著者:仲村 和代[なかむら・かずよ] 新聞記者。
著者:藤田 さつき[ふじた・さつき] 新聞記者。
解説:国谷 裕子[くにや・ひろこ] キャスター。
図版作成:有限会社デザイン・プレイス・デマンド
NDC:519.7 環境工学 >> 産業廃棄物
NDC:589.2 その他の雑工業 >> 被服.身廻品
大量廃棄社会 仲村和代、藤田さつき | 光文社新書 | 光文社
【目次】
口絵 [/]
はじめに [003-021]
目次 [023-027]
第1部 アパレル業界編 029
第1章 それでも洋服は捨てられ続ける 031
1 在庫処分ビジネスの現場 032
4枚に1枚の服が捨てられている
条件は「ブランドタグを撮影しない」こと
アウターは暖冬になると売れ残る
撮影スタジオまで併設
2 新品の服はこうやって廃棄される 043
京浜島を歩く
「ブランド価値」を守るために「廃棄」する
厳しい守秘義務
朝日新聞で「正しいこと」を扱う葛藤
10億点? 30億点? 100万トン?
3 犯人はファストファッションか? 053
売れないのに、作られる服は増え続ける
「どうせセールになれば安くなるから……」
成長できない日本のデザイナー
「上も下もユニクロで十分」
柳井正〔やないただし〕が最も尊敬する女性
消費者の変化に気づかないアパレルメーカー
誰も原価を知らなかった
第2章 アパレル“生産現場”残酷物語 073
1 すべてはバーバリーからはじまった 074
バーバリー 41億円分、H&M 12トン
自己矛盾した釈明
生産現場の過酷な実態
2 アパレル産地で働く技能実習生たち 079
尾州〔びしゅう〕産地にて
「食べ物も買えないとたくさん泣いた」
生活場所は電気のないプレハブ
「悪者は雇い主」でいいのか
圧倒的弱者
「プロなんだからできるだろう」
ファストファッションで時代が変わった
「生身の人」か「労働力」か
3 “世界の縫製工場”の労働環境 099
バングラデシュ、経済成長の光と影
「縫い子の時給は数十円」
女性の社会的地位の低さ
第3章 リサイクルすれば、それでいい? 107
1 キャパオーバーのリサイクル工場 108
店頭回収で罪悪感も断捨離したが……
リサイクルされた服の出口はどこだ?
稼ぎ頭は海外向け古着
化学繊維はリサイクルしにくい
増え続ける「リサイクル不能品」
熱回収ではビジネスにならず
大量リサイクル化
「ごみに命を与える」
RPFもキャパオーバー
2 リサイクルをどう評価するか 127
リサイクルはメーカーの戦略
なぜ「店頭」で回収するのか
正しいことは正しいと言い続ける
3 結局、古着は役に立っているのか 133
「ペペ」はいらない
売れる古着も、売れない古着も
第4章 「透明性」と「テクノロジー」で世界を変える 139
1 解決策① 原価を明らかにする 140
1万6800円のパーカーは高いか?
誰も知らない服の「原価」
「僕たちはごみを作っているのか?」
現場を歩いて見つけた「可能性」
挫折から生まれた指針
広がる「透明性」の流れ
2 解決策② テクノロジーを徹底活用する 155
中国はすごい
過剰在庫は出さない
無駄の裏には、無理がある
第2部 コンビニ・食品業界編 163
第5章 誰もが毎日お茶碗1杯のご飯を捨てている 165
1 恵方巻きという作られた「伝統」 166
2月3日、午後3時過ぎの風景
恵方巻きが豚の資料になる
恵方巻きノルマ問題
サービス過剰社会・日本
「ノルマ」と「従業員の戦力化」
「ノルマはありません」
大手コンビニ正社員の証言
大手コンビニはノルマを否定
恵方巻きはコミュニケーション!?
なぜ円のだけが悪いのか
「三方よし」と「ほどほど」
2 食品ロス問題専門家・井出留美さんの視点 189
きっかけは3・11
井手さんの視点①――毎日お茶碗1杯のご飯を捨てている
井手さんの視点②――販売機会ロス
井手さんの視点③――「コンビニ会計」の「販売期限」
井手さんの視点④――不思議な「3分の1ルール」
井手さんの視点⑤――リデュースを最優先せよ
井手さんの視点⑥――消費者の力で食品業界は変わる
食品ロスを減らすために
第6章 フードロスのない世界を作る 207
1 もうパンを捨てないと決めた、パン屋の物語 208
出会い
毎日パンを捨ててたら……
100点満点のパンを目指さない
捨てないパン屋の「働き方改革」
休む、人に会う、旅に出る
誰でもパンは焼けるようになる
この生き方を10年、20年と続けられるのか
そして実験は続く
2 現場から生まれる様々な解決策 228
パンもケーキも捨てましょう
食品業界への厳しい視線
フードバンクとフードドライブ
「焼き豆腐指数」と「寄せ豆腐指数」
もったいないから「使い切る」料理人
3010運動のさらなる広がり
食品ロス半減を閣議決定
「お持ち帰り」のハードル
第3部 消費者編 247
第7章 大量廃棄社会の、その先へ 249
1 高度経済成長と大量消費社会 250
あなたの着ている服は誰が作ったのか
Made in Bangladesh
値段が高くなることを受け入れられるか
まず「知ること」からはじめよう
フェアトレードをビジネスにする
2 メルカリCEOに問う 261
みんな「いくらで売れるか」を考えている
1位ナイキ、2位ユニクロ
メルカリは「限られた資源を分かち合う」ためにある?
三振かホームラン
「数回着て、手放す」問題
必要なのは「安心」
3 私たちが「大量廃棄社会」を変える 279
誰が私の服を作ったんだろう?
まだ2ユーロで、このTシャツか買いたいですか?
ブロガーのケース
学生起業家のケース
元・渋谷109店員のモデルが考える「エシカル」
おわりに(2019年3月11日 東京にて 藤田さつき) [305-311]
解説―― SDGsが目指す未来に大量廃棄社会は存在しえない(国谷裕子) [313-318]
【関連記事】
『ファストファッション――クローゼットの中の憂鬱』(Elizabeth L. Cline[著] 鈴木素子[訳] 春秋社2014//2012) - contents memorandum はてな
『誰がアパレルを殺すのか』(杉原淳一,染原睦美 日経BP社 2017) - contents memorandum はてな
【メモランダム】
・関連する書籍・文献からの抜き書き。
□安部浩[執筆]「循環型社会」in『応用倫理学辞典』(加藤尚武[編] 丸善 2008年)[p. 187]
ところで廃棄物を生じさせないようにするには、どうしたらよいのだろうか、むろん(ゴミのもとである)モノをはじめからなるべく買わないようにすればよいのであり、そしてそのためには、もとより(購買の対象となる)モノをできるだけつくらないようにすればいいのである。かくして循環型社会は、〈少量生産・少量消費・少量廃棄〉をもって、その基本原理となすことになる。すなわちそれはつまるところ、低度成長社会に他ならないのである。
しかしながらそもそも「循環型社会」なる名称は、このような内実を適切に示しえているだろうか。むしろややもすれば、この甘美な表現は我々に対して――「リユースとリサイクルによって資源の循環さえなされていれば、どれだけモノを使い捨てしようがかまわない」といった――虫がいい曲解をいとも容易に許すのではなかろうか。