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『日本十進分類法の成立と展開――日本の「標準」への道程 1928-1949』(藤倉恵一 樹村房 2018)

著者:藤倉 恵一[ふじくら・けいいち] (1973-) 司書。
カバーデザイン:菊地 博徳(BERTH Office)
カバー・口絵撮影:眞島 和隆

http://www.jusonbo.co.jp/books/211_index_detail.php


※旧字あり。
※下記目次内にあるスミ付き括弧【 】の中の語句は、個人的なメモ。


【目次】
口絵
はじめに [i-vi]
  NDC の時代区分について
  調査対象について
  人名,用語,文字について
  参考・関連文献と引用について
  本書の構成
目次 [vii-viii]


  第I部 日本十進分類法の成立と展開 

第1章 日本十進分類法の成立前夜 003
1. 近代図書分類法の登場 003
  図書分類前史(中世まで)
  学問の体系化
  公共図書館の登場と書架分類
  十進分類法の誕生
  デューイ十進分類法(DDC
  その後のDDC
  十進分類法後の図書分類法
  件名分類法(SC【Subject Classification】)
  展開分類法(EC【Expansive Classification】)
  国際十進分類法(UDC)
  米国議会図書館分類法(LCC
  分析合成型分類法(ファセット分類法)
  世界図書分類法
2. わが国の分類法と十進分類法の伝来 022
  東京書籍館帝国図書館の分類とその源流
  十進分類法の伝来
3. 十進的分類法の普及と標準分類法の待望 033
  山口縣立圖書館圖書分類表
  臺灣總督府圖書館和漢圖書分類表
  和漢圖書分類表並ニ索引
  大阪府立圖書館分類表
  標準分類法への待望論とその否定
  公共図書館以外での標準分類法への期待
  標準分類法の使用例
  1930年当時の分類
  「似非」十進分類法への批判
4. 森清間宮不二雄青年圖書館員聯盟 054
  間宮不二雄と分類法
  間宮商店
  間宮文庫
  青年図書館員連盟
  森清間宮不二雄

コラム1 間宮不二雄の人となり 064


第2章 日本十進分類法の誕生 065
1. 和洋圖書共用十進分類表案(1928年) 065
  記事前半(序文,分類表)
  記事後半(索引)
  原案の体系・排列順
  原案からNDCへ
2. 日本十進分類法 第1版 (1929年) 071
  第1版について
  第1版の構成
  第1版への補訂
3. NDC と同時期の一般分類法 074
  乙部泉三郎『日本書分類表』
  毛利宮彦『簡明十進分類法』
4. 鈴木賢祐の支援:標準分類法をめぐる論争 080
  鈴木による比較検証
  毛利宮彦の反論
  仙田正雄の論考
  鈴木の再反論
  毛利の再反論
  和田万吉の論考
5. 加藤宗厚の支援:NDC の実用普及へ 087
  図書館講習所での使用
  「分類規定試案」と標準分類法論争
  選定図書目録での使用

コラム2 間宮商店のあった場所 096


第3章 日本十進分類法の発展と批評 097
1. NDCへの批評と展開 097
  フェローズによる抗議
  芸艸會〔うんそうかい〕【文部省図書館員教習所同窓会組織】による批判
    高田定吉「『日本十進分類法』を評す」
    彌吉光長日本十進分類法を打診す」
    波多野賢一日本十進分類法を批判す」
    と・たまゐ【玉井藤吉】「日本十進分類法の考察」
    高橋生「日本十進分類法私見
  芸艸會への反論
  非論理的な批難
  NDCの普及と展開
2.日本十進分類法 訂正増補第2版(1931年) 110
  第2版の構成(概要)
  第2版刊行後の動き
3.日本十進分類法 訂正増補第3版(1935年) 112
  第3版の構成(概要)
  第3版刊行後の動き
4.日本十進分類法 訂正増補第4版(1939年) 114
  第4版の構成(概要)
  第4版刊行後の動き
5.日本十進分類法 訂正増補第5版(1942年) 115
  第5版の構成(概要)
  第5版刊行後の動き
コラム3 衛藤利夫へのリスペクト 119
コラム4 NDCのユーザー登録 120


第4章 日本十進分類法の展開 121
1. 日本の「標準」への道程 121
  戦時中の動き
  間宮商店炎上,そして終戦
  終戦後の図書館界GHQ
  『学校図書館の手引』とNDC

2. 分類委員会の誕生,国立国会図書館とNDC 131
  国立国会図書館の分類
  分類委員会とダウンズ勧告

3. 日本十進分類法 抄録第6版 (1947年) 138
  戸澤信義日本図書館研究会,NDC
  抄録第6版の刊行
  第6版刊行後の動き

4. 日本十進分類法 縮刷第7版(1947年) 141
  第7版の構成
  第7版刊行の前後

5. 日本十進分類法 縮刷第8版(1949年) 143
  第8版の内容

6. 日本十進分類法 新訂6版(1950年)以降のNDC 144
  分類・目録委員会第1回会合
  第2回分類委員会
  第3回分類(目録)委員会
  第4回分類委員会
  第5回分類委員会
  第6回分類委員会
  第7回分類委員会
  毛利宮彦の反論
  日本図書館協会によるNDC改訂
  「新訂6版」の誕生
  その後の改訂と委員会組織

コラム5 新訂6版について 155
コラム6 NDCの装丁をめぐるあれこれ 156


  第II部 日本十進分類法の変遷 

第5章 日本十進分類法の序文類の変遷 159
1. 巻頭言および謝辞 159
  和洋圖書共用十進分類表案(1928年) 
  第1版(1929年) 
  訂正増補第2版(1931年) 
  訂正増補第3版(1935年) 
  訂正増補第4版(1939年) 
  訂正増補第5版(1942年) 
  抄録第6版(1947年)
  縮刷第7版(1947年)
  縮刷第8版(1949年)

2. 本書の歴史 170
  各版変更点
  抄録第6版での記述

3. 凡例 172
  第1版 172
  第2版 173
  第3版以降の凡例 174

4. 導言 174
  第1版 174
  第2版 181
  第3版 184
  第4版 186
  第5版 189


第6章 日本十進分類法の分類表の変遷 191
1. 第1次区分表 191
  原案 191
  第1版 192
  第2版 193
  第3版 195
  第4版 195
  第5版 195
[表6-1] 192
[表6-2] 193
[表6-3] 193
[表6-4] 194
[表6-5] 194
[表6-6] 194

2. 第2次区分表 195
[表6-7] 196
  原案 197
  第1版 197
  第2版 197
  第3版 197
  第4版 197
  第5版 198
[表6-8] 199
[表6-9] 200
[表6-10] 201
[表6-11] 202
[表6-12] 203
3. 第3次区分および細目表 204
  原案 204
  第1版 205
[表6-13] 206-215
[表6-14] 216-225
  第2版 226
  第3版 226
[表6-15] 228-237
[表6-16] 238-247
  第4版 248
[表6-17] 249-258'
  第5版 259
[表6-18] 260-269
  第6版 270
  
4. 助記表およびその他の諸表 270
  原案 270
  第1版 271
    A 主分類區分
    B 一般形式及總記共通區分
    C 地理的區分
    D 日本地方區分
    E 日本時代區分
    F 言語的區分
    G 言語共通區分
    H 文學形式區分
  第2版 272
  第3版 273
  第4版 273
  第5版 274
  兒童用日本十進分類表 274
  小圖向日本十進分類表 276
  小説作者記號表 277

5. 相関索引等 278
  原案 278
  第1版 278
  第2版 279
  第3版 280
  第4版 280
  第5版 280


おわりに(2018年8月 藤倉恵一) [283-286]
関連年表(1871-1950) [287-293]
参考・関連文献 [295-303]
索引 [305-310]





【抜き書き】

・「はじめに」[i-vi]冒頭。本書のテーマ。

 『日本十進分類法』(NDC: Nippon Decinal Classification)は今日,日本の標準
図書分類法として,日本図書館協会から新訂10版(2014年12月)が刊行されている。
 1929(昭和4)年に青年図書館員連盟のもり・きよし(森清,1906-1990)が発表した NDC は,発表後の十余年をかけて採用館が徐々に拡大していき,戦後の図書館界の再語のなかで,日本の標準図書分類法としての地位を得ることとなった。また,それにともない,森個人の著作から日本図書館協会分類委員会がその誰持・改訂を継承することとなった。
 しかしながら,NDCの成立から普及の過程について記されたものは,当事者たちの記録や回顧によるものが大部分であり,第三者によって語られたものは多くない。また,通史的なものについては,NDC巻頭に掲載された序文類や,情報資源組織分野の教科書などにわずかな記述を見せるのみで,今日それらが顧みられることも少ない。
 筆者は2007年から日本図書館協会分類委員会の末席にあり,「当事者のひとり」といえなくもないが,できうる限り中立的な視点をもって,NDCの成立前後の背景と成立の経緯,そして,なぜNDCが標準分類法たりえるという評価が得られたかについて研究を重ねてきた[1]。そこには,NDC 旧版や関連文献を(なかば偶然)多数手にすることができたという個人的動機もある[2]。

1 筆者の先行調査・研究については文献リスト(f1〜f4)にまとめた。
2 本書巻頭「NDC 写真ギャラリー」およびコラム参照。

 他方,NDC は特に新訂8版(1978年)以降,主題の配置を大きく変えるような改訂方針を立てていない。それは,利用する館の書架への影響をなるべく控えたいなどいくつかの理由がある。このような考えはいつごろから出たものか,また初期のNDC がどのような方針で,どのような規模の改訂を行っていたのか,できるだけ仔細に確認しようと考えた。
 本書では,これら歴史的経緯と変遷を可能な限り一次資料の比較をすることで概観したいと考える。
 本来であれば NDC全体の通史として,戦後から現在に至るまでのすべてをもまとめたいとも考えたが,本書ではまずその黎明期から確立に至るまでの時代について整理したい。


・「はじめに」から、文字表記についての凡例。(弊ブログで載せている)目次にもそのまま当てはまるので、やや長いが抜き書きした。

◆人名,用語,文字について
 日本人名については,引用を除いて新字体での表記を優先し(例:「衛藤利夫」→「衛藤利夫」,「和田萬吉」→「和田万吉」),生没年を括弧で付記する。
 外国人名については,原則として姓のみの記述を基本とし,欧文表記と生没年を括弧で付記する。
 NDC の原編者もり・きよし(森清)は,後年「もり・きよし」の筆名を主に用いていたが,1960年代以前は「森清(淸)」と表記されていた。本書では原則として「森清」「森」の表記を優先する(引用,書誌事項その他必要な場合を除く)。
 書名・雑誌名・分類名等については,原則として二重鉤括弧(欧文文献はダブルクォーテーション)で囲み,可能な範囲で,その原典に記載された字体を優先するを例:『圖研究』, “Manuel du libraire et de Tamateur de livres")。よって,発行時期の違いにより同じ媒体でも表記が変わることがある(例:『圖書館雑誌』と『図書館雑誌』)。また,本文中で繰り返し言及する場合は,新字体での表記を用いる。
 その,他引用に際しては Unicode での記述が可能な範囲で極力原典に近い表記(文字)での転記を心がけたが,一部の文字は現用あるいは常用の表記とした(例:「情」や「逃」などの旧字体Unicode での表記ができないため,新字体で表記した)。また,引用ではなく本文で言及する際は必ずしも原典の字によらず,新字体で表記を行っている(例:「靑年圖書館員聯盟」→「青年図書館員連盟」)。
 ただし,微細な違いによる異体字,たとえば「日本十進分類法」の「進」は戦前,いわゆる二点之繞〔しんにょう〕(点が二つある「進」)で表記されており,これは通常使用されない字体であるため,現用あるいは常用の表記を用いている。
 日本十進分類法に対する「NDC」の略記は本来「N.D.C.」のように省略を示すピリオドを介するが,本書では引用など特に必要な場合を除いて今日慣用される「NDC」に統一した(ピリオドのない NDC の表記は 1940年代後半以降に見られ始めたが,書誌情報上では新訂9版まで「N.D.C.」と表記された)。引用においては「N.D.C.」「N・D・C」などさまざまな表記が見られたが,これは引用する原典の記述に拠った。
 また,メルヴィル・デューイの“Decimal Classification"(十進分類法)については,改訂のたび数度にわたって名称(特に副書名)や綴りが変化しており,また当時「D.C.」「DC」のように略記されたが,今日では「DDC」(デューイ十進分類法:Dewey Decimal Classification の略記)の表記が一般に用いられている。
 本書が対象範囲とする時代(1950年以前)は「D.C.」(DC)の略称が一般的に用いられていたが,NDC 同様に必要な場合を除いて,今日慣用される「DDC」で統一する。
 他の分類法も同様に,現在一般的に用いられる省略形(「EC」「LCC」等)を用いる。
 「分類法(System,体系)」と「分類表(Schema,Table,Schedule)」について,日本においてはしばしば混用されている。本書においては,明らかに識別可能な場合,固有名詞や引用その他特に必要な場合を除いて原則として「分類法」あるいは単に「分類(Classificaiton)」という表現を優先して用いることにする。

・「はじめに」末尾から。各章の概要を述べた箇所。

 本書は,第I部「日本十進分類法の成立と展開」と,第II部「日本十進分類法の変遷」および関連資料等で構成されている。
 第I部は,NDC の歴史をおおむね時系列に沿って述べる。
 第1章「日本十進分類法の成立前夜」においては,まず西洋を中心とした,体系化された学問が記号による分類として割り当てられ,十進記号による体系を獲得するまでの流れとそれに対する影響,日本への波及について述べる。なお,NDC 登場後(1930年代以降)の国外の分類史については,最低限の解説にとどめる。
 第2章「日本十進分類法の誕生」では,間宮商店青年図書館員連盟にあった森清が NDC のプロトタイプにあたる分類表案を公開し,その翌年,「日本十進分類法」の名を与えられて刊行されたNDC について,どのように展開し,どのように支持されていったかを述べる。
 第3章「日本十進分類法の発展と批評」においては,NDCに寄せられた当時の批判について,また,改訂された NDC の経緯について述べる。
 第4章「日本十進分類法の展開」においては,太平洋戦争中・戦後の激動の時代における NDCと周辺の人々について述べる。
 第II部は,原案から第5版に至るまでの諸版の構造を,序文類と第3次区分までの分類表,および付帯する諸表等の引用と比較を通じてまとめる。
 第5章「日本十進分類法の序文類の変遷」では,各版の冒頭に掲載された巻頭言,序説,凡例等について,改訂の時系列に沿って述べる。
 第6章「日本十進分類法の分類表の変遷」では,各版の第1次〜第3次区分表の変化や,助記表(補助表)およびその他の表,索引について述べる。〔……〕
 また各章の合間には,本文に含むことが難しかった「筆者個人の視点」による NDC 史研究の余録を「コラム」として載せた。


・「おわりに」から、少しだけ抜粋

 本書が目的としたのは,巻頭にも記したように当事者たちの回想や記録を中心として分散していたNDC史をひとつの軸に集約することであった。そして,歴史を追うこの過程から見えてきたものがいくつかある。

(1) NDCは森清ひとりによって作成されたものではない
 森は確かに原案を作製したが,その公表・刊行には間宮の意向がかなり強く働いていた。それが不十分なものであったことは森自身が充分に承知しており,牧野富太郎のような外部識者の意見も容れて増補改訂を行っていた。いっぽう,加藤が実用に供していき,鈴木が理論面で他の分類法に対するアドバンテージを主張していくなかで,連盟の会員がいる館を中心に採用実績が増え,その実績が逆に森の「大きく改訂したい」という考えを制約していた側面もある。〔……〕
 NDC は確かに森のライフワークであったが,森ははたして成長していくNDC に対して,十分に満足していたのだろうか。

(2) 戦後,GHQはNDC に理解を示していた
 NDC が日本の標準分類表となるにあたって GHQ (CIE)との交渉があり,GHQ側が DDC を推奨するのを覆してNDCを認めさせた,というのは端的な事実として伝わっているが,順を追って確認すると,『学校図書館の手引』や国立国会図書館で採用する分類,ひいては日本の標準分類法となりえる分類として,キーニーやグラハム,ダウンズらはおおむね一貫して日本の事情を汲んで,NDC の採用に前向きであったことがわかる。〔……〕

(3) 改訂規模についてのジレンマはほぼ最初期から続いていた
 上にも書いたが,森は NDCの完成度に決して満足していなかったようである。しかし改訂については最初期はともかくとして,第4版頃から改訂の規模は小さくなる。〔……〕


 戦前のNDC に対する批判は,主題排列や記号の論理性に対するものよりも,急速に勃興した連盟に対する不信感や反発心から生じたものが多いように思われる。
 いっぽう,戦後 NDC に対する批判は「分類法としてのNDC」に対する批判が多く,また採用館の急増から,実用面での疑問や不満などが多く文献として存在している。
 いずれ機会を設け,新訂6版以降の都議や細目の変遷をも含めて追いかけたいところではあるが,これらは戦後 NDC 史あるいは通史として稿を改めたい。


□著者のライフワークとしての本書。

あとがきと謝辞
 本書をいつからこの形として執筆し始めたかは,まったく記憶にない。
 2012年8月に京都で開催された TP&D フォーラム 2012(第22回整理技術・情報管理等研究集会)において NDC史について初めて発表し,それをもとに論文を起こしたが,その後関連したテーマで文献を書く機会が続いた。いずれそれらを整理統合しようと思って,少なくとも2016年の夏より前にはもう文章を書き始めていた。
 〔……〕本書のもとになった原稿は,縦書き・横書きとさまざまに試みており,その都度,調べ物と相まって原稿は厚くなっていった。
 論文とも書籍ともつかない手慰みのようなその原稿であったが,樹村房の大塚栄一社長のお声がけで,思いもかけず日の目を見ることとなった。〔……〕

 筆者にとって人生の悲願とすることは,① 退職までに自分の名前で著書を出すこと ② 生涯のうちに NDC の改訂編集に携わること のふたつであった。① は 2006年に,②は 2007年に(我ながら若いうちに)それぞれ実現してしまい、次なる目標として ③ 分類に関する著書を出すこと を立てたが,どうやらこれにて大願成就,ということになりそうである。ただ,それに甘んじてはいけない。より完成度の高い,次なる目標を立てなくてはならない。



【関連記事】

『NDCへの招待――図書分類の技術と実践』(蟹瀬智弘 樹村房 2015)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20151229/1522271122

『その言い方が人を怒らせる――ことばの危機管理術』(加藤重広 ちくま新書 2009)

著者:加藤 重広 日本語学、語用論、統語論
扉イラストレーション:山本サトル

【目次】
目次 [003-006]

序章 なぜうまく伝わらないのか? 007


第1章 ことばの危機管理 011
ことばは意外と正直だ/火に油を注ぎかねない「は」/丁重・丁寧という罠/和語こそが落とし穴/文体転じて口調となる/文を閉じたくないという病/文を閉じるか、閉じないか、それが問題だ/閉じずに伸びる文の落としどころ/明晰性と論理性にこだわりすぎない


第2章 誤解されることば 053
解釈のぶれを予測せよ/修正が可能なことば/修正できないことば/文を閉じて生まれる明晰さとリズム/限定の手順というテクニック/一個人に戻れないジレンマ/述べる順序の影響/断言するリスクを小さくする/閉じない文の落としどころ


第3章 ロゴスとパトスを使いこなす 095
日本人はことばに不信感をもっている/ロゴスとパトスのちがい/ロゴスを活かす3つのポイント/ロゴスとパトスの切っても切れない関係/パトスに捨てられたロゴスの末路/ロゴスを武器にするやり方/ことばにかかわる常識とはいったい何?/「情報の切り身」をどうさばくか/日本人のクセを知る/「お疲れさま」と「ご苦労さま」


第4章 読むべき空気と読まざるべき空気 139
  日本語は「空気」に敏感だ/読めない「空気」は2種類/人が作り出す空気という日本的なるもの/「空気、読めてます」を伝えるには/「謙虚さ」を演出する文法/相手のパトスをコントロールする日本語の掟/ことばはデジタル式ではない/ことばは無色透明ではない/心の内を見せる/はしばしであっても示されること


第5章 敬語よりも配慮 185
敬語とのつきあい方/“ちょうどいい”敬語とは?/自由の度合いというメカニズム/「じゃないですか」の病巣/解釈を誘導する日本語のからくり/「ていうか」や「まあ」の落とし穴/かたちのない文脈の使い方/空気との距離


終章 時代の求めることばのありかた 227
日本語の近代化/書きことばと話しことばの天秤がつりあうとき


あとがき(2009年夏の終わりに 加藤重広) [235-238]




【抜き書き】
「序章」冒頭。

  ちょっとしたことばの行き違いで相手を怒らせてしまうことはないだろうか。実は、「なんとなく変だ」と感じる言い方や、「不愉快な言い方だなあ」と思う表現には、不快にさせるだけの理由がある。しかし、私たちは「嫌なニュアンス」「好ましくない印象」のように呼んで、感覚的なものに過ぎないかのように思い捨てていることが多い。〔……〕語用論は、ことばとして表面に表れない「文脈」の科学であり、コミュニケーションにおいて言いたいことをうまく表現するヒントをもたらしてくれる。
  言語学の研究者として、私は、ことばを科学的に研究する際に「ニュアンス」といった感覚的な表現は極力使わないようにしている。やや極端な言い方をすれば、分析や説明で「ニュアンス」や「感じ」などを使うのは、十分に分析できていないからだ、とさえ、思っている。あることばや表現が、なんらかの「ニュアンス」を伴うのには、それなりの理由があり、その手順やしくみを丁寧に分析するのが、ことばの意味を研究する意味論や、ことばの運用を文脈や場面と関連づけて研究する語用論の仕事だと考えるからだ。

  コミュニケーションの失敗には理由があり、それを科学的に分析したり説明したりする上で言語学、とりわけ、語用論の知識が役に立つと私は考えている。その点を踏まえ、科学的な知見を活かして「ニュアンス」だの「感じ」だのというヴェールを取り払い、失敗の原因やコミュニケーションのしくみを明らかにすることで、ちょっとしたコツがお伝えできるのではないか、というのが、本書を書いた動機である。


【関連記事】

言語学講義――その起源と未来』(加藤重広 ちくま新書 2019)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20190601/1559314800

『段落論――日本語の「わかりやすさ」の決め手』(石黒圭 光文社新書 2020)


【目次】
はじめに [003-005]
目次 [006-012]


  第一部 段落の原理 013

第一章 箱としての段落 014
段落とは何か
段落は箱である
段落を箱と考えると
【第一章のまとめ】 022


第二章 まとまりとしての段落 024
話題による段落分け
段落の内部構造の
中心文の統括力
パラグラフ・ライティングの限界
【第二章のまとめ】 036


第三章 切れ目としての段落 057
一段落つく
文間の距離
動的な過程としての段落
段落の開始部の文の特徴
段落の開始部の接続詞
段落の終了部の文の特徴
【第三章のまとめ】 060


第四章 つながりとしての段落 061
段落分けのない文章とある文章
跳躍伝導を可能にする段落
アウトラインの把握を助ける
【第四章のまとめ】  076


第五章 フォルダとしての段落 077
引き出しとしての段落
階層フォルダとしての段落
フォルダのしくみ
「流れ」と「構え」の出会いの場
【第五章のまとめ】 102


  第二部 段落の種類 105

第六章 形式段落と意味段落 104
形式段落と意味段落の区別の是非
「段」設定の意義
【第六章のまとめ】 113


第七章 絶対段落と相対段落 114
「段落連合」と「文塊」
「書くための段落」と「読むための段落」
「構造段落」と「展開段落」
【第七章のまとめ】 124


第八章 伝統的段落と先進的段落 125
「黒地に白」と「白地に黒」
段落の外部的制約
段落の内部的制約
囲み枠の段落


  第三部 段落とコミュニケーション 145

第九章 読むための段落 146
文段を意識する
段落に区切る
段落と接続詞
【第九章のまとめ】 173


第十章 書くための段落 174
段落を作る
段落をつなぐ
小見出しを活用する
【第十章のまとめ】 194


第十一章 聞くための段落 195
話し言葉の段落の目印
話し言葉の段落の階層性
【第十一章のまとめ】 216


第十二章 話すための段落 217
思考の橋渡しとしての段落
上手なプレゼンテーションの方法
教室の対話の段落
伝言の対話の段落
【第十二章のまとめ】 235


第十三章 段落の未来 236
変容する段落
リンクと段落
文字の段落から画像の段落ヘ
【第十三章のまとめ】 243


参考文献 [244-245]
おわりに(二〇一九年一二月 クリスマスを前に SDG 石黒圭) [246-249]
段落用語一覧 [250-251]
索引 [252-255]

『大人のための言い換え力』(石黒圭 NHK出版新書 2017)

著者:石黒 圭[いしぐろ・けい] (1969-) 文章論。
ブックデザイン:albireo
DTP:佐藤 裕久
校閲:猪熊 良子


【目次】
はじめに [003-008]
目次 [006-014]


第一章 知的に言い換える―――「話し言葉→書き言葉」 015
  漢語でかっちりと
  外来語で斬新に
  雅語でしっとりと
  二語の組み合わせを活用する
  名詞表現で引き締める
  接続詞・副詞の文体に注意
  第一章のまとめ


第二章 わかりやすく言い換える――「難しい言葉→易しい言葉」 035
  知識の差を意識する
  語構成を示す
  難しい漢語を避ける
  耳慣れない外来語を避ける
  特殊な略語を避ける
  固有名詞で具体化する
  第二章のまとめ


第三章 正確に言い換える――「一般語→専門語」 057
  類義語のニュアンスはしっかりと
  意味を限定する語を選ぶ
  二義文に敏感になる
  語の組み合わせ
  専門語を使う
  一般向けに言い換える
  体系性を意識する
  引用と思考を書き分ける
  研究の内容を整理する
  第三章のまとめ


第四章 やわらかく言い換える――「下位語→上位語」 099
  生々しさを避ける
  語感を高める
  ものは言いよう
  プライバシーを守る
  呼べない名前
  第四章のまとめ


第五章 ダイレクトに言い換える――「間接表現→直接表現」 115
  注意を喚起する
  社会的問題を提起する
  隠れた社会的問題を掘り起こす
  第五章のまとめ


第六章 イメージ豊かに言い換える――「直接表現→感化表現」 127
  豊かな解釈を導く表現
  換喩や提喩を用いる
  隠喩を用いる
  感化力の高い表現き用いる
  表現の選び方で評価を伝える
  オマージュを活用する
  ものの見方を開拓する
  第六章のまとめ


第七章 素直に言い換える――「婉曲的な表現→率直な表現」 159
  アサーティブな言い方をする
  ポジティブな言い方をする
  型どおりの表現から離れる
  第七章のまとめ


第八章 穏やかに言い換える――「不快な表現→丁寧な表現」 177
  傷つけない言葉を選ぶ
  政治的公正性に配慮する
  別の面から好ましく言う
  感情をコントロールする
  相手を責めない
  上から目線を避ける
  第八章のまとめ


第九章 シンプルに言い換える――「冗長な表現→簡潔な表現」 207
  簡潔に表現する
  文をつなげる
  要点を抜きだす
  鋳型を用意する
  第九章のまとめ


第十章 言葉を尽くして言い換える――「物足りない表現→十全な表現」 227
  詳述する
  接続詞を活用する
  行間を埋める
  一言添える
  言葉を尽くす
  第十章のまとめ


おわりに(二〇一七年一二月 SDG 石黒圭) [247-250]




【関連記事】



『文章は接続詞で決まる』(石黒圭 光文社新書 2008)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20110705/1309791600


『「読む」技術――速読・精読・味読の力をつける』(石黒圭 光文社新書 2010)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20110709/1310137200


『日本語は「空気」が決める――社会言語学入門』(石黒圭 光文社新書 2013)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/2018/12/25/020000


『語彙力を鍛える――量と質を高めるトレーニング』(石黒圭 光文社新書 2016)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20170113/1483941233

『現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。』(吉岡乾 創元社 2019)

著者:吉岡 乾[よしおか・のぼる](1979-) ブルシャスキー語、ドマーキ語、記述言語学、南アジア研究(特にパキスタン北部)。
装画・イラスト:マメイケダ[まめいけだ](1992-)  画業。
装丁・組版納谷 衣美[なや・えみ] グラフィックデザイン

現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。

現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。

  • 作者:吉岡 乾
  • 発売日: 2019/08/27
  • メディア: 単行本



【目次】
もくじ [003-007]
地図・言語分布図 [008-011]
調査地へのアクセス [012-015]


0  

遥かなる言葉の旅、遥かなる感覚の隔たり 018
  常識知らずの多様性
  不運は独りでは来ない
  お互いの気質
  埋まらない溝は埋まらない
  
表記と文字のこと 032
  文字という記号
  母音表記について
  子音表記について


1  

フィールド言語学は何をするか 040
  フィールド言語学とは
  どうしてフィールドへ行くのか
  ことばのフィールド調査の始めかた
  収集と還元
インフォーマント探し 049
  調査の協力者のこと
  インフォーマントの探し方
  お金と愛想

◆ブルシャスキー語 056-057
ブルシャスキー語 系統不明の凡庸なことば 058
  系統的孤立語
  言語の類型
  ブルシャスキー語の特徴
PCOからスマホへ 064
  電話とパンダ
  日本での移り変わり
  パキスタンでの移り変わり
  消えていくもの
物語が紐解くは 070
  物語から得られるもの
  カ・キラーヤ、パーシ・スィローン
  移ろう語り
異教徒は静かに暮らしたい 079
  イスラームの国の非ムスリム
  「浄」と「穢」
  元異教徒と現異教徒
  古い古い信仰
ブルシャスキー語の父(笑) 087
  パキスタンの「言語学
  飛んでもナッシング
  信仰のシステム
  研究者二欠かせない素質

◆ドマーキ語 094-095
ドマーキ語 諺も消えた 096
  いつ言語は消えるのか
  ドマーキ語の場合
  見えにくい重大な喪失
インドへ行って、引き籠もりを余儀なくされる 102
  危険は避けたい
  ブルシャスキー語インド方言
  インド側カシミールの実情
  勃発した大騒動
  そして印度へ舞い降りた
  体当たり訪問
  見えた道筋と見えない光明


2  117

好まれる「研究」と、じれったい研究 118
  役立つ研究とは何か
  分かりやすくする脚色
  薔薇色の「研究」と灰色の研究
  役立たない研究とは何か
バックパッカーと研究者 126
  かつて溜まり場だった谷
  心に吹き込む新鮮な風
  骨休めと花逃し
  冒険は終わっても調査は終わらない

◆コワール語 Khowar 138-139
コワール語 名詞は簡単で動詞は複雑? 140
  広域の山奥でコワール語は流れる
  言語学者と言語習得
  コワール語の名詞のシステム
  コワール語の動詞のシステム
文字のないことば 148
  文字と正書法
  文字のない言語
  無文字言語の話者も文字を知っている
  文字と工夫と影響

◆カラーシャ語 158-159
カラーシャ語 アバヨー! 舌の疲れることば 160
  似て非なる双子の言語
  耳慣れない母音の話
  耳慣れない子音の話
  不思議と一向に上達しないのは
フンザ人からパキスタン人へ 169
  パキスタン航空の思い出
  走るPIAで桃源郷
  フンザ谷へようこそ
  フンザ人の誇り
  朱に交われば赤くなる
言語系統と言語領域 178
  言語系統と語族
  言語の独居者
  同じ語族だからこそ似ている
  違う語族でも似ていることがある
  言語領域とは
  南アジア言語領域
  多層的に拡がる言語領域の輪
  鵺のように生まれる新言語

◆カティ語 196-197
カティ語 挨拶あれこれ 198
  八年ぶりの再会
  カティ語の挨拶表現
  ことばと地勢
  多言語調査


3  207

なくなりそうなことば 208
  「少数言語研究者」とは
  なくなりそうなことばとは
  ことばの価値
  ドマーキ語と呼び水計画
ドマー語、最後の話者 215
  消える地元の地名
  言語と民族、自称と他称
  ドマーキ語はドマーキ語で
  二つ目の自称
  男女の問題は悩ましい
動物と暮らす 226
  イスラマバードの蛍
  動物だらけの山奥
  カタ人と牧畜
  ブスカシを見る

◆シナー語 236-237
シナー語 街での調査は難しい 238
  その言語らしさを考える
  街で言語調査をしてみよう
  カルガー村の商店主
  街と村
出禁村 248
  ある日、道端でおじさんに
  大人な対応と渋い後味
  急な宣告
ジプシー民話 256
  根を詰めない趣味
  知識欲と他動詞主語と脈絡
  蛙とロマ

◆カシミーリー語 264-265
カシミーリー語 変り種の大言語 266
  二つのカシミール
  マイナーな大言語
  カシミーリー語の語順のこと
  キャシミーリー語
  読み書きされない文字のこと
五〇〇ルピーばあさん 274
  ナゲル谷のブルシャスキー語
  気になった地名
  ベディシャルを探す
  ベディシャルに入る

ウルドゥー語 284-285
インフォーマントの死 286
  死との距離
  死の訪れ
  死と調査


「はじめに」(吉岡乾) [296-299]
あとがきに代えて 内貴麻美(編集) [300-301]
参考文献 [302]
プロフィール [303]




【メモランダム】
様々な書評欄で取り上げられている。


竹内洋産経新聞
https://www.sankei.com/life/amp/191006/lif1910060017-a.html

渡邊十絲子毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20191020/ddm/015/070/017000c

小川さやか@週間読書人2019年7月
小川さやか@日経新聞2020年03月12日