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『「資本」論――取引する身体/取引される身体』(稲葉振一郎 ちくま新書 2005)

著者:稲葉 振一郎[いなば・しんいちろう] (1963-) 
件名:資本
NDC:331.82 経済学.経済思想 >> 経済各論 >> 資本の理論


筑摩書房 「資本」論 ─取引する身体/取引される身体 / 稲葉 振一郎 著


【目次】
目次 [003-005]
題辞 [006]


プロローグ 自然状態からの社会契約 007


I 「所有」論 013
1 戦争状態と所有 014
  ホッブズが考えた二つの国家
  ロックが描いた戦争状態とは?
  ロックとホッブズ、それぞれの所有論
  「エコロジカルな条件」に自覚的なロック
  通説に収まりきらない『リヴァイアサン
  ホッブズをロック的枠組みで捉えれば?
  ホッブズ的自然状態とは何か
  ロック的パースペクティブの射程
  ホッブズとロックの議論を整理する

2 国家の存在理由とは? 043
  人間が社会を作る理由――ヒュームの場合
  ヒュームによる国家出現のシナリオ
  ヒュームはロックをどう批判したか
  庶民を国家の成員とは見なさなかったロック
  土地もち市民と庶民と国家
  ヒュームにとっての国家に従うべき理由
  契約・約束を可能にするコンヴェンション
  人は社会秩序をどう捉えてきたか
  ヒュームの「コンヴェンション」を解読する
  コンヴェンションの具体例から分かること
  ロックとヒュームの真の対立点とは?
  ヒュームによる社会契約論批判のポイント
  利益の有無を重視したヒューム

3 私的所有への批判の矢 078
  ルソーにとっての「自然状態」とは?
  ルソー「契約論」の二つのフェーズ
  二つの批判の矢
  アダム・スミスの応答


II 「市場」論 087
1 交換から分業へ  088
  「交換」が生じる条件とは?
  「分業」の誕生
  「比較優位」という考え方
  「交換」に第三者はいらない
  「互酬」「再分配」「交換」という三つのメカニズム
  交換をめぐる「おはなし」
  交換に先立つ言語的コミュニケーション

2 交換の果ての市場 111
  契約理論の二つのタイプ
  市場は自然状態に戻れるか?
  人と人を出会わせる仕組み
  価格メカニズムがはたらく条件

3 市場への不安と懐疑と反発と 119
  分業の不利益をも論じた『国富論
  市場経済をめぐる二つの不安
  人がリスク回避的である理由
  「不完全情報」という問題
  日本の「長期雇用」に見る合理性
  ギャンブルと市場競争の違い
  市場経済は弱肉強食の世界?


III 「資本」論 141
1 「資産」とは何か? 142 
  市場での取引はすべて売買か?
  「お金を借りる」とは、どういうこと?
  売買と賃貸借の違い
  「消費財」と「耐久財」
  「大きいもの」ほど貸借の対象になる
  「大物」でも誰かが所有している

2 「資本」のつくられ方 154
  労働・資本・土地を商品と捉えたアダム・スミス
  「資産の市場」という考え方
  「資本」はどのようにして生じたか?
  「略奪による市場経済」論
  社会契約による市場ヘの移行――あるアナロジー
  「市場的取引=売買」観のデメリット

3 「所有」の変容と株式会社 168
  株式会社という面妖な代物
  債権者と資本家の立場が逆転する?
  資産としての企業組織
  「所有」という複雑な出来事


IV 「人的資本」論 183
1 マルクスの労働問題観 184
  マルクスの歴史・社会理論を解く
  「疎外された労働」という視角
  「人的資本」と「労働力」の違い
  二つの「過剰人口」論
  「階級」としての労働者が生まれるまで
  資産としての「労働力」を考える

2 「労働力=人的資本」論 206
  ロック的国家と労働力
  アレントの「労働/仕事/行為」図式
  「知的所有権」の成立条件
  「労働力=人的資本」を再考する
  アレントの「仕事」論の弱点
  「家畜の延長線上に労働者を置く」
  プリンシパル―エージェント関係

3 拠点としての「所有」 226
  内と外の「セーフティーネット
  市場社会の二つの雇用形式
  ロックの言う「庶民」は「半人前」だった?
  財産権の主体としての労働者
  修正後のロック的筋書き
  「労働力=人的資本」を財産と見なす思想
  「所有」の概念を見失ってはならない
  「労働力=人的資本」は単なる欺瞞ではない


エピローグ 法人、ロボット、サイボーグ――資本主義の未来 253
  法人企業とは「資本家なき資本」?
  「株式会社=株主のもの」とは言い切れない
  生身の人間としての国民と「国体」
  国家を「人造人間」と呼んだホッブズ
  自律型知能ロボットをめぐる社会科学的SF
  ロボットと人は神の前で平等である
  自律型ロボットが奴隷制を復活させる?
  ある人の身体はその人の財産か?
  人間がサイボーグ化する可能性
  人間改造の行き着く果て
  マルクス主義への二つの視座
  「ポストヒューマン」への動き


参考文献 [290-294]
あとがき(二〇〇五年六月 白金の研究室にて 稲葉振一郎) [295-297]




【関連記事】
・社会契約など。
『社会契約論――ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ』(重田園江 ちくま新書 2013) - contents memorandum はてな
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・著者の経済(系)啓蒙書。
『増補 経済学という教養』(稲葉振一郎 ちくま文庫 2008//2004) - contents memorandum はてな
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