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『学術書の編集者』(橘宗吾 慶應義塾大学出版会 2016)

著者:橘 宗吾[たちばな・そうご](1963-) 編集者。
件名:編集
件名:学術
NDC:021.4 著作.編集 >> 編集.編纂


慶應義塾大学出版会 | 学術書の編集者 | 橘宗吾

 名古屋大学出版会の編集長として、数々の記念碑的な企画を世に送り出し、日本の学術書出版を牽引する著者が、編集・本造りの実際について縦横に語る、現役編集者必携、志望者必読のしなやかな鋼の如き編集論。


【目次】
はじめに [iii-vi]
目次 [vii-xi]


序章 学術書とは何か 001
1 悲観せず、楽観せず――出版をめぐる状況から
2 情報か、知識か――学術書をめぐる現状から


第1章 編集とは何か――挑発 = 媒介と専門知の協同化 023
はじめに 
1 編集の役割(1)――たて・とり・つくり
2 編集の役割(2)――読むこと、そして挑発 = 媒介
3 専門知の媒介 = 協同化の必要性
4 専門知と徳科学論
5 専門知の協同化の類型
6 共通の知的基盤と「新しい教養」
7 知識のメディエーションと「知識人の機能」
8 大学出版・学術書出版の役割
おわりに


第2章 企画とは何か―― 一つのケーススタディから 053
はじめに1 ――話すのが苦手で著者に会うのが怖い編集者として 
はじめに2 ――ほんとうのはじめに 
1 本の紹介 ―― 『漢文脈の近代』 という研究書
2 出版企画について ―― 一般的な但し書き 
3 長い長い因縁話(1)――「アジアからの衝撃」 
4 長い長い因縁話(2)――文学への転位
5 長い長い因縁話(3)――著者を求めて
6 長い長い因縁話(4)――論文「小説の冒険」
7 ようやく著者に会う
8 目次案――論文集をつくる
9 原稿の編集過程――時間との戦い
10 そのほか三つほど――装丁・タイトル・文章
おわりに――出版企画の点と線


第3章 審査とは何か――企画・原稿の「審査」をどう考えるか 083
はじめに
1 学術書の信頼性と「審査」
  (1) 学術書の信頼性
  (2) ピアレヴューと査読
2 ピアレヴューの限界と学術書編集者の役割
  (1) ピアレヴューの問題点
  (2) 学術書編集者の役割と「審査」のモデル
3 日本の学術書における「審査」をどのように考えるか
  (1) 「厳密な」査読制の不在
  (2) 専門家の意見を聴くための工夫
4 さらに具体的な問題をいくつか
  (1) 組織管理の技法としての査読制?
  (2) 大学との関係で
おわりに


第4章 助成とは何か――出版助成の効用と心得 119
はじめに
1 出版助成の社会的効用――好循環による公共的価値の実現のために
2 「採算」 にとっての出版助成の効用
  (1) 原価に対する効果
  (2) 投下資金の早期回収
  (3) リスクの軽減
3 「採算」以外の点での出版助成の効用
  (1) 出版計画における効用
  (2) 企画・原稿の洗練
  (3) 著者どの関係
4 新たな出版企画に積極的・能動的に挑戦するための手段として
5 出版助成のデメリット
  (1) 過度の依存
  (2) 著者との関係など
  (3) 不採択時の対応のむずかしさ
6 インターネット上での研究成果の公開との関係


第5章 地方とは何か――学術書の「地産地消」? 141
はじめに
1 本の「地産地消」?
2 普遍的な知の「地方」性
3 「めんどくさい」知とその普及
おわりに


付録 インタビュー「学問のおもしろさを読者へ」 153
1 企画が生まれるまで
2 橘流 「編集活動」 とは
3 大学出版部の編集活動について


註 [167-194]
あとがき(二〇一六年四月三日 著者識) [195-198]
初出一覧 [6-7]
参考文献 [1-5]




【抜き書き】
・初出一覧(全体的に加筆してあるとのこと)。

第1章
「大学出版の編集と学問のヴァーチュー」 第5回友愛公共フォーラム
「学びと学問のイノベーション」 (報告、2011年3月6日、於青山学院女子短期大学)
「挑発=媒介としての編集 学術書を生みだす力を考える」 『大学出版』88号 (2011年秋)
「大学出版の編集と学術書の信頼性」 日本出版学会秋季大会 (特別講演、2011年11月5日 於中京大学名古屋キャンパス)

第2章
齋藤希史著『漢文脈の近代――清末=明治の文学圏』の出版企画を中心に」 大学出版部協会夏季研修会 編集部会 営業部会協働主催公開研修会 「拡大編集企画ケーススタディ 編集 本作りのケーススタディ」 (報告、2005年8月26日 於福岡)

第3章
「大学出版の編集と学術書の信頼性」 日本出版学会秋季大会 (特別講演、2011年11月5日 於中京大学名古屋キャンパス)
「企画・原稿の「審査」をどう考えるか」 大学出版部協会編集部会秋季研修会 (報告、 2012年11月22日 於霞ヶ関ビル)

第4章
「出版助成――その効用と心得」、 大学出版部協会編集部会編『本の作り方――大学出版部の編集技術』 (大学出版部協会、2012年)

第5章
「日本の大学出版部にとって「地方」とは何か 沖縄の出版社との比較で」 大学出版部協会編集部会春季研修会 (報告、2014年4月17日、於那覇)
学術書の「地産地消」」 『リア』 32号 (2014年8月)
学術書の「地産地消」?――知の地方性と普遍性をめぐって」 『大学出版』104号 (2015年秋)

付録
「インタビュー 学問の面白さを読者へ――名古屋大学出版会・橘宗吾氏に聞く」(聞き手:東京大学出版会山田秀樹氏) 『大学出版』96号 (2013年秋)


【関連記事】
・本づくりの現場へのフィールドワーク。
『本を生み出す力――学術出版の組織アイデンティティ』(佐藤郁哉, 芳賀学, 山田真茂留 新曜社 2011)


・主題はあくまで「問題のある本が続々と生まれてしまったこと」についてだが、一般書において本の生産と流通について、編集者・取次・書店を取り上げたところが珍しい。
『私は本屋が好きでした――あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏』(永江朗 太郎次郎社エディタス 2019)