著者:李 御寧[이어령/いー・おりょん](1934-2022) 文芸評論。第29代文化大臣(大韓民国文化部長官)(1990 - 1991)。
解説:高橋 秀爾[たかしな・しゅうじ](1932-) 美術史、美術評論。
カバーデザイン:蟹江 征治[かにえ・せいじ] 装丁、絵本。
備考:日本語で書かれた随筆。
『「縮み」志向の日本人』(李 御寧):講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部
【目次】
目次 [003-006]
題辞 [008]
第一章 裸の日本論
1 「日本論」祭り 009
幻の衣を着た「日本論」
「甘え」は日本独特の言葉ではない
海草と人糞の日本論のウソ
2 フォークと箸 016
東洋を忘れた視線
日本は本当にタテ社会か
西洋文化のヒマワリ
3 小さな巨人たち 023
一寸法師との出会い
豆と「ワン」の接頭語
島国の風土論でいくな
4 俳句と大豆右衛門 030
障子の穴で見る世界
ラブレーの巨人と江戸人の夢
小咄・国民性比較論
第二章 「縮み志向」六型
1 入れ子型──込める 037
東海の小島の磯と蟹
「の」を重ねる不思議
涙一滴に縮まった海
「縮み」の意識の文法
入れ子の箱
2 扇子型──折畳む・握る・寄せる 049
日本オリジナルの風
高麗扇か日本扇か
扇子のマトリックス
握りめし文化──引き寄せる
動く美術品
トランジスタ文化は平安時代からあった
3 姉さま人形型──取る・削る 064
人形の国
ちひさきものはみなうつくし
手足を取る
仮名作りの発想と「どうも」文化
集約と背面美
4 折詰め弁当型──詰める 078
食膳を縮める
日本の食物と韓国の食物
詰められないものは「つまらないもの」
和字と国訓の意味
利休ねずみ
文庫本とコンサイス
5 能面型──構える 091
ストップ・モーションの波
「構え」の動作
能面の中間表情
じっと見る視線
6 紋章型──凝らせる 106
聞くことと見ること
族譜と家紋 半てんとのれん
名刺と飯
「名詞」から「動詞」への文化論
第三章 自然にあらわれた「縮み」の文化
1 「綱」と「車輪」 123
庭文化の生まれ ありのままの山水
借景の論理
2 縮景──絵巻としての庭 130
シマと呼ばれた庭
回遊式庭園は名勝の写生画である
石組のレトリック
3 枯山水──美しき虜 138
石と砂の沈黙 三万里程を尺寸に縮む
にわとりになった自然
ゴミをゆるさない日本人の自然観
4 盆栽──精巧な室内楽 146
ベーコンの植木と家光の木
見る自然から触れる自然へ
樹の仕立てと風景描写
手の上にのせられた風と土
5 いけ花──宇宙の花びら 153
一輪の朝顔
花の美しさを見るな、その組み方を見よ
神が作り出せなかった空間
枝の空間性と花の時間性
6 床の間の神と市中隠 160
日本の舞いと神のはしご
神棚に招かれた神々
仏壇とテレビ
飲まれる自然
「市中の山居」
日本の旗にはイデオロギーがない
第四章 人と社会にあらわれた「縮み」の文化
1 四畳半の空間論 172
マッチ箱からウサギ小屋まで
鴨長明の住宅観
畳と生活空間の単位
広場と茶室
狭い空間への回帰
方丈の伝統
日本のコロンブスが発見した新大陸
にじり口の演出
2 達磨の瞼と正坐文化 187
精神の液体──お茶とお酒
茶がない茶会
狭き門に入れ
「立つ」ことと「坐る」こと
正坐と気をつけ文化
身は刀、身は琴
行動の三種の神器──ハチマキ、タスキ……
3 一期一会と寄合文化 202
二つの傘
「死」の心
咲く花より散る花を愛する
一生懸命の生き方
「腹切り」の美学
寄合文化 肌で感ずる触れ合い文化
イデオロギーを超える心
交際費共和国!
通り魔は日本的犯罪
五、六人のスモール・グループ
4 座の文化 219
一億総俳優 茶三昧の一体感
人の茶の湯になるな
日本料理とマナイタ
能舞台の美学
花道で会う観客と演技者
連歌とゴルフ
5 現代社会の花道 236
売る人と買う人の「座」
外人が見た日本の駅
ホームの押し屋
6 「物」と取合せ文化 242
数寄──物への愛
物で考える
茶碗ならずんば死を
実感信仰という宗教
三種の神器とオッチョコチョイ
第五章 現代にあらわれた「縮み」の文化
1 和魂のトランジスタ 255
竜馬は忙しい
トランジスタの逆転ホームラン
小さい手とラジオ・ブーム
和魂とはなにか
ウォークマン文化はいかに作られたか
石庭と電卓
触わってみれば、わかる
トウモロコシと農林10号
2 「縮み」の経営学 269
新しいアイディアは小藩から
ピグミー・ファクトリー
QC・小集団活動が作った神話
3 ロボットとパチンコ 278
なぜ産業ロボットの名は日本式か
パチンコの歴史
小さな玉と機械との対話
4 「なるほど」と「メイビー」 285
宇宙と茶の間のエレクトロニクス
二丁の鉄砲が三十万丁になる
二番手で行く
スモール・イズ・ビューティフル
第六章 「拡がり」の文化と今日の日本
1 国引き文化 295
星を知らない人たち
内と外の二つの世界
一匹狼の悲劇
日本人の三Sと外交舞台
「世界八分」にされるな
2 サムライ商人 306
畸型の一寸法師
ホンダに乗ったサムライ
この道はいつかきた道
3 広い空間への恐怖 314
大地に移した盆栽
秀吉はなぜ失敗したか
太平洋戦争で負けたのは
4 トロッコとイカダ 320
芥川のトロッコ
ハックルベリ・フィンの冒険
細石が巌になる夢
5 「名誉白人」の嘆き 326
白人になれる夢
コウモリの栄光と悲劇
6 鬼になるな、一寸法師になれ 332
枯野の船
だれが縮めるのか? 何を縮めるのか?
学術文庫版あとがき(二〇〇七年新春 ソウルにて 李御寧) [338-339]
解説(高橋秀彌) [340-342]
【メモランダム】
・追悼文。
国際日本文化研究センター元教授 上垣外 憲一さん寄稿 「李御寧先生の思い出」 | 国際交流基金ウェブマガジン「をちこち」