点
  2.1つ目の「研究における問い」への過程
  3.2つ目の「研究における問い」への過程
第5節 調査方法、調査対象者、分析・記述方法 025
  1.調査方法
    (1) インタビュー
    (2) 参与観察
    (3) 調査における筆者の位置づけ
  2.調査対象者
    (1) 非正規移民 インタビュー対象者
    (2) (元)雇用主 インタビュー対象者
      1) 那須氏(塗装業)
      2) 村木氏(印刷製本j業)
      3) 森本氏(農業)
      4) 佐藤氏(金物販売業)
      5) 原氏(小売業(コンビニエンスストア経営))
      6) 柳澤氏(造園土木業)
  3.分析・記述方法
第6節 本書の構成 035


第1章 非正規移民をめぐる歴史と先行研究の整理
第1節 日本における非正規移民をめぐる歴史と先行研究の整理 037
  1.アジア太平洋戦争後から1980年代――朝鮮人の国籍の剥奪と国外への追放
  2.1980年代後半から90年代――非正規移民の増大と在留特別許可の範囲の拡大
    (1) 非正規移民の増大
    (2) 在留特別許可の範囲の拡大
  3.2000年代――非正規移民数の減少に向けた取り組みの強化
  4.2010年代以降――非正規移民の排除策強化、非正規移民数の増加・難民認定申請者数の激増
    (1) 非正規移民の排除策強化
    (2) 非正規移民の増大・難民認定申請者の激増
第2節 ベトナム人技能実習生・留学生に関する先行研究 052
第3節 非正規移民における「不法性」 055
  1.「不法性」の生産
    (1) 法自体によって発生する「不法性」
    (2) 労働需要によって発生する「不法性」
  2.「不法性」概念の拡大
第4節 非正規移民による「不法性」への反応 061
第5節 移住産業 064
第6節 移住インフラ 065
第7節 おわりに 065


第2章 移民はなぜ「不法」になるのか 067
第1節 移民の来日にあたっての事情 068
  1.経済的合理性
  2.本国の政治状況等
  3.日本に関する情報の事前入手
第2節 移民が「不法」になるまでの類型 072
  1.在留期限の超過
    (1) 短期滞在からの在留期限の超過
      ● 短期滞在とは
      ● 短期滞在から在留資格変更しようとした例外
      ● 短期滞在で来日してからの難民認定申請
      ● 小括
    (2) 技能実習からの在留期限超過
      ● 技能実習の起源
      ● 技能実習からの「失踪」
      ● 技能実習先を離れ、難民認定申請をするものの不認定により在留期限超過へ
      ● 技能実習を終了後、在留期限を超過して滞在
      ● 小括
    (3) 留学からの在留超過
      ● 留学生数増加の背景
      ● 専門学校に進学できずに在留資格「留学」の期限を超過
      ● 交際相手(後の妻)の妊娠から「不法」となることを選んだ元留学生男性
      ● 小括
  2.在留資格変更の失敗を経ての超過滞在
    (1) 日本人・永住者と離婚後、定住者への在留資格変更が認められずに在留期限を超過
      ● 定住者とは
      ● 婚姻期間が3年以上でも定住者とは認められていない
      ● 子どもはいても親権がないために定住者と認められない
      ● 定住者以外の道はないか
      ● 小括
    (2) 永住者と結婚したが、永住者の配偶者等への変更を認められずに超過滞在
  3.非正規入国 092
    (1) 偽装旅券を使用して短期滞在で入国後、在留期限の超過
      ● 真正な旅券での来日が難しいために偽装旅券を使用
      ● 上陸拒否期間以前に来日するために、偽装旅券を使用
      ● 小括
    (2) 寄港地上陸からの超過滞在
    (3) 密航
    (4) 上陸からの非正規滞在
    (5) 偽装旅券を使用して短期滞在で入国後、日本人と結婚し在留特別許可、離婚後、定住者への在留資格変更が認められずに在留期限の超過
    (6) 「偽装」結婚による在留資格取消
      ● 過去に真正な結婚で来日後、離婚、その後、直近の再婚が偽装結婚
      ● 二重の結婚が認められていないが故に偽名で結婚(形式上の「偽装」結婚)
      ● 小括
    (7) 偽装旅券を使用して留学で入国後、「人文知識・国際業務」に在留資格変更をするも、在留資格変更ができずに在留期限を超過
  4.3つの類型のまとめ 103
第3節 移民を「不法」にさせる法、制度、移住産業 104
  1.法に起因する「不法」
    (1) 法の変化
    (2) 法の運用の不透明さ
    (3) 法の中での運用の変化
  2.制度に起因する「不法」
    (1) 留学制度
    (2) 技能実習制度
  3.移住産業に起因する「不法」
第4節 おわりに 119


第3章 何が非正規移民の「不法性」を維持させるのか
第1節 3名の非正規移民の事例から 122
  1.東京の飲食店で働き続けているベトナム人技能実習生女性アン
  2.ダウン症を有する日本国籍の連れ子を養育するインド人男性スキビル
  3.25年の滞在後、強制送還されたフィリピン人男性アルマンド
第2節 移住インフラを用いる理由 132
第3節 非正規移民の「不法性」を維持させる7つの要素 134
  1.経済的要素 134
    (1) 産業の下支え
    (2) 搾取できる労働者
    (3) 雇用の調整弁
    (4) 技能実習生よりも技術継承の可能性がある
    (5) 不法就労助長罪を気にしない雇用主
  2.商業的要素 140
  3.技術的要素 146
  4.人道的要素 148
    (1) NGO
    (2) 弁護士
    (3) 自助活動
    (4) 宗教団体
    (5) 雇用主の人道的要素への転換
  5.社会的要素 156
    (1) 友人・同国人のつてで仕事を得る
    (2) 日本人との社会関係
      ● 家族ぐるみの交流
      ● 日常生活の支援
      ● 地域住民とも交流
    (3) 住居
    (4) 地域で頼られる存在に
    (5) 拠り所としての宗教・収容を経ての改宗
    (6) 社会関係から遠ざかる行動パターンも
    (7) 社会関係の負の側面
    (8) 社会的要素まとめ
  6.家族的要素 168
  7.制度的要素 171
    (1) 在留特別許可における運用が不透明
      ● 厳しくなる審査
      ● 子がいるか否か
      ● 「在留特別許可」を超えて
    (2) 人道配慮による在留許可の基準が不明瞭な難民認定制度
    (3) 制度的要素まとめ

第4節 7つの要素の相互作用 184
  1.アン(元技能実習生、ベトナム出身、女性、来日5年)
  2.スキビル(日本国籍の子を養育、インド出身、男性、来日11年)
  3.アルマンド(長期間の在留、フィリピン出身、男性、来日25年)

第5節 おわりに 192


第4章 日本の「非正規移民」――「不法性」はいかにつくられ、維持されるか
第1節 国家による移民への意図的な「不法性」の生産 195
  1.難民認定申請者から「難民偽装」を通じての「不法性」の生産
  2.技能実習生から「失踪」者を通じての「不法性」の生産
  3.国家による移民への意図的な「不法性」の生産における歴史的通時性
第2節 社会関係の不在と移住産業の介入の余地 201
第3節 「不法性」を維持させるインフラ 201
第4節 非正規移民の主体性 204
第5節 非正規移民と日本社会のつながり 205
第6節 おわりに 206


終章 まとめにかえて
第1節 序章から第4章の振り返り 207
第2節 本書の特徴 209
第3節 学術的貢献 210
  1.非正規移民研究から移民全般における課題を提示
  2.アジアから非正規移民に関する新しい概念を提示
第4節 本書の限界 211
第5節 今後の課題 213


補論 政策分析・政策提言
第1節 特定技能制度が非正規移民に与える影響 217
第2節 難民条約の履行 219
第3節 アムネスティの次善策としての在留特別許可に係るガイドラインの改訂 220


おわりに お世話になった皆さまへ(2022年3月 加藤丈太郎) [225-227]
参考資料 [229-239]
  研究倫理・調査法のインタビュー
  在留特別許可に係るガイドライン(抜粋)
  非正規移民への質問内容(半構造化インタビュー)
参考文献 [240-253]
  〈日本語〉
  〈English〉
索引 [255-262]






【メモランダム】
・シリーズは現在三冊。版元はそれぞれ異なる。
東南アジアのスポーツ・ナショナリズム――SEAP GAMES/SEA GAMES 1959-2019年』(早瀬晋三 めこん 2020)
すれ違う歴史認識――戦争で歪められた歴史を糺す試み』(早瀬晋三 人文書院 2022)
『日本の「非正規移民」――「不法性」はいかにつくられ、維持されるか』(加藤丈太郎 明石書店 2022)